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(´・ω・`)


 キョロキョロと、部屋を物色する挑戦者ポチョムキン。だが、だが、やはりこの部屋には、もう何も無いぞぉ。


 立ち止まり、ポージングを決めるポチョムキン。だが、弱い。それでは、普通の世界大会の戦いだ。んん?扉に近付くと、重厚な扉をべりっと引き剥がしたぞ。

 ちょっと待って欲しい。扉って、あんな簡単に引き剥がれる物なのかぁ?壁と扉を結合していた頑丈な蝶番が、まるでテープのように引き千切られているぞ。その千切れた切っ先は、まるでナイフのように、尖っている。


 そして、重厚な金属製の扉を、空中に持ち上げてぇ、粉砕っ!!


 ぐわわぁ〜ん!


「むん。アーイム、ポチョムキンニク。」



「これは、素晴らしい気転でしたね。」


「ん、気付いてた。」


 さすが、レイさん天才です。しかし、こうなると、チャンピオン後が無いか。いや、依然、余裕な表情だ。


「チャンピオンの、theプロテインですが、ただの強がりでしょうか、それとも何か策があるのでしょうか?」


「ん。壁を破る。」


「チューッチュッチュ、これだカラ、素人は愚かダ。この部屋ハ、壁を破って逃げればいいなどという、浅はかな獲物を罠にかけるために、実は逃げられないようになってイル。ここは、古代遺物の巨大装甲車の中。その薄い壁の裏には、厚さ120mmのアダマンタイト製の狂気の壁が控えているのダ。もちろんその事はプロテインも知ってイル。」


「あの、ちょっと、チュワークさん。聞いてもいないのに会話に入ってこないで貰えますか?」


「ん。」


「チュチュゥ。」


 戦場は、いつも緊張する。たとえ離れていても、流れ弾が当たるかもしれないからだ。緊張で震える手を、麻薬を打って誤魔化す兵士のように、レイを、モフりながら、癒やされる。これは、人を駄目にする麻薬だ。こんな時でも、辞められないとは。


 おおっと、チャンピオンに動きがありました。マァーッスル、ポージングッ。これに何の意味があるのか一般人である我々には分かりませんが、儀式なのかもしれません。


 theプロテインは、のしのしと近付き、パンパンとホコリを払うかのように、薄い壁を剥ぎ取った。 


 薄い壁の向こうから、光を吸収するかの様な黒い、傷一つ無い滑らかな壁が現れた。


 コンコンと壁を叩き、こちらを見る。


「ぐふふ、確認してみろ。」


「良いだろう。飛火石(ファイヤスト)!」


 theプロテインの要求に応え、ゼルの使える最強魔法の赤熱した石を、ぶつける。遅く射程は短いが、威力だけは中級の攻撃呪文。


 しかしながら、壁には、カンッと当っただけで、傷どころか、汚れ一つ付かない。これは壊せないと一度で分かる心の折られる強度。



「ぐふふふふ。弱いお前らに見せてやる、チカラといものを。これこそが、チカラだ。」


「ゼル、強隔離障壁(プロテクトウォール)


 緊張が走る。レイが、手を広げて前に出て呪文を唱えた。

 呪文の事を良く知らないゼルは、とっさに体を入れ替えて、抱き合うような体制で、背中を、theプロテインに向けた。もし、攻撃の余波がバリアを抜けたら、レイに当たるからだ。ゼルは文字通り、肉壁となる事を躊躇わず選ぶ。


 そして、チュワークは、あろう事か、そのレイの後ろ側の1番安全な位置へ、小さな体を紛れ込ませた。この矮小な男は、優れた判断能力で今まで生き残ってきた。


 くそっ、死んどけ。と思うが、ゼルは我慢する。ここで、ネズミを蹴る事より、レイに傷一つ付けない事の方が大事だ。強く抱きしめる。


 


「ぐははっ! 純粋成流筋肉(ザ プロテイン)!!!!」


 その凶悪な魔法の余波は、轟音となり、強隔離障壁(プロテクトウォール)を揺らす。脳が揺れるような衝撃。レイのプロテクトが無かったら、余波で絶命していた。


 舞い散るエアダストが、落ち着くと、厚さ120mmのアダマンタイト製の狂気の壁には、人が通れる大きさの真円の穴が空いていた。


 部屋から、外が見える。断面は綺麗で、まるで窓のようだ。theプロテインの放った神の一撃は、部屋の向こうにあった石柱にまで及び、綺麗な真円を、途中までくり抜いていた。


純粋成流筋肉(ザ プロテイン)

 射程範囲は、3m。それは、神を殺すための狂気の一撃、アダマンタイト製の狂気の障壁なら、やすやすと、貫通する。



「ぐふっぐふふふ。さて、第2ラウンドだ。」


 theプロテインは、高らかに哄笑する。この暴漢は、誰にも、とめられない。


 作ったばかりの丸い窓から、のしのしと歩き、外に出て、手招きをするtheプロテイン。


 ポチョムキンは、煤けた体を震わせながらついていく。もう、良いんだ。お前は、十分やっただろ。


「むん。まだ、頑張るニク。」


 2人の後を、3人は追う流れだ。新しく窓から見える外側の景色は、綺麗な通りに面しており、薄汚い裏通りでは無く、こちら側から入れば良かったと思う。チュワークのアジトは、文字通り表と裏を繋ぐ位置にあった。


 轟音を聞きつけた野次馬が、遠くから様子をうかがいに集まってきた。



 さて、さて、第2ラウンドに入りました。泣いても笑っても「マッスルトーナメント」の頂上決戦も、これが最後の大一番。今の所、チャンピオンのtheプロテインが、大きく差を開けて優勢ですが、このまま決まってしまうのか?はたまた、挑戦者ポチョムキンが、奇想天外な逆転の一手を打つのか!


「解説のレイさん、どう思われますか?」


「ん。ゼル恥ずかしい。」


 おおっと、失礼。抱き合ったままだった。まだその後ろで、震えて隠れているチュワークに、蹴りを入れて引き剥がす。


 耳の先が紅くなってますよレイ、でもそれは指摘しない。今、脛を蹴られるわけにはいかないのだ。決戦を見届けるため、3人も外に出た。




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