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2.クレアの薬が一番好きなんだ

 学校への道をルカと並んで歩くのは、やっぱり落ち着く。

 小さなころから一緒に通っていたので、もはや当たり前になっていたのだ。


 ルカが実習の間、私は遅刻ギリギリで毎日走っていた。

 途中にある地獄の坂道がほんとにきつくて、「もう絶対寝坊はしない!」ってきめていたくらいだ。うん、無理だったけどね。


 そんなことを考えていたらルカが言った。


「実習中ね、あまりにしんどすぎてお城のポーションもたくさん飲んだけど、クレアが作るやつに比べたら普通過ぎてびっくりしたよ」


「普通過ぎるって……王都のプロ魔薬師が作った薬に対してなんという言い方を……!」


 思わず顔をしかめる私に、ルカはごく当たり前のような顔で言う。


「だって本当だもん。俺にはやっぱりクレアが作った薬がよく効くんだ。

 他の人が作るのより甘くて美味しいし、もうこれ以外はいらないって本気で思ってるんだけど」


 素直に褒めてくれるルカに何となく照れてしまい、私は言葉をつづける。


「味は魔力の質で多少変わるみたいだけど、効果は変わらないって先生がいってたよ」

「えーそうかなぁ?俺には一番効く気がするし、やっぱりクレアのが一番好きなんだよね」


 ルカは何の気なしに言った言葉のようだった。


 でも私は嬉しかったので「ありがと」と素直にお礼を言うと、逆に「え、あぁ。うん」と急に照れたように口元に手を当てた。これはルカの昔からの癖だ。


 そんなに照れなくてもいいのにと思いながら見ていると、話を変えたかったらしい彼が言った。


「というわけだから、今日の調剤実習で作ったポーションちょうだいね?」


「えー。たまには他の人のを飲んでみたら?私との違いをレポートしてほしいんだけど」


「お城の薬との違いをレポートしてあげるよ?」

「そ、それはぜひともお願いしたいですね……!」


 プロの作る薬との違いに私はごくりと息をのむ。

 私の様子を見てルカはくすくす笑う。


「クレアは昔っから魔薬師になりたいっていってたもんね」

「うん。薬剤師と悩んだけど、やっぱり魔薬師かなぁって思って」


 基本的に両方とも薬を作る仕事だけれど、魔薬師はさらに魔力を込めた薬を作ることができる。ポーションとかエーテルとかがそれらにあたるのだ。


「私が魔薬師になったら、いつか騎士団に入ったルカの傷もすぐ治せる薬を作るね。

 傷やケガだけじゃなくて、とにかくなんでも治せる薬とか作ってあげる!」


「……なんかすごそうだね、なんでも治せるって」


 私の本気な決意表明だったのだけれど、勢いに押されたらしいルカは少し引き気味に受け止める。


「そうだよー。ケガしても安心だから心置きなく戦っておいでね」

「ありがとう。っていうかなるべくケガしない方向でがんばりたいな」


 そんなことを話していたら、あっという間に学校についた。


 ……通学路の中盤にある地獄の坂道、いつの間に通ったっけ?

 ルカのいない10日間はすごく大変だったのにな。


 そう思いつつ校門を抜けたら、ルカが言った。


「あの坂道、通ったっけ?」

「私も思った」


 お互いの言葉に、同じタイミングで笑い出してしまった。

 ルカの笑顔とさらりと揺れる金髪が、朝日の中で眩しく見えた。


 ぎゅっと胸がくるしくなるくらいに美しかったのだ。


 ずっと隣にいると思っていた。

 この頃の私は、幸せな日常があと数日であっけなく崩れていくことなど知らなかったのだ。

お読みいただきありがとうございます。 

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