表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/89

55. 呪いの真相1

「ルカの呪いのことなんです」


 そう切り出した私。

 予想していたのか驚く様子もなく、オーウェン様は私の話を聞いている。


「シャロン様から聞きました。

 ルカの呪いが、以前よりも強まっているんじゃないかって。

 私が特別調剤を始めてから、呪いの数値が以前よりも上がっているんです」


小さく頷くオーウェン様を見て、私は話を続ける。


「薬を飲めばいったん数値は下がります。でも翌日にはまた高くなっている……。

 薬がちゃんと効いているのかもわからないし、そもそも数値を上げているのが、私の薬のせいなんじゃないかと思うと……ほんとに申し訳なくて……」


自分の手をじっと見つめながら、できるだけ冷静に話そうとする。

頭の中のこんがらがった糸を、少しずつほぐすようにゆっくりと。


「でも、薬局長からは何も言われていないんです。私は調剤係を降ろされたけれど、私の薬をこの先もルカが飲み続けることになっています」


 何とかそこまで言い切ると、色々な不安や、もやもやが頭の中を覆い始める。


「シャロン様は新月明けのルカの目を見て、違和感を持ったみたいなんです。黒が薄くなったって……。でも、毎日視診していた私には全然わからなかった……。

こんなんだから、ルカに嫌がられて調剤係を降ろされたのも当然なんですけど……」


 頭の中がぐるぐるして、何を言っていいのかわからなくなった。

 どうしよう、オーウェン様困るよね。


 ちらりと彼を見ると、彼は真面目な表情でまっすぐに私を見ている。

 余計に緊張して、頭がまっしろになる。息も吸いづらい。


「私……ルカの呪いのこと何も知らないんです。呪った人が影響してるんじゃないかって教えられました。

 ルカが誰かに呪われたなんて信じられなくて……。とにかくオーウェン様なら何か知ってるかなと思ったんです」


 せっかく時間をもらったのに、どう伝えていいのかわからない。


 オーウェン様の視線が痛い。

 思わずうつむいてしまう私。

 ぎゅっと白衣の上でこぶしを握りしめる。


 淹れてもらったコーヒーの湯気が、ゆらゆらと立ち上っていく。

 オーウェン様は何も言わなかった。


 私をからかうようなことも、ニヤリと笑うようなこともせず、片手であごに触れたまま、じっと黙って一点を見つめていた。


 カチカチと時計の音だけが静かに響く。


 しばらくして私を見ると、静かにつぶやいた。


「……あんた無茶しそうなんだよな……」


 その言葉に顔を上げる。


「あんたの疑問を全部説明すると、俺たぶんあいつにマジで嫌われそうなんだけど……」


「あいつ?」


「満月の英雄。ルカ・エヴァンス」


「どういう意味ですか?」


 顔をしかめる私をオーウェン様はじっと見ていたけれど、やがて意を決したようにふっと息をついた。


「あいつの呪いの魔力が高まっていることも、呪われた経緯も、呪った人間の影響も……」


 紫色の瞳がじっと私を見据える。


「ついでに言えば、あんたがあいつの目の違和感に気づけなかったことも、全部つながってる」


「……え?」


 全部、つながっている?


「さらにいえば、数値の上昇に気づいていたあの眼鏡が、あんたにそれを言わなかった理由も、結局はつながってる」


「……よく、わかりません」


 話が全く見えない。


「あの呪いは、あいつ本人を苦しめているのはもちろんだけど、回りまわってあんたのことにもなるんだよな、たぶん」


「……私、ですか?」


 どうして私が出てくるの?

 思わぬ展開にますます混乱する。


「あいつもあの眼鏡も、あんたを気遣って秘密にしてる。俺もあんたは無茶するタイプだと思うから、二人の気持ちはまぁわかる」


 オーウェン様だけでなく、ルカも、薬局長もすべてを知っているってこと?

 そのうえで、私のことを思って秘密にしていた?


 ルカは呪いから遠ざけるためだけじゃなく、全部知っているからこそ、私のためを思って、あんな冷たい態度を……?


 彼の思いに、胸がいっぱいになる。


「でもどう考えたって、あんたが解呪のカギなんだ。だから俺は全部お前に話す。あいつらには悪いけど、お前を思いっきり巻き込むからな。覚悟できてんだろ?」


 彼の瞳は真剣そのものだった。

 私はその強い瞳を見つめ返すと、「できてます」と頷く。

 私の答えを予想していたらしいオーウェン様。

 やっといつものようにニヤリと笑う。


「絶対に()()()()()()()()()()解呪しろよ」


 その言葉が、なぜか私の胸に深く入り込んだ。


「解呪方法……あるんですよね?前に言ってましたもんね」

「一応ね」


 彼は表情を変えずに答える。


「どうしてあの時に教えてくれなかったんですか?

 それをすぐに試した方がいいんじゃないですか?」


 身を乗り出す私。

 するとオーウェン様が静かに言った。


「あんたの言う通りなんだけど、これには理由があるんだ。

 まず、これまでその解呪方法を試しようがなかった。

 そして、古い文献だから試しても本当に効くのかわからない。

 最後は、その解呪方法を誰も望んでいない」


 それってどういう意味……?

 口を開く前に、オーウェン様は手のひらを私に見せながら言った。


「まぁ待て。順番に話すから」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ