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(´・ω・`)


 犬の獣人に、案内され、裏通りの雑多な建物に入る。入口は、屈強な獣人が睨みを効かせており、素人が間違って入ると、生きては帰れないような場所。そして、ネズミ族が、そこらじゅうをウロウロしている。


 下水のような異臭のする通りを抜け、建物の中に入ると、臭いは魔道具で清浄されているのか、気にならなくなった。


「ついたぞ。この部屋で待っていろ。」


「ん。早く呼んで。」


 ソファーに座り、何の音楽も無い、防音が施された静かな部屋で待たされる。最強戦力のポチョムキンは、後ろで仁王立ちだ。


 テーブルの上には、輝きまくる白銀貨2枚 (2億円)を、賭けている。


 活性化(オーバライド)×3、別視点(サードビュー)操人形(マリオネット)。すでに、臨戦態勢だ。



 コツコツコツ。

 杖の音が響き、その男は現れた。


 卑劣なる大商人チュワーク。


 高級なスーツを着たネズミ族が入ってきた。それが、彼の第一印象だった。よく見ると、同じ人族なのだが、宝石のついた指輪を沢山付けて、年もとっていないのに、杖をついて歩く男。一見、貧弱に見えるが、油断ならない男。

 目だ。嫌らしく細められた濁った目をしている。それでいて、ギョロギョロと、排水溝の奥から、光るような盗人のような目。その目が、この矮小な男の本質を物語っている。


 この国の勇者協会の犯罪部門の下っ端ネズミを束ねる小さな地下下水道の王。そんな裏の顔を持つチュワークは、存在が、ネズミ族に変質しつつあった。


「チュチュ、何がお望みですヵ?」


「ここに、白銀貨2枚ある、1等を。」


「お嬢さんハ、くじについて、ご存知無いのですヵ。確率が半分でも、2枚買えば、必ず当たるモノでは無い。勝ち続ける事もあれば、負けてしまう事もある。他のお客様と同じくルールを守ってくださイ。」


「あれに当たりなんて、入ってない。」


「言いがかりデス。お話しになりませんナ。」


「まぁ、2人とも待て。チュワーク、さすがに、これは欲しいだろ?我も、ドラゴンソードが欲しいなんて、無茶を言うつもりは無い。白銀貨2枚で、要求するのは、《赤の森》それだけだ。」


「とは言っても、赤の森は、なかなか魅力的ですカラ。」


「知ってるぞ、情報屋から聞いた。値段を吊り上げようとしても無駄だ。あの森は、ネズミ族に向いていない、死傷者続きで、赤字なんだろ。」


「チュチュ、貴方、名前ハ?」


「上級悪魔ラプラス、ゼルと呼んでくれ。」


「若手最強の勇者様と同じ名前ですカ。良いでしョ、ゼル。契約書を持ってこさせましょウ。」


 そう言ってチュワークは、杖にあるボタンを押した。どうやら、外と連絡を取る魔道具のようだ。

 緊張していたレイが、こちらを尊敬の目で見てきた。軽くモフる。

 ただなぁ、多分、駆け引きは始まったばかりだ。この相手はロクなもんじゃない。笑ってる内は、交渉にすら入れていない。


 作り笑顔で、チュワークが、手下の持って来た契約書を渡してきた。レイが何か言いたげだったが、手順があるので、このまま進める。


「どうぞ、契約書でス。」


《赤の森を譲渡します。大商人チュワーク》


「どちらが譲渡するのか関係性が、ハッキリしていないな。証人もいない。確約金もない。女神印もない。」


「これは、失礼。ほら、書き直セ。」


 杖で、手下の顔を殴打し、書き直させるチュワーク。

 静かな部屋で下っ端ネズミが、文字を書く音だけが、響く。



「緊張で、喉が乾いた。水が欲しい。」


「後程、ご用意しましょウ。」


 揺さぶりをかける。角のねじれた老人が、教えてくれた裏社会では有名な詐欺ツールの1つ、仮面契約書は、水に濡れると本来の契約書が現れる。飲み物をすぐに出すのを拒否したという事は、どうやら当たりだ。この悪党は、確定で、使ってきた。


「そうか、それは悪かったな。」


「いえいえ、大丈夫ですョ。ほら、出来ましタ。さぁ、レイさん。こちらにご署名してくださイ。」


 大商人チュワークは、営業スマイルで、優しく契約書をレイに差し出してきたが、レイはこれにサインをする気が無いため、ガン無視して水を差し出してきた。


水作成(ウォーター)。ゼル、ん。」


「ありがとう、レイ。」


 レイが、アイテムバッグから出してくれたコップを受け取る。レイには心苦しいが、受け取り損ねて、コップの水をわざと契約書の上に、こぼす。


 仮面契約書は、先ほど手下が書いた契約文字が水に流れて、とんでもない内容の文書が、下から出てきた。


《奴隷契約書:財産権の完全譲渡》


 こんな文書に、サインさせる気だったのか!ほんと、クソ野郎だな。



「チュワーク。これは、随分と、愉快な契約書だな。ああん?」


「チュチュチュチュ。契約書を濡らすなど、何たる礼儀知らずヵ!!」



 卑劣なる大商人チュワークの作り笑顔が、消えて、真っ赤な顔で激昂した。悪事がバレて謝罪するのでは無く、相手を批判し攻撃する所が、この男らしい。人格は最悪だが、悪人としては、素晴らしい資質。


 さて、卑劣なる大商人チュワークよ。薄っぺらな営業スマイルの仮面が剥がれたな。これで、ようやく交渉が、スタートだ。


 返して貰うぞ、《赤の森》を。



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