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登山家は、言った。そこに山があるから登るのだと。彼らは、山に魅了されている。だから、危険な雪山に、たった1つしかない命を賭けて取り憑かれたように登るのだ。
今、ゼルも山に魅了されていた。2つの胸のお山。ぽゆんぽゆんとした脳内を刺激するマリナ山に。
「ゼル?マリナのとこに、いくの?」
「あぁ、赤の森の買い戻しの為に、少しでも稼いでくる。」
レイの、じと目が冷たい。ブリザードのようだ、例えるならば雪山。バイトに行くだけだ。やましい所など何もないというのにレイの目は冷たい。
「ふーん、バカ。ラプラスは皆のラプラスだから。」
「夕方には、帰る。」
「行ってらっしゃい、ゼル。」
レイは、なにかに気付いた様子で、冷たさが少し和らぎ呆れた表情でお見送りしてくれた。こんな表情ですら、絵になる美しさだ。長い耳は、心なしか垂れている。うっ、なぜか心が痛い。
ポーションの納品を済ませ、足早に魔獣キャンディー社へ向かう。心ここに非ずだ。すまない、急いでいる、そこを通してくれ。
早く仕事に行かねば。仕事は大変だが我慢しよう。マリナに、ずっと1日中、ぎゅっと抱きしめられる係なんて、ぐへへ。2度目のお誘いを断るのは失礼に当たるから、仕方がない。
見慣れた魔獣ラピュラスの絵が書かれている看板の案内に従って、歩いていく。この看板は子供目線なのか、やたらと低い位置にあるので、時折見逃しそうになる。近づいてきたのか、道がファンシーな色で塗られてきた。この道は少し弾力のある素材で、歩いてて楽しい。
カラフルな建物が現れ、その門の前には、親子の行列が出来ていた。並んでる子供達に気付かれてラピュラス!とか騒がれたが、順番待ちしていて動けないらしく、その横を手を振りながら行列をスルーして門に到着。小さい遊園地のようだ。
「ようこそ魔獣キャンディー社へ。ゼルさまですね、店長は、マリナのお部屋にいます。」
「ん?えっと、どこにあるのだ?」
「はい、探してみてください。」
係員のお姉さんに、笑顔で案内を断られるゼル。おそらく楽しんでくれというスタンスなんだろうが、そんなサービスはいらない。ゼルは、教えて欲しそうに、立ち止まっていたが、後ろの人に押し出されるように、前に進んでしまう。
「奥さま、初めてですか?この鍵で大人ゾーンに行けますので」
なんて会話が後ろの方で聞こえたが、鍵貰ってないよ?だけど、どんどん入ってくる人に押し込められるように、中に入ってしまう。門をくぐると、魔道具なのかクリーンがかかったようにサッパリした。
足元は、エアー遊具のようにふかふかと反発する。ただし、地球で見たのと違って、ほぼ一面に展開されており、やたらと面積が広い。
室内は、甘ったるい香りに包まれていた。明るくポップな色調の部屋、何処となく、マーシャル工房、つまりレイの部屋に似ている。レイちゃん、魔獣キャンディー社、好きすぎだろう。熱狂的なファンかな。
「ラピュラスー」
とふっ
小さな幼女に全力タックルされた。
とふっ
幼女A,幼女B,男児Aに囲まれた。
どうしますか?
1.戦う
2.魔法
3.逃げる
戦うって何だ?3.逃げるの1択だろう。逃げるよ。そして、マリナに会いに行くんだ。マリナに、ずっと1日中、ぎゅっと抱きしめられる係だから、こんな場所で立ち止まれない。
ミス!しかし、回り込まれた。
ミス!しかし、回り込まれた。
駄目だ、逃げれない。
幼女A、Bが、ガッチリ掴んで離さない。
「おーい、皆。ラピュラスがいるぞー。」
男児Aは仲間を呼んだ。
どうやら、仕事が始まったらしい。子供達を満足させながら、マリナの部屋まで進まないといけないらしい。網の向こうの大人ルートを通る選択肢はナシだろう。
マリナのぱふぱふが、遠い。レイの言ったラプラスは皆のラプラスだからというのは、こういう意味か。
仕方ない、攻撃だ。レイを骨抜きにしてきた技を使う時が来た。幼女Aに、もふもふクローだ。ほっぺたを、むにむにする。
「あっ、ひゅう。らぴゅらしゅー。」
幼女Aを倒した。まずは、1人、天国へご招待だ。しかし、男の子に、この技は効きづらいかもしれない。
「くらえー、かんちょーだ。ラピュラス!」
「ふぐぅ。」
何て事をしやがる。男児Aに、かんちょー攻撃をされた。痛い。このホモ野郎め。
「タートル。」
硬質化を唱える。これは、部分的に硬くなる魔法だ。ケツをガードした。
「さらに、かんちょーだ。くらえー、ラピュラス!い、痛いぞ。」
「ふっ、愚かな小僧よ、我にそのような攻撃は効かぬわ。オーバライド、オーバライド。吹き飛べ小僧、ふんっ。」
活性化で筋力を上げ、男の子を投げ飛ばし、弾力のある壁に叩きつける。男児は、満足そうに飛んでいった。これで、2人っ。
期待にキラキラと満ちた目で、子供達がゼルを見ている。
「ラピュラスーあたしも、あたしも。」
「良かろう、小童共め。もふもふクロー。吹き飛べ小僧。」
時折、幼女が投げ飛ばしや、男児がもふもふクローとか逆の事を要求されるが、それを次々と要求どおり叶えていくゼル。
「はあ、はあ。」
「どうしたのー?ラピュラス?」
「何でもない。ところで、マリナのお部屋は、どこにあるか知っているか?」
「1番上ー?」
「さんかいだよ。」
「そうか、偉いぞ。良く知っていたな。」
息が切れる、体力の限界だ。子供の無尽蔵の体力におじさんは、ついていけない。まだ入口から一歩も進めていないが、倒れる限界は近い。倒したはずの子供達が復活するのも問題だ。あれ?君は2回目だよね?
回復アイテムが欲しい。疲労回復が使えれば良いのだが、あれは中級魔法なので、まだ使えない。
くいくいと、順番待ちをしている子供達に、キラキラした目で迫られる。疲労の限界なのだ。相手はしてあげたいけど、おじさんなのだ。
ふと、オリジナル魔法の存在を思いだした。正直、使いたくはないが、使う時が来たようだ。
「ラピュラスー早く早く。順番っ。」
「良いだろう。小童ども、我のチカラを見せてやろう。」
くそう。日本人ならではのオリジナル魔法見せてやるぜ。




