(´・ω・`)
夜遅いのに、今から?なんて野暮な事は言わない。レイのやりたいタイミングで、やらせてやる。失敗してもいい、それを許容する覚悟がある。
エアロバイクに乗り、魔導エンジンを始動する。
コォォォォ。
実に、頼もしい音だ。ふわりと、地をきって浮かび上がる。カチリとスイッチを押して、ライトをつける。
後部座席のレイが案内する方向へ、くるっと回り、テラスから目的地へ向けて、飛び立った。
ライトの丸い明かりで、暗闇で色を失っていた森が、赤かった事を教えてくれる。照らされた部分が、光りを当てられ、紅く煌めく。
まるでそれは、黒い絨毯の上を、赤い球の宝石が転がっていくかのように、漆黒の大空を疾走する赤の森のナイトクルージングは、幻想的な光の道となる。
レイが、背中をくいくいと引っ張る。目の前に見えるのが、目的地のようだ。ぽっかりとした空き地があり、その地面は、2つの月明かりを、薄く反射する石で舗装されている。
正確には、ここは空き地ではなく、空き地と見まごう程の1つの平たい巨石だ。
巨石の中央に建立された社に近付く。見た事も無い様式たが、神聖なものである事は一目で分かる。人が生活する為に建てられたものではなく、神々が、精霊が、住まうための屋敷。
静かに、遥か大空から高度を落として、ゆっくりと厳かに敬意を込めて着陸した。
「レイ、この場所は?」
「精霊の社。ポムの樹を守護する、聖なる場所。」
レイは、とてとてと、歩いて、社に、お婆ちゃんの魂の欠片を投げ入れる。すると、すっと、その塊が、燃え上がり、眩い光の塊が現れた。
レイが震えながら、その光の塊を凝視する。おじさんには光にしか見えないが、レイには何かの姿がハッキリと見えているのかのようだ。
声が聞こえた。声はゼルにも聞こえるらしい。それは、しっかりとした口調の老婆の声だった。
「レイ。久しぶりです。消えゆく前に、間に合いました。良くやりましたね。」
「お、お婆ちゃん。」
「ふふふ、大きくなりましたね。ポムの守護者をレイに継承します。」
「だ、駄目。私、契約があるし、ハーフだし。もっと他に。」
「では、残り1年の内に、継承者を決めなさい。私の残滓がこの大地に残れるのは、あと1年と少しです。」
「行かないで。」
「時間がありません。鍵を渡します。愛しい孫よ。」
鍵が空中から現れて、レイの手元にポトリと落ちる。
光の塊は、優しくレイを包んだ後、社に入った。今、ゼルとレイが、立っている地面が、巨石全体が、一瞬、閃光のように輝いた。
訪れるのは、暗くなる世界。なんの変哲もない何時もと変わらない夜。
「ゼル、どうしよう?お婆ちゃんのお願いを叶えて、悲願を達成したはずなのに。私、次は、継承者を探さないと、いけなくなった。」
「心配するな。もしもの時の、あては、ある。必要なら、こちらで準備しよう。今までの肩の荷は下りたか?」
「ありがと!んんん。」
ひしっと抱きつき、頭をぐりぐりしてきたレイを、モフる。銀髪のさらさらした髪、尖った長い耳。可愛い。
少しは、元気になったか?へにゃっとなったエルフを確保した。
お前は、よく頑張った。
継承者のシステムは良くわからないが、人柱が、いるんだろ。それなら、心当たりがある。任せてくれ。
☆
コォォォォ。
エアロバイクで空を飛ぶ。ぐるっと巨石の周りを旋回してから、ツリーハウスに帰還した。
明日は、いよいよ赤の森に、入る。さくっと材料を採取して、依頼品を調合、そして納品で、完全解決を目指す。




