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ようこそ鬼道島へ  作者: ダノン
蕾ルート
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30/32

蕾ルート2話

「きみーとわたしーは恋人〜♪何があっても離さないで、二人三脚で助け合おう〜♪」


翌日、蕾さんの希望通り俺たちはデートしていた。

場所は島内ではなく島外だ。

ほとんど島から出たことのない蕾さん。

外に出たがっていた彼女からしたら、脱出計画の予行演習との事。

「ご機嫌ですね」

「そりゃあね。初恋の相手と結ばれてデートだもん♪」

ふんふんふーん♪と鼻歌混じりで答える蕾さん。

「それでまずはどこ行きます?」

港に着き、スマホで地図アプリを開く。

今はまだ2月だ。鬼道島の外はまだまだ寒い気候が支配している。

俺はヒートテックに黒のダウンジャケットで身をつつみ、身体を冷やさい対策をしている。

島の外を知らない蕾さんは、平気平気と舐めていて、いつものワンピースで赴こうとしていたので、美咲先生の赤いコートを借りてホッカイロを持たせている。

「まずはやっぱり守君の実家かな」

「山の中なので却下」

「え〜……」

「ショッピングモールとかどうですか?」

「行きたい!」

シュンと枯れていた花が一気に満開になった。

これだよこれ。この人の可愛いところ。表情の変化がたまらん。

「じゃあまずはバスに乗りましょう。港とショッピングモールを往復するバスがあるので、それで行きます」

「はーい」

潮の香りがする港で、バスを待つ。

蕾さんの手が俺に触れる。

「どうかしました?」

「手、繋ご……?」

カァと彼女の頬が赤く染まる。

今の俺も多分同じ状況だ。

俺は無言で蕾さんの小さな手のひらを掴む。

「こうじゃなくて、こう」

蕾さんが1度手を離し、俺の指に自身の指を絡める。

いわゆる恋人繋ぎだ。

公共の場で、初めての恋人と手を繋ぎデート。

気恥しさもあるが、嬉しくもあり、俺の胸はほのかに暖かかった。



「着いたー!噂通り大きいね!」

「ここまで大規模なお店は、島にはありませんからね」

自動ドアを抜け店内へ。

まず目に着いたのは、カフェ。

「ここでお昼にしよ!」

「3階にフードコートありますよ」

「ほんと!?」

「はい、カレーにラーメンにハンバーガーと他にもうどんとか色々です」

「ハンバーガー食べたい!」

「わかりました」

エスカレーターで3階に。

「あ!見て見て!本屋がある!」

「ちょうど隣り合わせなので、ここを抜けてそのまんまお昼に行けますが、先に見ます?それともお腹を満たしてからでも……」

「先に見る!」

蕾さんの目がキラキラと輝いている。

ここは彼女のペースに合わせよう。

「わかりました」

「ふんふんふーん♪漫画ー♪ラノベー♪」

嬉々として、オタクゾーンを探し始める。

「俺も久しぶりに来たので、陳列棚変わってるなー」

以前訪れた時はオタクゾーンだったスペースが、文学小説ゾーンへと変えられていた。

文学小説。

学習関連。

絵本。

並べられてる本を見るにではなく、その上の表札に目を配る。

奥まで進むと、漫画、ライトノベルと記された表記を発見した。

「あの辺ですね」

俺は蕾さんをエスコートして彼女が探していた目標の場所へと連れ出す。

手を引いて。いや、手を繋いだままで。

彼女の温もりを感じて俺はドキドキしている。が、今の蕾さんは俺ではなくオタク全開のテンションで気にしてない、と思う。

「うつ転ある!」

うつ転とは『うつ病だった俺が、異世界に転生した件』という作品だ。

貧豪(ひんごう)ある!」

貧豪とは『貧民だった俺が豪運で成り上がる』という作品だ。

蕾さんのテンションは限界突破している。

しているのだが、俺の手は離さず、ずっと繋いだ状態でズイズイとあれやこれやと人気作から新作まで舐め回すように本棚を漁る。

正直、辟易はしていない。

ただ、彼女が目を輝かせて物色しているのを見ていると、自然と俺も楽しくもあり、嬉しくもある。


10分ほど悩んだ末、『うつ転』『貧豪』そして、『あの、神様余計なことしないでくれます?』通称『あの神』を選び会計を済ませた。


「おっ昼おっ昼おっ昼~♪」

本屋と隣接しているフードコートへ。

「ハンバーガーでいいんですか?」

「まって!カレー、ラーメン、牛丼。どれも食べたい!」

「ゆっくり選んでください」

「守君は何食べるの?」

「合わせますよ。一緒の食べたいですし」

「ダメ」

まさかの否定。

「なんでですか?」

「それぞれ違うの食べてシェアするの!」

ハンバーガーのセットのポテトやナゲットなどをシェアするのはわかるが、ラーメンやカレーでシェアとはこれいかに。

「ちなみになに食べるか決めたんですか?」

「私が牛丼で守君がカレーね」

「なるほど、牛丼カレーですね」

「正解!」

向かいの蕾さんが指で丸を作る。

まぁそれならあり……なのか……?


蕾さんの指示通り、カレーを頼み、彼女は宣言通り牛丼を選んだ。

俺たちは机を挟んで向かい合って座る。

「いいですか?少しずつ行きますよ?」

「うん」

俺はカレーのルーを大きめなスプーンで掬い、蕾さんの丼へと移す。

3回ほど輸送した。

「もういいよ」

彼女が制止した。

そしてカレーの乗った牛肉をお米と一緒に口に頬張る。

「んー!カレーのスパイシーと牛肉の独特な食感。お米も進みますなー!」

「ご期待にそえて良かったです」

「はい、次は守君の番」

「へっ?」

目の前の黒煙色のお姉さんが箸で牛肉をつかみ俺のカレー皿へ。

「あの、これって……」

「ふふふ、いいの。それとも迷惑だった?」

「いや、迷惑では無いです!ただやっぱり意識しちゃって……」

「お姉さんの作戦勝ち!」

むふーと胸を張る。

この人初めから関節キスさせようという算段だったか……!

だがここで断ったら蕾さんは気を落とすし、何よりご飯を用意してくれたお店の人、それを提供してくださった農家や牧場の人に申し訳ない。

ええい、勇気を振り絞れ!

俺は勢いよく、カレールーと一緒に牛肉を頬張った。

「ふふ、ありがとう。守君」

蕾さんが頬を朱色に染めてお礼を言った。

「いえいえ」

そう返すのが精一杯だった。


その後は百均、ゲーセンと周り、日が傾き始めていた。


「あ、この映画来月からなんだ」

蕾さんがこぼす。

さぁ、そろそろ帰ろうとなったタイミングで映画のポスターが目に着いた。

「あー、そういえば」

「じゃあ、来月また来よっか」

「いいですよ」

来月の予定がひとつ、早くも決まった。

俺たちはバスに乗り、港で船に乗り島へと帰った。

その間、手は恋人繋ぎのままだった

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