(´・ω・`)
対峙する2人の筋肉。
外に出ると、高級感溢れる馬車が目に留まった。ふと、チュワークを見ると、馬車を見て震えている。ほほぅ、これは良い情報だ。ちょっと、奥さん、馬車は、ボーナスアイテムですってよ。
「ぐふっ、紛い物め、貴様の番だぞ。謝れば
、赦してやる。」
「むん。まだヤレるニク。」
決意にみなぎるポチョムキン、まだ心の炎は消えていないっ。まだ、不可能に見える逆転を夢を見ているのか。そして、やはり、ここで高級感溢れる馬車を見た。
「確かに、これは気になるアイテムですね、チュワークさん。」
しかしながら、話をふられたにも拘わらず、セコンドの役目を捨ててチョロチョロと走り出し、ポチョムキンと馬車の間に、割り込むチュワーク。
「チュチュ、待ってクレ。これは買ったばかり、いや、そうダ!馬車の魔獣が、可哀想ダ。魔獣をタスけると思って、見逃して欲シイ。」
「むーん。分かった、見逃すニク。」
そして、空気の読めないポチョムキンは、あろう事か、この要求を受け入れた!見直しかけていたが、お前には、ガッカリだよ。
ちょっと、ちょっと、チュワークさん。神聖な二人の戦いに、割って入らないでくれますか?
首元を掴み、むんずと引き剥がしたが、その表情には安堵が見られ、ムカつく事、この上ない。
「チュチュゥ?」
くっそ、ネズミ語は分からんが、調子に乗ってやがる。
ポチョムキンが、動きだした。ボーナスアイテムを見逃した時点で、何やっても勝ち筋は無いんだよ。さっさと行動して諦めて、ん!んん!?チュワークの高級馬車に近付いていくぞ。そして馬車の魔獣を撫でている。何がしたいんだ。
ゼルもチュワークも、意図が読めず、困惑している。
「ん。魔獣を見逃してる。」
ごめん、解説のレイさん、その説明では分からないんだけど。「ギュオッ」と鳴き声がしたかと思うと、馬車から解き放れた魔獣が自由な大地へと駆けていく。
街の中に解き放れた、自由になった魔獣。あちらこちらで、黄色い悲鳴があがる。あれはチュワークの持物。よし、知らね。
「むん。ポチョムキン肉っ。」
マッスルポーズを決めて、ニカッと笑うポチョムキン。空気が読めない男と呼ばれたのは、過去の話だ。彼は、急速に、進化していた。
ポチョムキンさんっ。
魔獣は、チュワークとの約束どおり、見逃した。そして、後に残るは、購入したばかりの高級馬車。足に力を溜め、母なる大地を蹴りつけて、親離れを宣言する。空に焦がれるゴーレムは、高く跳ぶ。誰よりも、高く跳ぶ。
さらに、頂点で、くるっと一回転を決めて、フライーングボディープレスッ!
みるみると、破壊神の影が、チュワークの高級馬車に迫り大きくなる。チュワークの顔に、みるみる影が差す。ついには、目をつぶるチュワーク。
ぐしゃぁあ!
潰れた馬車の車輪が、こちらに転がってきた。うおっと、危ない。レイを抱えて、ひょいっと避けた。
「えっと、ここで、審議に入ります。只今の演技は大変素晴らしかったのですが、ポイントが全然足りません。最終決戦は、theプロテインさんの不戦勝にしたいのですが、お二方よろしいでしょうか?」
「ん。ポチョム見直した。負けでいい。」
「チュチュチュ、我々の勝利ダ。馬車が、ヂュヂュ。」
まったく、笑ったり、泣いたり、忙しい男だ。
「ぐふふ。では、次は俺の番だな。」
え?人の話、聞いてますか?なんて事は、残った無力な3人には、言えない。いいか、勝利=正義なのだ。それに、例え、聞いたとしても、意味は無い。この暴漢は、耳が悪いのではなく、性格が悪いのだ。
「ぐふっぐふふふ。先程のは少しズルに見えたかもしれない。筋肉の本質を魅せてやろう。有り難く思え。」
のしのしと、手近な建物に近付く。チュワークの悲しそうな顔に、ブーストがかかる。涙を流しながらチョロチョロと走り建物に近付く。
「プロテイン、ここは駄目ダ!」
「何故だ?家は違うだろう。」
「ここハ、愛人ハウス。3つの部屋がアル。」
「ぐふふ。命令できる立場か?」
「チュチュ、違いマス。」
「ぐふふ。俺は寛大であるぞ。先程の失言は見逃してやる。」
勇者の末裔、暴力の化身。theプロテインは、右手で壁に触り、チカラを込めた。
ピシッ、ビシィィィィ!
ただ、それだけだ。ヒビが入り、亀裂が奔る。死点を突いたのか、異世界の法則があるのか、原理は分からないが、圧倒的な力を込めた静かな攻撃で、マンションは崩壊の音を奏でる。
ガラガラと崩れだす。土煙をあげて、建物が崩壊を始めた。逃げ惑う野次馬。
ゼルはレイを、抱きしめ、広い背中でその身を守る。崩壊により、飛んできた破片が背中に当たるが、微動だにせず、耐える。耐えきった。
血で滲む背中は、男の勲章だ。おじさんは、剣士ではない。
ポチョムキンは、圧倒的な力の前に、膝から崩れた。これから、どれだけ努力しても、勝てる相手では無いと。
theプロテイン
勇者協会幹部の看板に、嘘偽りなし。
勝者っ!赤コーナァー、theプロテインっ。いやー強かったですね。ポチョムキンも善戦はしたんですが、次元が違うというかなんというか。
感動しました。血も涙も無いと思われていたチュワークさんも、男泣きです。
あぁ、崩れおちて膝立ちになっている敗者ポチョムキンに、勝者theプロテインが近付きます。健闘を讃え合うのでしょうか。
「むん。負けたニク、盾突いて悪かった。」
「ぐふふ。いいぞ、赦してやる。」
悪意の籠もった笑みで、theプロテインは、嗤う。そして、握手するかのように手を伸ばす。応えようとして伸ばしたポチョムキンの手を無視して、頭を掴んだ。
theプロテインは、ゴツゴツした手にチカラを込めて、ぎりぎりと、ポチョムキンの頭を締め上げる。じわじわと絞めるのが、このド腐れ男の性癖だ。
「赦してやる。天国へ送ってやろう。ぐふっ、ぐははは!!」
ミチリッと音がし、バンッと頭がハジケて、マッスルゴーレム、ポチョムキンは、この日、永遠に、起動停止した。短い生涯に終わりを告げる。
「ポチョムキン!」
「ポチョムーー。」
「ぐはっははぁ!!!」
theプロテインは嗤う。
「おい、チュワーク!後は処理しろ。いいな、ぐふふ。」
☆
「ヂュヂュ、これが要求する契約書ダ。」
「確認した。この程度なら、問題無いだろう。」
「ん。サインする。」
大事な財産を失ったチュワーク。ポチョムキンを失ったゼルとレイ。
哀しみに暮れる3人は、敗戦処理の契約書に合意した。




