(´・ω・`)
透明空魚を釣るぞ!
意気揚々と、ツリーハウスに帰ってきたゼル一行。まさかな?やめてくれ、やめてくれよ。ゼルの顔が失意に染まる。
テラスに、ズラリと、何かがぶらさがっていた。嫌な予感は、的中!
魚だ、魚がぶら下がっている。釣りを楽しみにしていたら、既に終わっていた件。
「あ、あれは?」
「ん。ゼルの楽しみにしていた透明空魚。大きいのは獲れなかったけど、美味しそうだね。」
満面の笑顔で、肯定され、ガックリと頭を垂れるゼル。楽しみにしていたのは、釣る過程なのに、それをすっ飛ばして、結果があった。
透明空魚は、空を泳ぐようで、10〜20㍍くらいの高さにあるツリーハウスのテラスから、雑に仕掛けられた1㍍程度の長さの釣り針に掛かっていた。
体長は、20〜30cm。アロワナに似た姿の魚だった。エサだけ食べられてるのや、まだエサがついたままの仕掛けとともに、モズのハヤニエよろしく、ぶら下がっていた。
自宅のテラスから、空中に、仕掛けを垂らすだけで釣れる魚、それが、透明空魚だ。
☆
だが、男は諦めない。
テラスの上で、おもむろに、釣り竿セットを取り出す、夢を諦めない男、ゼル。その心は、静かに燃えていた。
「くそっ、期待させやがって!」
どす黒く、ふつふつと沸き起こる感情、
怒り、それは怒りだ。
I am angry
ゆえに、釣り師になると。
ジュバッ
竿を振りかぶり、キャスト。空中へ、仕掛けが放たれる。クイクイと誘うように、動かしリールを巻く。大気を、ねちっこく攻める。
大気を釣るといった常軌を逸した行動。しかし、テラスから、吊り下げられた死んで透明化の能力を失った魚達が、見えないが、大気の中に確かに存在している事を証明している。確実に釣れる。
キャスティングを繰り返す事、10分。しかし、以前アタリは無い。つまり、戦略が間違っている事に気付く。ルアーを動かすのは、エサの動きを真似ているからだ。透明空魚の大好物であるポムの実は、動くか?否。ポムの女王樹に湧く白い湖に、漂うように浮かんでいる。
イメージだ。イメージしろ!よしっ出来たぞ。
ジュバッ
完璧な位置へ、キャスト。目は半眼、腹の奥底へ大気を入れる。無への境地。自然と、一体となれ、
ポゥポゥポゥポゥ
遠く離れた森の音が聴こえる。まだ瞑想が浅い。さらに、その先へ。
パシャリ、パシャリ
ポムの女王樹に湧く白い湖面で、水面から魚が、跳ねる音が聴こえた。自然と一体となった!
コツ、コツ。
アタリが来た。コレは、魚が食べるかどうか迷って、つついている感触。焦っては、いけない。手に汗は、にじんでいる。静かに、その時をじっと待つ。今は雌伏の時だ。
ゴツン。
時は、来た!目をカッと見開く。
ビシィッ!!
竿を力の限り、合わせる。深く針を口元に食い込ませる。もう逃がさねぇぞ。
ギリギリギリ
凄い力で、竿が何もいない空気中に引っ張られる。落ちそうになるが、テラスの手摺りに足をかけて、耐える。ゴツン、ゴツンと凄まじい引きだ。ギュンギュン竿がしなる。ついには、
ギッギッギッギッ
あまりの力に、ドラグが滑る。糸を張りすぎて切れないように、リールは滑るように出来ているのだ。あまりに、滑って、糸が長くなりすぎると根に入られて逃げられるので、魚が弱った瞬間を狙い、ぐるぐると巻き返す。
まさに、一進一退の攻防。見えない敵と、全力で闘う。
突然、フワリと軽くなった、不味い。こっちに向かってきた。オラオラオラ!リールを全力で巻く。手前の根に入られる。
ダダダッと走り、隣の屋根に飛び移る。ぐぅん。手応えが返ってきた。ははっ、甘かったな。
魚が弱ってきたのか、だんだんと、その姿が顕になる。体長1.2m。
「で、でかい。」
空気中で、煌めく魚鱗の光が眩しい。とても、綺麗だ。クタリと、命の灯火が切れて、その全容が明らかになる。白銀の鱗に、レインボーのラインが発光。死んで暫くは、光り続けるようだ。
「獲ったどー。」
ゼルは、勝利した!




