(´・ω・`)
《赤の森》を奪還した。とは言っても完全とは言えない内容だった。
夕暮れの、お洒落な小料理屋で、祝杯を上げる。ノンアルコールの飲み物で、乾杯したはずだが、レイが変な事を言い出した。これ、アルコール入ってないよな。
「ラプラス、3日だけ時間をください。」
「なんだ、レイ。酔ったのか?」
「赤の森で、やる事がある。」
「そうか、良ければ同行しよう。それにしても、チュワークめ、変な契約させやがって。あれじゃ、取り返したとは言えない。」
「え?いいの?」
「良く分からんが、地獄の底まで付き合うさ。」
「ありがとう、悪魔さん。」
卑劣なる大商人チュワークから、突き付けられた契約書は、絶妙だった。
《100年レンタル》
赤の森を、チュワークの関係者が100年間
、自由に利用できる。ただし、次の物を、1つ提出する毎に、期間は、1年短縮されるものとする。レンタル期間の延長は無いものとし、契約完了後は、最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。
提出する次の物とは、選別の枝。ディープキュア。レッドリーフ。
要は、チュワークのお使いをしないと立ち退きを拒否するという内容だ。
理由は、分からないが、どうにも赤の森での産出計画が難航しているようで、本部に結果を出せず、チュワークは弱っているようだ。
【選別の枝】
理由は分からないが、レイの嫌いな枝。
【ディープキュア】
猛毒消しや、性病の治療に有効。
【レッドリーフ】
赤の森で手に入る非常に珍しい素材。
「チュワークには協力したくないが、たった100個なのが絶妙だ。どうする?」
「ん。ディープキュアなら、赤の森で材料が揃う。調合材料は、《ポプの実》《メルカーナの卵》《透明空魚の浮石》。レッドリーフは、ほんと珍しい。」
「さすが、天才錬金術師。」
「んん。赤の森の、生まれだから。」
「そうか、知らなかった。そうだ、明日マリナを誘って、赤の森に出掛けるか?」
「なんで、マリナ?」
「な、なぜ、不機嫌になるのだ。魔導バイクを売る時に、約束しただけだ。」
「んんん。」
「いて、いて。蹴るな。悪かったから。」
魔導バイクを売って欲しくなかったレイが、駄々っ子のように、脚を、バタバタさせて、机の下から蹴ってくる。
魔導バイクは、赤の森の買取り交渉のために、相談もせず売り払ったのだが、結局、交渉が予想外の展開になり、その代金も、死蔵している。
「乗ってる姿が、格好いいとか殺し文句だろ。早くタイヤを見つけて、部屋に置いてある《魔導バイクに似た夢の残骸》に、取り付けたい。動け、動けよぉぉぉ。」
「あの、お客様、お静かに。」
「あぁ、悪いな。」
店員さんに、注意された。静かに食事を再開する。満たされた時間を愉しむ。
「レイ、酔ったのか?もしかして、それアルコール?」
「そうひゃけど?大人のレディだから。あと、酔ってにゃい。」
どうも注文をアルコールに、勝手に変えたらしく、酔いが回ったレイを背負って、お持ち帰りする事になった。
こういうのは、悪い男が、酒を飲ますのがセオリーなんだが、もしかしてお持ち帰りされたかったの?といっても、おじさんは、紛う事なき《ひも》なので、結局は同じ家に帰るのだが。
帰り際に、店員にお酒の事を聞いたら、え!お酒の提供に、なにか問題が?と聞かれたので、異世界ルールでは、セーフらしい。良かった。
「ゼルぅ、ありがとう、あひがとう。赤の森ひゃね。」
「あぁ、はいはい。酔ってるんだから、大人しくするのだ。」
背中に背負った小さき酔っぱらいを宥めながら、夜の道を、てくてくと、歩く。
そんなわけで、今夜も、見た目が少女の家に、転がり込む。異世界転移した直後は、これしか選択肢が無かったのだが、今は、信じられないくらいの大金が手元にある。
今なら余裕で自立も出来るのだが、このぬるま湯のような時間が心地良くて、今夜は、言い出せなかった。
いっそ、豪遊してみるか、前の世界で出来なかった事をあれこれ。
いや、それは違うな。ここに来た日に誓った事は忘れていない。そうだ、チュワークのアイテム100個を買い占めて、金で、ぽーんと解決してしまうか!
ぽぽぽぽーん作戦。
それだ!いい閃きもあって、足取りは軽い。それに、一応、チュワークには勝利して権利をもぎ取った。後は、札束で顔をパンパンと叩いて100点出してやれば、完全勝利だ。
背中の少女は、すやすやと寝ている。ははっ、緊張の1日だったからな。悲願成就の夜だ。今日は、いい夢が見れるさ、ぐっすり眠れ、お前は、良く頑張った。
おやすみなサイ。




