↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/5

第1話

2089年

京都

316番ブロック交番

第3取調室にて




「えーと、ユイ・ミナトさん。21歳。大学は?行ってないの?」


「自由のはずだけど。っていうか警察がそれ聞くのは違うでしょ。デリカシーってやつをさぁ………」


「まぁ確かに。申し訳なかった」


窮屈な取り調べ室。机が1つと、椅子が2つだけ。扉にはセキュリティによるロックがかかっている。無機質な灰色の壁が、薄暗さと緊張感を醸かもし出す。まぁ、もう緊張しないけど。


ここに入れられるのは初めてじゃない。きっと警察は私をどうにか制御したいのだろう。しかし、私はそんなことを好まない。天才が凡人に縛られるなんてあり得ない話だからね。ただ、制御したい気持ちは、わからなくもない。


「じゃあ、本題に移ろう。この動画は君で間違いないよな?」


それは、夜を駆ける、ヒーローである私の姿。ネオンに光る街を横に、空飛ぶ車を下に、黒く飛び抜けてゆく。大きな、赤いグラスのゴーグル。小さく尖った爪の出た、グローブ。スラスターのついている大きめのブーツ。そして周りを素早く飛びまわるドローン。


全てが私の発明品で、道端のガラクタから産んだ最高傑作達だ。これらこそが、私が天才である証だ。


「あのさ、これは自警団活動だよ。ただただ、街を飛んで遊んでいるんじゃなくてさ。あなた達警察の仕事が不十分なせいで、困ってる人がそこらじゅうにいるんだよ。彼らは自分の身を自分一人では守りきれない。私がいなきゃ、救われない人がいるんだ」


少しクサいセリフだったかもしれないけれど、実際そうだ。もちろん、私がどれだけ頑張ろうと彼らの全てを救うことはできない。でも、責めてこの物騒な街を少しばかり良くすることはできる。


力を持つ者なら、持たない者をできる限り助けるべきだ。私はそう信じる。


「いや、ミナトさん。別に自警団活動のみについては、問題無いんだよ。謝礼金だって出すことも多いんだ。君の問題はこの武器。危なすぎる。基本、こういう活動の場合、多少は目をつむるんだけど、君はやりすぎだ」


たしかに、あれには人を簡単に殺せる威力がある。でも、丸腰では何も出来ないだろう。ましてや、陳腐なスタンガンやナイフなんて持ったところで挑発にしかならないのだ。


現状、この国に法は機能していない。発砲音が飛び交い、今一番の需要は防犯グッズやシェルターになった。


金のない弱者は更に金を無くしていく、最低な貧富のピラミットができてしまっている。


「私は人は殺さないし、極力傷つけない。っていうかさ、時間の無駄だよ。実害が出てから私を責めたらどう?こんな事に時間使うくらいなら、路地裏で震える子供達をどうにかしてあげて」


私のメガネにはディスプレイを埋め込んでいる。犯罪情報を、いつどんな時でも知るために。あらゆるSNSの情報から、現在地付近の事件をピックアップする。メガネなら、こう言う時でも奪われにくい。


ディスプレイが、青く、小さく光った。


危険度レベル2

10ブロック西の食堂にて銃撃事件が発生。

犯人は人質に10歳程の男の子を人質に取っている模様。


「そんなに言うなら君が警察に入ったらどうなんだ?ちょうど1人辞めたところだ。歓迎するよ」


そろそろ、こんな所出てやろうと思ってたところだ。既にここのセキュリティ解析を始めている。


「あんたらの廃れたテクノロジーと無駄ばっかの事務処理をやる気はないよ。あと、時間切れね」


『セキュリティシステムのハッキングが完了しました』


メガネを変形させ、ゴーグルになる。


扉のロックが解除され、自動的に開いた。もちろん、彼に拒まれた。


「待て、まだ聞かなきゃいけないことが沢山ある!逃げたら流石に放っておけない!」


「それはあなた次第じゃない?ちなみに防犯カメラと録音は全部消去したよ」


「なぁ、それは僕に警察を欺けと言っているんだぞ。君を少なからずリスペクトしているし、ただ注意するためだけに君を呼んだんじゃ無い」


私はこのまま腕時計に仕込んだスタンガンを打っても良かったが、対話を試みることにした。


「じゃあちょっと待っててよ。今事件が起こってるから、それ片付けたら戻ってくるよ。それで話をしよう」


「なにか連絡先渡せるか?」


「じゃ、私の発明品。返してくれたらあげるよ」


手袋。スニーカー。スマホ。全部ただの日用品や小物で、いつ持っていてもおかしくない物にした。肌身離さず持ち、いつでもヒーローとして人を救えるようにするためだ。


「起きてる?Y.A.T.A.仕事だよ」


『はい。いつでもどうぞ』


「戦闘準備だ」


『SILVER CROW 起動します』


手袋は中に仕込まれた外装と爪を出し、手首には小型スラスターが顔を出す。

スニーカーの底にはさらに大型のスラスターが出てきて、空間を揺るがすような振動と熱気が煙と共に浮かぶ。

スマホは小型のドローンとなり、偵察から戦闘の補助までお手のもの。中には煙幕や麻酔銃、捕縛用のネットなどを仕込ませている。

そして、このY.A.T.A.は私が開発した万能戦闘用AIで、ドローンから何から全ての発明品とリンクさせている。私の思考や、戦闘のクセの隅々まで理解させた、唯一無二のAIである。


「はは、すごいな。昔のヒーロー映画みたいだ。それにかなり高性能なAIじゃないか?なぁ、本当に君一人でやってるのか?天才メカニックのエンジニアが居そうなものだが」


「私は天才で、群れるのが嫌なだけ」


私は交番を飛び出し、ヒーローとして人々を助けに向かった。


目の痛むようなネオンの光が、私の横目を通り過ぎてゆく。


空飛ぶ車、空中豪邸。荒れたエンジン音がどこかで響いている。一時期増えていた綺麗な桜の木も、今や生気を失った様なものばかりしかない。


スラムも高級住宅も混在した、混沌な景色。富裕層は、貴重な反重力物質を使い、貧しく怯える人々が見えないほど、天高く遠くに住もうとする。影ばかりが降り注ぎ、陽の光すら奪われてしまった。


この街、そして京都全体が、そして日本が。誰も死を恐れる事なく、かつてのように暮らせる日が来るのだろうか。まあ、多分来ないだろう。神様でも来てくれない限りは。




「僕だって、警察がこんなだと思ってなかったさ。結局、この世界には彼女らの様なヒーローが必要だ。邪魔しちゃ良くないか」


「あ、連絡先もらってない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。