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まだ、終わっていない。諦めるな。
うつ伏せになり、その疲労に震える手にチカラを込めて立ち上がる。甲子園球場で負けた選手のように、両手に、土を掴んで立ち上がる。彼は、まだ諦めていない!
それを見た、紅葉蟹達は、大きいハサミをカチカチしながら、嘲笑う。
「まだ、だ。まだやれる。」
「ゼル、もうやめて。」
じいちゃん、助けてくれ。ついには、死んだ祖父に助けを求める大人。しかし、これが功を奏した。「坊主、じいちゃんが秘策を授けてやろう。」天国から、困った孫に声が届く。ありがとう爺ちゃん。
秘策を授かり、空気が変わった。
「疲労回復。反撃の時間だ!」
握りしめた敗戦の土を、紅葉蟹の巣穴を目掛けて、ピッチャーのように投げ込む。
ピッチャー、第1球投げました。
ストライク!
第2球投げた、2ストライク!
準備は、整った。後は、走るだけだ。
全力で、大地を蹴り出し、走る。何も考えず、走る。だが、遅い。遅すぎる。
紅葉蟹達は、嘲笑うように、大きいハサミをカチカチしながら、ちょこちょこと歩き、穴の中に逃げ込もうとした。
!?
巣穴が、先程投げられた敗戦の土により、塞がっているぞ。逃げ場が無い!ウロウロする紅葉蟹。そこを見逃す男では無い、ヘッドスライディングアタック!両手で1匹ずつ捕まえ両肩で抑え込み、2匹を拘束っ。
なんと、ゲッツーです。
ゼル選手、素晴らしいファインプレーでした。今のをリプレイで見てみましょうか?「いて、いて。」あれっ?ゼル選手にトラブルがあったようです。耳を挟まれています。両耳です。
「高電圧」
紅葉蟹を獲得×2
辛くも、完全勝利したゼル。女神が、抱きつき祝福する。
「ん。頑張った。ゼル、格好良かった。」
完全に骨抜きにされてしまったぞ。ただ、珍しくタイトルどおり頑張った気がする。男の栄誉を称えようではないか。充実感と、達成感、そして幸福感に包まれる。
「ゼル、古代の叡智。ホント凄い。」
束の間の休息。勝利の味を噛み締めろ。男は、勝利する事により、テストステロンが分泌され、より男らしくなる。小さくてもいい、勝利を積み重ねるんだ。
レイが、興奮してキラキラとした尊敬の目で見てきた。悪くない気分だ。爺ちゃんありがとう。しかし、子供の成長は、早いからどこまで頑張れるのやら。
「私も真似してみる。」
「あぁ、やってみろ。」
保護者ヅラしたゼルの前で、無邪気に、天才は魔法を唱える。
「歩夢歩夢雨。」
レイの夢いっぱいのオリジナル魔法、歩夢歩夢雨。降り注いだのは、ポムポム弾む、カラフルで無害な沢山のボール達。それが、コロコロと弾むように転がり、少し低い位置にある巣穴にすぽすぽとハマっていく。逃げる巣穴を、全て塞がれてウロウロする哀れな紅葉蟹達。
「これで、トドメ。疑似稲妻群」
レイは、2撃目の魔法を唱えた。エネルギーが、ゆっくりと高まっていく。その高まりに同調して、ゼルのニヤケきった顔が硬直していく。もう、駄目だ、可哀想すぎて、見ていられない。
ついにエネルギーは臨界点に到達し、炸裂した広範囲の弱い雷魔法の波が、逃げ道を塞がれた蟹達を、蹂躙する。
パリパリパリッ!
紅葉蟹を獲得×37
「どうだった、ゼル?ゼル? ゼルぅーーー!」
森に響く美少女の悲痛な絶叫。ゆさゆさと、体を揺られるが、ゼルの反応は無い。ただの屍のようだ。
彼女の名誉の為に付け加えておくが、美少女天才錬金術師のレイちゃんに悪気は、無い。無いんだ。これが天災たる由縁。




