(´・ω・`)
幸せすぎる。スキップしたい気分だった。フワフワとした気分に包まれる。お酒なんかより、フワフワする。これが、幸せってヤツか。まーお酒も少し飲んだけど。
料理も良かった。肉が美味いんだよね。野菜も。異世界産の素材には、魔力味が含まれていて、この高揚感がまた堪らない。ポーションの美味さってこの魔力味なんだと思う。
日本は、美食の国だったが、この異世界は、不完全だけど日本の調味料を再現したものがあり、そこに、日本に無かった魔力味を加わるため、本家といい勝負すると思う。
過去の転生者に感謝だ。
☆
そして、マーシャル工房に帰ってきた。そろりと、扉を開ける。なぜか分からないけど、罪悪感が。浮気をしていた気分だ。
部屋の主のハーフエルフの美少女は、すやすやと寝ていた。かなり薄着で、だらしない格好だ。体型がちんちくりんなので、エロさはないけど、美しい。だらけてるだけで、絵になる。エルフは、罪作りだ。
鼻を摘むと、フゴッと息をした。凄く愛おしい。恋愛ではなく、庇護欲だろう。頭を撫でる。寝てるのに、笑顔に変わった。表情の変化が見てて飽きない。額に肉って書きたい悪戯心に駆られるが、我慢しよう。着ぐるみの刑以上は、耐えられない。社会的に死んでしまう。もう、遅いか。
しかし、こんな無防備な子が、命を賭けてまでやらなければならない事があるなんて、この世界は、意外と残酷だ。
赤の森を、取り戻す。
任せてくれ、モブおじさんらしくサポートする。大金を稼いで、卑劣な大商人チュワークとやらから、買い戻す。
新鬼神薬の開発成功。いい流れだ。だけど、足り無い。お金もだが、暴力が足り無い。
この子は、純粋だから、おそらく金だけで解決できると思ってる。たぶん駄目だ。おじさんも、昔は、純粋だった。でも、世の中には、糞みたいな連中がいる事を、知っている。長年の経験で知ってしまった。
糞みたいな連中は、アホみたいな手をとる。簡単にルールを破る。そして、それが意外と有効なのだ。
暴力の世界では、暴力を持っていない事は、罪だ。弱い事は、罪だ。
おじさんは、勇者にはなれないだろう。そこまでの才能はない。身の程を弁えている。最強じゃなくていい。この少女を守るだけでいい。そのチカラは、手に入れる。
着ぐるみおじさんは、酒くさい息で、決心し、眠りについた。
☆
「ゼル、おはよ?」
「あぁ、おはよう。」
コポコポと、フラスコの液体が、沸騰する音がする。レイは、朝から、ちまちまと、錬金していた。ようやく起きたゼルに気付き、声だけかけてきた。でも、視線は、手元から離れない。魔視眼鏡をかけて確認しながら、様々な素材をすり鉢で潰し、秤で測って調合し、テキパキと作っていく。
机の上には、マンドラゴラのような顔のある素材が半分潰されていたり、あまり直視したくない仕様になっている。
ゼルは、その様子をむっくりと起きてしばらく見ていた。着ぐるみは、何処でも寝れるため、サイコーである。おまけに、クリーンという魔法は、中身と服まで綺麗にしてしまうため、脱ぐ必要も無い。もう、脱げない呪いの装備かもしれない。トイレ?ちゃんとチャックがついていて、脱がなくても、出来る親切仕様なのだ。困った事に。
「レイ、手伝う事は?」
「無い。稼ぎ時。素材は鮮度が命、素材が切れるまで、一気に作る。気が散るから、夜まで遊んできて、お金は棚の中。」
「あぁ、出かけてくる。」
「ゼル、行ってらっしゃい。」
不意に、いい笑顔で、美少女エルフに、お見送りされた。眼鏡姿も可憐だ。
あれ?もしかして、今の状況「ひも」だよね。完全にダメ人間だ!
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仕事も無いので、お小遣いを貰って、プラプラと街にでる。これで酒を飲んでパチンコに行けば、超ひも理論だ。
「キングベアの串焼を1本。」
「焼きたてにするから、ちっと待ってな。ほらよ。」
「ありがとう。」
ゼルは、串焼の匂いにつられ、屋台に寄った。香ばしく焼けた肉を噛りながら、溢れる肉汁と、湧き上がる魔力味を堪能する。
美味かった。
「美味かった。ごちそうさま。ところで、魔術師の庵に行きたいんだが?」
「あーそこの角を右だ。頑張んな。」
串焼の大将に、手を上げて目的地に向かう。大将は、熊の獣人に見えたけど、共食いとか無いんだろうか。
☆
テレフォン:魔法について
(ほとんどの人が、魔法を使えます。魔術師の庵という教育機関で、比較的簡単に、取得できるでしょう。)
そう、異世界といえば魔法だよね?だから、事前にテレフォンという魔法で調べていたんだ。今日は、強くなるため、新たな魔法を覚える。
ゼルは、レイのために、頑張ると決めた。勇者にはなれないかもだけど、モブおじさんぐらいには、なるのだと。
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学校とか、久しぶりで緊張する。自ら学びたいとか思う日がくるとはな。今日は、嵐が来るのでは無かろうか。
おぉ!魔法使い風のおじいちゃん先生が、捻れた杖を持って歩いているぞ、少し感動した。
子供が多くて、混ざるのが、少し恥ずかしい。んん?子供達に囲まれた!らぴゅらす?そうだ、良く知っていたな。
「我が下僕共、1人1個だぞ。」
飴玉を配り、ファンサービスも忘れない。何のイベント?紛らわしい格好でごめんな。脱ぐと哀しむ子がいるので脱げないだけなんだ。いや、先生としてでは、無くてね。普通の生徒として、初級魔法を教えて貰いに来たのだよ。でも千の魔法が使える上級悪魔に、教える魔法がない?
「我が使える魔法は、貴様等には、その有用性が理解出来ぬ物だ。気にする事は無い。今日は、見識を広めるため、初級魔法とやらを嗜みに来ただけだ。」
千の魔法?魔法は、ゴミ魔法のテレフォンの1個しか使えねーよ。魔獣のコスプレって分かるよね?さっき子供の前でファンサービスしたから、夢は壊せないけど。
ようやく、受付のおばちゃんに、魔法を勉強しに来た普通の生徒だという事を理解してもらい。魔法習得の方法を教えて貰う。
「勘違いしてすまないねぇ。えーと、初めてかな?」
「うむ、全くの無知だ。1から教えてくれ。」
「覚えたい魔法のカードを買って、魔法を唱え、カードが燃え尽きたり、溶けたりして、消失したら、覚えられる。才能にもよるが、初級は、だいたい授業10回ぐらい。入学金や手続きは、一切ないよ。どれにする?」
「初めは、人が少ないのがいいな。」
「なら、初級魔法の雷:高電圧がお勧めだね。」
着ぐるみを着ているため、子供が絡んできて落ち着かないので、不人気コースの雷を受講した。
雷:高電圧
触った相手に、電撃で攻撃。戦闘中に敵に触れますか?使いどころが難しいのが、人気の無い理由だ。
1日に何度も受けれるので、雷の教室に入り浸る作戦でいこう。もしかしたら初日で覚えられるかもしれない。おじいちゃん先生の授業を聞く。
☆
「雷魔法の最終目標は、天から凄まじい速さで落ち、爆発する光と音で、切り裂き焼き焦がす、雷神の一撃。あれを目指しておる。これから覚えるスタンは、触らなけばいけない制約があるものの、その威力は凄まじい。相手の動きを止める事もある超攻撃特化魔法じゃ。」
「雷は、馴染みが無いため、他より少し難しい。しかし、心配するでない。雷の感覚を身につけるため、皆の机の上に、雷玉を用意しておる。これを布で磨くと、雷玉が元気になる。元気の臨界点を超えるとビリッと痺れるダメージがくる。これがスタンじゃ!さて、しっかり磨いて、感覚を身につけるのじゃ」
微妙に惜しい電気の解説が続く。雷玉じゃ無くて、たぶん琥珀だろ。元気じゃ無くて、静電気な。
他の受講者と一緒に、ひたすら無心で、琥珀を磨いた。急にビリッときて痛い。
こんな方法で覚えられるのか不安だ。
☆
「さて、雷を理解したかの?では、魔法カードの使い方のおさらいじゃが、他の魔法と同じく体内に流れる魔力を指先に集めて唱えるのじゃ。1回の授業で、唱えられるのは1回限り。順番に指導していくぞい。」
受講生が、順番に、魔法カードを持ち、先生の指示によって、発動させていく。一番聞きたかった事を、さらりと説明された。
受講生が、スタンと唱えると、魔法カードに雷光が奔る。目の前の人のカードは、焦げついた。次の回で覚えれられるだろうとの事。いよいよ、自分の順番になった。緊張が高まる。
「初受講のようじゃな。未来の大魔法使い候補よ。さて、唱えてみい。」
「すたん!」
ふむ。発動しない。まぁ最初は、こんなもんだろう。少し残念だが。ん?驚いた顔で、おじいちゃん先生が見てきた。まさかな?
「発動しなかったか。特別にもう一度唱えていいぞ。」
「スタン!」
ふむ。やはり、発動しない。おじいちゃん先生も困り顔だ。
「た、大器晩成型か、素晴らしい。後で、特別授業を紹介するぞ。では、次の者。」
目を逸らされた。褒めて伸ばす方針なのか、優しい言葉が痛い。ダメな生徒でごめん。おじさんは、若い子と違って、新しい事は苦手なのだ。世話をかける。




