↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/5

第2話

『あと2ブロック先、目標地の食堂です。複数名による犯行のようで、現在交通も止まっており、渋滞となっています。十分なご注意を』


「犯人の装備は拳銃だけ?」


『エンジンを改造されたスクーターに、軍事用の大きな機関銃を積んでいる様です。詳細までは分かりません』


建造物の多いこの街では、ジェットパックのような飛び方より、壁や車を飛び移る方が適している。こうした渋滞時には車が障害物となり、予測もしづらい。


「あと50秒はかかるかなぁ。ドローン飛ばして!」


『では、偵察に参ります』


小さなドローンなら、私よりも格段に速く現地に着ける。実は、戦闘能力も重要なのだけど、情報はより大事だ。


私は18の時に活動を始めた。最初は小規模な事件や事故からで、次第に大きなものにも手をつけていった。やりがいも大義も感じた。その結果、大学に行くつもりも無くなり、貯金を崩しながらヒーローやってる。それの底を尽きるまではとりあえずやるつもりだ。私についての心配は後回しと決めている。


『人数は8人。リーダーはスクーターの上の、赤いスカーフをした男です。地下格闘で一時期名を上げた者のようですね。人質は縄で縛られ、喋れない状況ですが、身の安全は問題ありません。では、急ぎましょう』


「にしても、スーツの改良はまだ出来そうだね。まだまだ遅くってさ!」


『時速200kmは出ていますが、これ以上を行くのなら、何か別の方法が要りますね』


車や建物に飛び移りながら街を駆け抜けるのは、あまりに清々しく、心地いい。そしてその姿は黒いイナズマのように激しく見えてくれる。


もう、その場が見え始めていた。


「さて、このSILVER CROWが行くよ!」


クラクションの音よりも大きく、銃声がこの場を支配していた。乱発によって割れたガラスが地面に飛び散っている。


「4000万持ってこい!さもなきゃここ動かねぇぞ!」


メガホン片手に、ボスみたいな男が騒いでいた。


私も負けじと、ゴーグルのスピーカーをONにした。


「高望みだねぇ。誰も持ってないよ?そんな大金。帰るなら見逃す!って言っても帰らないだろうけど。でも本当だよ?逃げちゃえよ」


最近ちゃんと分かってきた。挑発は、実は私の得意分野で、効果アリだってこと。


「誰だあんた?」


「お前に聞かれるのは………なんか嫌だけどいいや。SILVER CROWってヒーローだ」


あくまで市民の希望のための名前なんだけどな。是非もっと沢山の人に名を知られたい。それに京都の300番ブロック辺りでは、段々名前も定着してきたし。


「なんか聞いたことあるかも。あんま見た事ねぇけど」


あー最悪。犯罪者の恐怖対象でしか無くなるのは嫌だってのに。


「まーいいや。ちゃっちゃと行こう、君ら雑魚でしょ」


「おい、俺らはあの、百鬼夜行団だぞ!分かってんの?」


下っぱらしいやつが言った。にしても間抜けな名前だ。安直だし長い。もちろん聞いたこともない奴らだ。でも良かった。挑発が効いてる。


「知ってるよ。雑魚が100人群れあってるだけの、腰抜け集団だ」


「もういい!殺せ」


さて、1対8ってところかな。みんな大体、銃かバットかナイフってところだな。機関銃だけ注意すれば問題ないだろう。


「Y.A.T.A.煙幕出して!」


『了解しました。油断なさらず、お気をつけて』


ドローンから吐き出された煙で奴らの視界を奪う。でも、私には見える。優秀なドローンという目があり、ゴーグルがあるから。奴ら、拳銃は打てないし、近接で私が勝てない訳がない。一人ずつ、的確に無力化していけ。冷静に。


「あっ!」


情けない呻き声と共に、私の爪にナイフが狩られた。振動と熱を組み合わせた、アルミニウム合金のこの爪は、大抵のモノを切り裂く。きっと、銀行の金庫でさえ。


そして、小型スラスターをふんだんに使う事によって、私の非力で乏しいスピードを大胆かつ丁寧に補う。


「いっ!」


重い蹴りを入れてやった。綺麗に吹き飛んだ。思い通りにやられてくれると、やりがいがあるというものだ。


「どこだ!どこに居る!」


「見えたもんじゃねえ!あぁっ!」


「大丈夫か………あぁっ!」


さて、あと三人。しかし、そろそろ煙幕が切れてしまう。しかしまだ、機関銃が片付いていない。


「こっちには人質がいる!分かってんのか!」


「Y.A.T.A.人質は大丈夫そう?」


『リーダーと思われる男のそばに居ます。少々危険かと』


「見えたっ!お前っ!」


マズイ、銃を向けられている。じきに他のやつにもバレるだろう。


「分かったよ。お手上げだ」


と言いながら、ドローンは奴らの背中を捉えている。お手上げは、Y.A.T.A.への背後を取れという合言葉の様なもの。私が合図を言えば、捕縛装置を吐き出す。


「降伏してくれるならありがてぇ。殺人罪は流石にめんどくせぇからな。殺さず後でアジトに持って帰ってやるよ。そうすりゃ………」


「合図!」


勢いよく飛び出した捕縛装置はロープを体中に絡め、あっという間に制圧してしまった。


「は?んだよこれ!」


リーダー1人だけだが、これで十分だ。後は本当に腰抜けしかいない。


「さて、リーダーは捕まえたよ。君たちに勝ち目は微塵もない。大人しく降伏してもらおうか」


「………分かったよ」


警察を呼び、その場を離れようとしたその時だった。


キンッーーー


冷たく、大きな金属音と共に、赤い一滴が頬に跳ねた。


リーダーの首が飛んでいた。あまりに一瞬で、何が起こったか理解を拒んだ。


「………おい、おい!あんたがやったのか?嘘だろ?」


「違う!私じゃ………Y.A.T.A.どうなってる!」


『すいません。捉え切れませんでした。私のシステムの誤作動でもなく………何かが首を取っていったとしか言えません。そして、最悪の事態です。人質の子供が消えています』


「警察だ!道を開けてくれ!」


その顔は、幸か不幸か、さっき取り調べを受けた警察官だった。


「先に言うけど、断じて誓う!私は殺してない!」


「待て、何があっ………君がやったのか?なぁ、事故を起こしたんじゃないか?その武器のせいで」


「違う!私じゃない何者かが彼を………」


「………悪いが、話は署で聞くよ。君を容疑者として連行する」


その顔は、何一つ信じていなかった。私は何も言えなかった。首の無くなったその死体には、私の捕縛装置が巻き付いていた。辺りの人も全て私がやったものだ。彼らは死んでいないとはいえ、私があまりにも怪しく見えてしまう。


グローブもブーツもゴーグルも外し、私は手を頭の後ろに回し膝をついた。


冷たくてキツい手錠をかけられ、私は警察用車に入れられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。