(´・ω・`)
《赤の森》
紅葉が咲き乱れる幻想的な森。厳密には、違う品種だが、一年中、赤い葉をつけるこの木の葉は、地球で見たそれと、良く似ていた。
下に落ちても紅葉の葉は、枯れる事なく赤いのが、異世界らしい。
ポゥポゥポゥポゥ
プヮプヮプヮプヮ
森の奥へ、立ち入ると、何か分からないが、間が抜けた鳴き声が響く。
地面は、もちもちした弾力があり、無数の穴が空いていて、透明度の高い水が所々張った湿地帯のような場所だ。
清流も流れている。
空気は、澄んでおり、魔力のようなみなぎるチカラを感じる大森林。ここが、赤の森。幻想的な場所だった。
ふと、この綺麗な森に似つかわしくない、不快な黒いもやを、前方に発見した。
「ん。忘れてた。」
レイが、アイテムポーチから、虫除けスプレーを出して、かけてくれた。
「あの黒いもやは?」
「チクチク。小さい羽虫が集まってる。刺されたら、凄く被れて痛い。針は、細く長いから、防具を着ていても駄目。」
「やっかいな害虫だな。蚊柱のようなものか。」
「んん。カバシラは知らないけど、チクチクのおかげで、魔獣が少ない。」
「ふむ。」
レイが、指を高く上げて、その指をゆっくりと、前方の赤く鮮やかな紅葉の落ち葉に向けて、指す。
「今から、《紅葉蟹》を採るので、見てて。殺すと、劣化するから、殺しては駄目。」
「あの動いてる落ち葉?蟹がいた。あの赤い蟹は、紅葉の葉を食べてるのか。」
「ん。疑似稲妻」
レイの指先から、視認できる小さな雷撃が奔る。ビビビッと伸びていった雷撃は、狙い通り、落ち葉に命中。しかし、直前で蟹に気付かれ、ちょこちょこと歩き、穴の中に逃げられてしまった。
ひょっこり、穴から出て来て、大きいハサミをカチカチしながら、挑発してくる紅葉蟹。
「あの、カニ。めっちゃ煽ってくるぞ。」
「んんん。疑似稲妻」
怒ったレイの怒りの2撃目は、大きくハズレ、近くで隠れていた紅葉蟹に偶然、当たり、巻き添えを食った蟹は、泡を吹いて倒れる。
紅葉蟹を獲得×1
「え?」
「ん。私、天才。」
いや、満足なら良いんです。見せて貰った紅葉蟹は、シオマネキっていう蟹に似ていた。違いは、真っ赤な事だ。あと、大きさも大きい。
普通、蟹は、茶色などの目立たない色をしており、茹でてから赤くなるのだが、すでに赤い。
山林で、赤は凄く目立つ色だけど、この赤の森では、例外だ。真っ赤な落ち葉に紛れる赤い蟹は、分からない。食べ尽くしてしまうのか落ち葉が少ないのが、救いだが、風で動く落ち葉と、蟹の食事で動く落ち葉の見分けがつかない。
しかし、先程から挑発してくる蟹野郎に、電気ショック漁を見せてやろう。離れて余裕かましているが、そこまで水で繋がっているんだ。得意魔法を食らうといい、手を地面につける。
「まぁ見てろ、レイ。いくぜ、高電圧!」
ビビビッと、大地に一撃。それだけだ。異世界に科学ルールが通用するとでも思ったのか。結果は明確だ。大きいハサミをカチカチしながら、挑発してくる紅葉蟹。
「ぜ、ゼル?」
「活性化×3。どちくしょー。」
美少女ハーフエルフ、レイの憐れみの視線に耐え切れず、紅葉蟹を目掛けて走っていくが、ちょこちょこと歩き、穴に逃げられた。膝をつくゼル。
すると、ひょっこり、周囲の穴穴から、ワラワラと紅葉蟹達が出て来て、大きいハサミをカチカチしながら、挑発してきた。
「良いでしょう。戦争だ、貴方達は、怒らせてはいけない相手を怒らせた。これは、戦争だ!」
ゼルは、決意に満ち、その目に燃える闘志が宿る。お前の血は燃えているのかと。
すまない。言い直そう。何の戦闘力も保たない小蟹相手に、このおじさんは、顔を真っ赤にして怒った。ふんぬー。ふんぬー。
呆れ顔のレイに、生暖かく見守られる事20分。ついに、その時は、来た。
ぐらりと、ゼルの体が揺れる。体力の限界だった。仰向けに倒れ込む。
「ぐはっ、俺は、・・何て無力なんだ。」
「ゼル、もういいの、頑張ったよ。」




