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青春のかたち  作者: さくらんぼ
3/4

「再会」の、かたち。

伏せ目にして、ため息をつく。

やってしまった。


「これ、言ったやつと違うくない?」

部長の言葉を何回も脳内に流す。


痛恨のミスをしてしまった。

僕のミスによって、部長や色んなところに迷惑をかけてしまったと思うと、苦しい。

申し訳ないし、自分なんてやっぱダメだ。

部長の信頼を失ったのかもしれないし、失ってないとしても、「この人はそういうことをしたんだ」という印象を脳に残させてしまったかもしれない。

ちゃんとしなきゃ。


(「人に完璧を追い求める時点で、完璧じゃない」)


あの時の、恵那川桃季の声が部長の言葉を上書きする。今ふと思い出したその言葉は、少し僕の気持ちを軽くした。

偽りのアイドルさん、、。

あの人は今、どこで何をしているのだろう。

どこかの番組の収録でもしているのだろうか。

踊って歌っているのだろうか。


別のことを考えても、結局は、目の前のミスで、また胸が苦しくなる。

明日の昼までは引きずるだろうな、、、。



怒涛の仕事が終了し、重い足取りのまま、街を歩く。

あれから貧血を起こさないように、と、できるだけ気をつけているが、それでも少しフラフラした。

そんな僕をどうでもいいと言わんばかりに、人は僕を通り過ぎ、車はただただ走る音を出す。

どうでもいいんだ、と思った。僕が何をしようが、失敗しようが、大半の人は興味ない。


目の前に、キラキラした光が目に入る。

見上げると、偽りのアイドルさんの笑顔と化粧品が、大きな広告看板に居座っていた。

やっぱり有名人なのだ、と認識した。

命の恩人、助けてもらった恩人、。

もちろん感謝もしている。

ただやはりどうしても、『偽りのアイドル』という印象が消えない。

性格悪いなあ、自分。


ぼんやりとした意識で、ふと、チェーン店のカフェを見つけた。

ちょうどいい、少し休憩しよう。

入店し、カウンター席にすわる。

右隣には、帽子を深く被り、携帯をいじる男。

(、、ミスった、、)

絶対に、横には誰もいないように座りたかったのに。うろちょろしてるのが嫌で、恥ずかしくて、ついサッと座れるところに座ってしまった。

カフェオレを注文した。


「あれ」

どこか聞いたことのある声がした。

パッと右を向くと、偽りのアイドルさんの顔。

「えっ」

お互い目を丸めている。

「な、なんでここに、、」と僕があたふたしていると、

「いや、、たまたま、今日はもう仕事終わったんで、、」

と相手はコーヒーを一口飲んだ。

以前よりも、顔が疲れている、気がした。

仕事詰めだったのかな。睡眠取れてないのかな。

「、なんか、大丈夫ですか?顔疲れてますけど、、」

と思い切って聞いてみると、相手は苦笑いした。

「最近、大きな仕事多かったんで。ま、まだまだですけど」

そんなことはない。心の中でそう相手に言う。

「全然、俺とか大したことないんで。皆んなの方がすごいし、まだまだ、、」相手はどんどん続ける。

僕なんかに、ペラペラ喋ってしまうほど、追い込まれているのだと感じた。

ちがう、そんなことない。あなたは充分すごい。

だって、人のために自分を偽ることができるのだから。

ずっとそう思っていた。バカにしてたんじゃない、心からそう思っていたから、僕はあなたをずっと気にかけていた。

あなたはあなたが思ってるよりも凄い。

人のためにできるなら、それは優しさだ。

そう言いたかったのに、喉につっかえて言えなかった。かろうじて言いたかったことを言う。

「、、ありがとうございました」

「え?」相手は、急に言われたことに眉毛をひそめている。

「恵那川さんが教えてくださった、完璧主義のやつ。

ちょっと、心楽になりました、」

相手は、また優しく笑う。

「全然。よかったです、」

しばらく沈黙が流れる。

ただ、この沈黙、なんとかしなきゃ、とは、珍しく思わなかった。むしろ、心地よかった。

「あの」

相手は体を僕に向ける。

「青春、分かります?」




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