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怪しい、くじ屋「ドラゴンくじ」
確率20万分の1。選べる1等、ドラゴンソードもあるよ。との触れ込みでネズミ族が営業しているが、小銀貨1枚(千円)で買えるそのくじの中には5等までしか入っておらず、1等は関係者しか引けないゴミ箱だ。
1等の商品は、多岐に渡り、レイの切望する「赤の森」も、この1等の中に入っている。いわば、人質を取られたような状態だった。
だから、天才錬金術レイは、小銀貨20万枚(2億円)をかき集め、20万枚全てを買い占め、当たりの入って無いくじの山から、当たりを作るという常軌を逸した作戦を立案した。
今日も3人の薄汚いネズミ族が、いつものように、当たりの入ってないくじを、通行人を騙して売りつけていた。奥にいる元締めの犬の獣人は暇そうに寝ている。
作った現金は、レイが2億、ゼルが8億。現金でぶん殴り、神聖な赤の森を、薄汚れたネズミ共から、奪還する。
「さて、懲らしめにいきますかな。レイ、台詞は覚えた?」
「ん。任せて。」
颯爽と歩くレイに、付いて行くお付きの2人。予定どおり、ネズミ族がレイに絡んできた。
「チュチュ、ドラゴンくじは、如何ですヵ、エルフのお嬢さん。皆の憧れドラゴンソード、それとも白浜の別荘を手に入れてくださいヨ。」
「20万枚の中に、本当に1等が入ってるの?」
「営業妨害はやめてくれないかナ。当然、入ってるし、過去に何度も当てられてル。」
「ん。20万枚、全部貰う。」
「チュチュチュ、全部だと。小銀貨、20万枚だゾ。そんな大金、払えるわけ無いダロ。頭イカレてるのか、お嬢ちゃん。チュチュチュ」
腹を抱えて、爆笑する3人のネズミ族。
「ゼルさん、ポチョムキンさん。やってしまいなさい。」
「はっ。」
「むん。」
ゼルは、格好いいポーズをとった。
艶めく金属でできたマッスルゴーレムのポチョムキンは、台風のように、圧倒的な力で、不快に笑う3人のネズミ族を地面に叩き伏せた。ドン!ブォン!べしん!
ふらふらと、ネズミ達が立ち上がりかけた時を見計らい、ゼルは、懐から2枚の輝きまくる白銀貨(2億円)を取り出し、見せつける。
「静まれぃ、静まれぃ!この光り輝く2枚の白銀貨が、目に入らぬかっ!こちらにおわすお方をどなたと心得る。恐れ多くも先のマーシャル工房、マーシャル、レイ様であらせられるぞ!」
「レイ様の御前である。頭が高い!ひかえおろう!」
ババーン。
ちっぱいを、誇らしげに張るレイ。
ババーン。
「チュチュ、本物なのカ見た事ナイ?」
「安心しろ、本物だ。」
一般的に、流通している硬貨ですら、この知名度なのに、よく分からない印籠を認めさせるあのお方は、すげぇ。
「大金、チーズだ、山盛りのチーズを食べル。」
「オラは、風呂一杯のチーズ。」
「スパニエルさん、全部売れタ。」
歩合制のようで、ネズミ男達は、狂喜乱舞して、犬の獣人を叩き起こす。
「あ、何だ。寝てんのによ。」
「スパニエルさん、くじ全部売れタ。やっタ。」
「全部って20万枚か?」
「そう。チーズ。」
「くぁぁあ。これだから、ネズミは。てめぇらは、罰ゲームだ。」
「ぎゃあぁあ。」
大きく伸びをした獣人は、まるで歯磨きでもするかのような迷いのない動作で、3人のネズミをぶち殴る、倒れたネズミを引き上げて、さらにぶち殴り、失神させる。仲間に対して、平然と奮われる暴力。傷だらけの顔をしたネズミ族の男達に、新たな勲章が増えた。
犬の獣人は、面倒くさそうに、歩み寄り、レイに絡む。
「あぁ、部下が失礼したな。アンタが全部買うなんていう人か?」
「ん。」
「お嬢さん、そういうのは、いけねぇ。ウチは、くじ屋だ。少ない金で、当たるかもハズレるかも、そういうドキドキも売ってるんだ。そういう事されたら、他のお客さんがシラケてしまう。悪い事は、言わねぇ、今日は半分にしとけ。」
「んん。5等までしかないくじにドキドキはしない。」
「あぁ?何だと、良く聞こえなかったなー。メスガキが、もう1回言ってみろ!殺されたいのか?」
腕に自信があるのであろう獣人は、怒り狂い威圧する。この後、暴力で脅して金を毟りとるのが彼の普段のやり方だ。ゼルでは、勝てそうに無い。
しかし、そんな暴力男を指先1つで制する。レイが、パチンと指を鳴らすと、男の視界に、陰がさす。見上げると、のしのしと歩いてきた、磨きぬかれた屈強なマッスルゴーレムが、ニッコリと笑って威圧する。
「むん。よろニク。」
ガタガタと震えだしたチンピラに、もう一度言う。
「5等までしかないくじに、ドキドキはしない。」
「ひゃひゃ、冗談、冗談だよ。お嬢様。2回も言わなくても分かる。店を悪く言われてちょっと心にも無い事を言っただけだ。」
「ん。1等を出して。」
「ここには、20万枚もくじを置いてねぇ。チュワークさんトコに行ってくれ。」
「ん。案内して。」
「場所ぐらい知ってるだろ?なあ頼むよ、罰は受けたくないんだ。」
「選んで。案内するか、ここで罰を受けるか。」
おそるおそるマッスルゴーレムを見上げる犬の獣人。筋肉のテカリが恐ろしい。駄目だ、チュワークの用心棒「theプロテイン」を思い出してしまった。
レイは、お仕置きパンチぐらいの気持ちだったが、獣人は、殺されると思った。何故なら、そういう世界で生きているから、そのイメージしか出来なかった。そして、判断を誤り、絞首台に足を進めた。
「くそっ、付いて来い。」
大商人チュワークとの、交渉のテーブルに、つけた。




