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(´・ω・`)


 透明空魚(クリアフィッシュ)を釣るぞ!


 意気揚々と、ツリーハウスに帰ってきたゼル一行。まさかな?やめてくれ、やめてくれよ。ゼルの顔が失意に染まる。


 テラスに、ズラリと、何かがぶらさがっていた。嫌な予感は、的中!


 魚だ、魚がぶら下がっている。釣りを楽しみにしていたら、既に終わっていた件。


「あ、あれは?」


「ん。ゼルの楽しみにしていた透明空魚(クリアフィッシュ)。大きいのは獲れなかったけど、美味しそうだね。」


 満面の笑顔で、肯定され、ガックリと頭を垂れるゼル。楽しみにしていたのは、釣る過程なのに、それをすっ飛ばして、結果があった。

 透明空魚(クリアフィッシュ)は、空を泳ぐようで、10〜20㍍くらいの高さにあるツリーハウスのテラスから、雑に仕掛けられた1㍍程度の長さの釣り針に掛かっていた。

 体長は、20〜30cm。アロワナに似た姿の魚だった。エサだけ食べられてるのや、まだエサがついたままの仕掛けとともに、モズのハヤニエよろしく、ぶら下がっていた。


 自宅のテラスから、空中に、仕掛けを垂らすだけで釣れる魚、それが、透明空魚(クリアフィッシュ)だ。



 だが、男は諦めない。


 テラスの上で、おもむろに、釣り竿セットを取り出す、夢を諦めない男、ゼル。その心は、静かに燃えていた。


「くそっ、期待させやがって!」


 どす黒く、ふつふつと沸き起こる感情、

 怒り、それは怒りだ。


 I am angry(アングリー)


 ゆえに、釣り師(アングラー)になると。


 ジュバッ


 竿を振りかぶり、キャスト。空中へ、仕掛けが放たれる。クイクイと誘うように、動かしリールを巻く。大気を、ねちっこく攻める。

 大気を釣るといった常軌を逸した行動。しかし、テラスから、吊り下げられた死んで透明化の能力を失った魚達が、見えないが、大気の中に確かに存在している事を証明している。確実に釣れる。


 キャスティングを繰り返す事、10分。しかし、以前アタリは無い。つまり、戦略が間違っている事に気付く。ルアーを動かすのは、エサの動きを真似ているからだ。透明空魚(クリアフィッシュ)の大好物であるポムの実は、動くか?否。ポムの女王樹に湧く白い湖に、漂うように浮かんでいる。


 イメージだ。イメージしろ!よしっ出来たぞ。


 ジュバッ


 完璧な位置へ、キャスト。目は半眼、腹の奥底へ大気を入れる。無への境地。自然と、一体となれ、


 ポゥポゥポゥポゥ


 遠く離れた森の音が聴こえる。まだ瞑想が浅い。さらに、その先へ。


 パシャリ、パシャリ


 ポムの女王樹に湧く白い湖面で、水面から魚が、跳ねる音が聴こえた。自然と一体となった!


 コツ、コツ。


 アタリが来た。コレは、魚が食べるかどうか迷って、つついている感触。焦っては、いけない。手に汗は、にじんでいる。静かに、その時をじっと待つ。今は雌伏の時だ。


 ゴツン。


 時は、来た!目をカッと見開く。


 ビシィッ!!


 竿を力の限り、合わせる。深く針を口元に食い込ませる。もう逃がさねぇぞ。


 ギリギリギリ


 凄い力で、竿が何もいない空気中に引っ張られる。落ちそうになるが、テラスの手摺りに足をかけて、耐える。ゴツン、ゴツンと凄まじい引きだ。ギュンギュン竿がしなる。ついには、


 ギッギッギッギッ


 あまりの力に、ドラグが滑る。糸を張りすぎて切れないように、リールは滑るように出来ているのだ。あまりに、滑って、糸が長くなりすぎると根に入られて逃げられるので、魚が弱った瞬間を狙い、ぐるぐると巻き返す。

 まさに、一進一退の攻防。見えない敵と、全力で闘う。


 突然、フワリと軽くなった、不味い。こっちに向かってきた。オラオラオラ!リールを全力で巻く。手前の根に入られる。

 ダダダッと走り、隣の屋根に飛び移る。ぐぅん。手応えが返ってきた。ははっ、甘かったな。


 魚が弱ってきたのか、だんだんと、その姿が顕になる。体長1.2m。


「で、でかい。」


 空気中で、煌めく魚鱗の光が眩しい。とても、綺麗だ。クタリと、命の灯火が切れて、その全容が明らかになる。白銀の鱗に、レインボーのラインが発光。死んで暫くは、光り続けるようだ。


「獲ったどー。」


 ゼルは、勝利した!



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