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青春のかたち  作者: さくらんぼ
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「始まり」の、かたち。

「青春ってわかります?」

さっきからずっと頭で巡っていたこと。

つい口に出てしまった。

俺よりも、少なくとも普通の人生と、普通の学生生活を送っているはずだと踏み込んでの質問だった。

けれども、相手の表情は少し曇った、気がした。

「、、ゎかんない、、」

「え?」

「、僕は、わかんないよ。青春なんて」

「どっちかっていうと、見下してた派だから、、」

スピーカーから流れるジャズと、周りの会話の声がやけに大きく聞こえる。

この人も、知らないんだ。わからないんだ。

「僕が、1番理解できないことだよ。青春って、。」

「そもそも「青春」っていう言葉の響きがこう、、なんていうか、ちょっと薄っぺらく聞こえちゃうんだよね、」

心の中で大きく共感した。人によるかもしれないけど、少なくとも俺たちにとって、青春はそういうものだ。

相手はハッとして口を塞いだ。

「すみません、勝手にタメ口になってましたね、」

そんなこと全然気にする必要ないのに。

ふと気になった。

「そういえば、お名前なんていうんですか?年齢も」


「、、結城真、です、。」

恥ずかしそうに真さんは言う。

「29です」

「え、あ、年上っすね俺より」

「俺26なんで」

「え」

「タメ口でいいっすよ」

かっこつけるようにコーヒーを飲んだ。


「俺、青春の勉強しないといけないんすよね、、」

「勉強、、?」

「ドラマ決まっt」と、俺が言い終わる前に、真さんは分かった顔をした。

「あーなるほど。だからか。青春系のドラマなの?」

驚いた。察しよすぎないか、、?

それに。

「、、、いきなりタメ口つかうんすね。」

「え、?だってさっきいいって、、」

「いや。タメ口でいいって言われても、頑なに敬語で話すタイプかと思ったんすけど」


この人、大雑把だ。

完璧主義だ、って言ってたから、ついついむちゃくちゃ真面目だと思い込んでいた。

臨機応変で、誰とでも合わせられる。

好かれるだろうな、、。

色んな顔を、場面、相手、全てを踏まえて使い分けられるんだ。

並大抵のことじゃない。

俺には無いものだ。



「、じゃあ、、」

「やってみる、?」

真さんはそう言って、視線を落とした。





真side


「え、?」

桃季は僕の誘いに眉をひそめた。

僕には桃季の抱えてるものはわからないし、何を考えているのかもわからない。

けれども、一緒に過ごして分かったことがある。


この人、真面目だ。

明るい担当、バラエティ担当らしいけれど、ものすごく真面目だ。

実は1番人のことを見ていて、人のことを気にかけている。

優しいんだろうな、、。

相手が求める自分を瞬時に理解できるんだ。

そして、それを僕みたいに内で解決せずに、外に出す。表に立って、人を笑顔にさせる。

並大抵のことじゃない。

僕にはできないことだ。




「なんも意味なく、遠くに行ってみる、とか」

「やってみる?」

桃季と目を見合わせる。

僕の頭にはふと「桃季は僕を求めたつもりじゃないのかもしれない」とよぎった。

「あ、ごめん。全然、僕がでしゃばっちゃったね。ごめん」

と咄嗟に謝った。

「いやあ、全然、、。え、いや、でも。いいんすか?」

桃季は俺を覗き込む。

まるで、エサ待ちの子犬ように。

「いいよ。全然。なんなら今から走る?」

「はい?」


スイッチが入ると、僕はすぐふざける癖がある。

これも、表向きの自分なのかな、、



桃季side



「ちょっと!!速い!!」

後ろで真さんが叫んでるのが聞こえる。

駅まで走ってみよう、というわけの分からない誘いに、俺はのった。

街中だから、俺の名前を呼ばないように配慮してくれている。やっぱり、気が利くなあ。

走る。走る。グングン走る。

周りからしたら意味のわからない事をしてるだろう。

青春しよう、ってなった最初が走るってなんだよ。

思わず笑ってしまう。

でも、俺はなぜか。

この時間だけは、全部を忘れることができた。

偽りの自分がどう、とか、人がどう、とか、これからどうしよう、とか。

そんなのを、どうでもいいと感じた。

それらを全部、ちっぽけだと感じた。

楽しい、楽しいな。

改札の音が聞こえる。

電車が来る音が聞こえる。

駅前のバスは、もうない。


ああ、たくさんの人に見られない世界って、こんなんなんだ。

みんなが当たり前にいる世界って、こんな風なんだ。

カメラもない、大御所の芸能人もいない、うちわもない、イヤモニも付けなくていい。

移動も、大きいロケバスとか、広い車じゃない。


   

「真さん」

膝に手をつき、ゼーハーゼーハーして俯く真さんは俺を見上げた。


「楽しいっすね!!」

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