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ようこそ鬼道島へ  作者: ダノン
紫音ルート
22/29

紫音ルート5話

「それじゃあ、本日の議題です。校内新聞を作るか否かについて」

 場所は学校2階の隅にある生徒会室。

 会長の眠子さん。

 副会長の忍さん。

 会計の恵さん。

 そして書記の俺だ。



 眠子さんがホワイトボードに専用のマジックペンで、キュッキュと『議題、校内新聞について』と記す。

「ブラフともいえど、校内新聞作るゆうたからええんとちゃうか?」

「私も反対はしないわねぇ」

「俺は反対です。全校生徒の少ないこの学校で誰が作るんですか?」

「「「ん」」」

 3人が俺を指さす。

「流石に横暴がすぎません!?ただでさえ学級委員長も兼ねてるんですよ、俺!」

 バンと机を叩いてパイプ椅子から立ち上がり、抗議する。

「それは問題あらへん。うちと自分、次期生徒会のルミと紫音さんの4人で作れるやろ」

「いや、なんでサラリとルミちゃんと紫音を生徒会に入れる前提なんですか?」

「ゆうて他に候補いるか?」

「徹とかは?」

「「「あれは論外」」」

 またまた3人がシンクロした。

「学校に真面目に通わない、女たらし、おまけに空気。生徒会に相応しくないわ」

 眠子さんがバッサリ切る。

 ごめん徹、反論できねぇわ。



「まぁ、冗談はこの辺にして、生徒会活動の一環として全員で作ればええやろ。この間みたいに誰かに撮影頼んで授業風景・行事風景を写真に収めればええやろ」

「それは良いですけど、問題は誰に写真に風景を収めて貰うんですか?」

「そこまで考えてあらんかったわ」

「おいこら待てや」

 腕を組んで、うぬぅと唸る恵さんに俺は思わず、彼女の口調を真似てツッコミを入れる。


「まぁ、体育の他に音楽や美術なんかも全校生徒一環されてるし、写真撮影のタイミングは多いんじゃないかしらねぇ?」


「それだと内容偏りません?」



「それでもいいんじゃないかしら?学部別の堅苦しい授業風景よりも、和気あいあいとみんなで楽しんでる方が読み手も引き込まれるでしょうし」



 忍さんの提案に俺が反論し、彼女、じゃねぇや彼を援護する眠子さん。


「じゃあ、まとめるで。写真撮影係は希導。撮る授業は主に体育、音楽、美術や。撮った写真を元に生徒会全員で作成する」


「なんで俺が写真撮ることになってるんですか?」

「反対意見はあるか?」

「スルー!?」

「特になしです」

「私もぉ」

「異議あり!異議ありです!」


 俺はもう一度机を叩き、意義を申し立てる。


「なんや希導、何が問題なんや?」

「いや!俺の負担大きすぎでしょ!」

「問題ない、次期生徒会副会長のうちがサポートしっかりしてやるさかい」

「勝手に俺を生徒会会長にしないでくれます!?」

「ええやろ、男手必要のために生徒会に入ったんやろ?」

「この議題に男女の区別はない!」

「まぁまぁ、そのくらいにしt」


 コンコン。


 俺への人使いの荒さに反対意見を主張していると、生徒会室のノックが響いた。


「どうぞー」

 生徒会長が返事をする。


「あの、希導先輩いますか?」

 中学部の女子生徒が申し訳なさげ入室してきた。

「どうしたの?」

 俺は子どもを叱っている親が、電話かかってきた時の声の切り返しのような優しい声音で返事をする。


「あたしのクラスメイトの男子が言い合いしてて仲裁に入って欲しいのですが……」

 控えめに用件を伝えてもらった。


「わかった。今行くよ」

 俺は女子生徒と共に生徒会室を退室する。

「この問題は次、集まった時に改めて話し合いでいいですね?」

 去り際に彼女達(一人は男)に次まで持ち込みの旨を伝えた。



 女子生徒に連れられてやってきたのは、体育館倉庫の裏だった。

「お前が道具片付けるのサボって猫と遊んでたんだろ!?」

「違うよ、それは……!」

「違くないだろ!」

「だって……!」

「だってもクソもあるか!」

 男子生徒2人が言い争い、というか片方が一方的に相手を責めていた。


「さっきからこの繰り返しなんです」

 女子生徒が状況説明をしてくれる。

 責められている男子は白い猫を抱えていた。

 その猫は前足を怪我していた。

 遊んでいたらつく傷ではないだろう。


「ニャー」と猫が怯えた鳴き声をする。


「お前ら」


 俺は低く唸るように言い争う男子生徒2人を黙らせた。

「「希導さん……!」」

「まず何があったんだ?」

 状況把握のため事情聴取。

「担任の先生に、体育館倉庫の掃除を任されたんです。オレとコイツで。そしたらコイツがサボって猫と遊んでたから」

「違うよ!」

「違くないだろ!?」


「ニャウゥー!」


 猫が威嚇する。


 状況は分かった。

「まずはお前だ」

 責めている方の丸坊主の男子にロックオンする。

「お前が真面目に仕事しようとしてるのに、この子が猫と遊んでたから怒ったんだろ?」

「違うよ……!」

「だから……!」


「まぁ待て落ち着け」

 俺は2人を宥める。


「で、次は君だ。どうして猫を抱えている?」

「遊んでたからだろ!」

「お前は黙ってろ……!」

 低く怒声をあげる。


「倉庫裏に回ったらこの子のか細い鳴き声が聞こえて草をかき分けたら怪我してたんです」

「それで?」

「なので、保健室に連れていこうと……」


 話は分かった。

「丸坊主、お前は真面目に仕事こなしてるのに、この子がサボってるから怒ったんだな?」


「そうです」


 そうして責められている方、中学生にしては小柄な男子に問う。

「君は怪我した猫を助けるために、保健室に連れていこうとしたと」


「はい」


 すぅーはぁー。

 体内の空気の入れ替えをする。

「まずは丸坊主、お前の生真面目な所は評価する。ただな、相手の言葉に耳を傾けることを覚えろ。うさぎがライオンに唸られたら怖くて怯むように、上からまくし立てて相手の主張を聞かないのは良くない。まずは冷静になって相手の言葉に耳を傾けろ」


「そして、ちっこいの。君の優しさも評価する。ただな、まずこいつに猫が怪我してることを伝えたか?」


「いいえ……」


「まずは報告・連絡・相談「報連相」を忘れるな。不測な事態はこれからも沢山起きるだろう。

 猫を抱えて黙って保健室に行こうとすると、一緒に働いているこいつがサボっていると捉えてしまう。多分俺だってそうだ。

 君に足りないのは、伝えることだ。

 そしてこれからもこの丸坊主のように上からまくし立てて一方的に、悪者にする奴もこれからまた出会うだろう。

 その時に

「まずは僕の言うことを聞いてください!」

 と相手の言葉を遮って無理やりでも、その時の自分が置かれた情報伝達が必要になって来る時もある。

 必要なのは、強い相手に屈しない勇気だ」


「「はい!」」


 2人は声を合わせて大きく返事した。

「よし、それじゃあ猫は俺が預かる」

「でも……」

「ニャウゥー……」


 猫も不安そうだ。


「保健室に限らず、普通の医療機関はな、人間しか診てやれない。こいつは俺が責任をもって動物病院に連れていく。だから君たちは担任の先生の指示通りの働きをするんだ」


「はい……」


 納得いってない様子。


「安心しろ。治療が終わったら、一番に君のところに連れて行ってやる」


 俺はちっこい中学生の頭を撫でる。


「わかりました。よろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げてくれた。


「じゃあ、俺が今教えたことを忘れずにな」


「「はい!」」


「君もありがとうね」

 猫を預かり、俺を呼んでくれた女子生徒にお礼を言う。

「ニャー!」

 猫は安心できた相手から引き離されて不安そうだ。

「怪我が治ったらあの子のところに送ってやる」

 猫を宥める。


 女子生徒は。

「いえいえ、こちらこそ、無事に丸く治まって良かったです」


 ぺこり


 この子も頭を下げてくれた。


「じゃあ俺は行くな」

 猫を右腕で抱えて左手を上げてその場を去る。


「さて、まずは生徒会に連絡と……しまった、恵さんとしか連絡先交換してない」


 俺は独り言をブツブツ言いながら校内へ。

 えーと、紫音にも遅れた謝罪しないとな。そんなことを考えていると。


「その必要あらへんで」


 背後から聞き慣れたエセ関西弁。

 振り向くとビデオカメラを回していた忍さんと、眠子さん。そして恵さんが立っていた。


「撮ってたんですか!?」


「次期生徒会長様の活動記録や。教師ではなく一生徒に助けを求める、頼りがいのある生徒会メンバーの記事はええ物になる思うてな」


「それならそうと先に言ってください!」


「先に言ったら断るやろ?」

「そりゃ当然ですよ」


「だから黙っとたんや」


「はぁ……」


 ガリガリと頭を搔く。

「とりあえず、俺はこいつを病院に連れていくので、今日は解散でいいですね?」


「学校新聞案が通ったってことでええやろ」

「そうだねぇ」

「問題ないわ」

 恵さんの言葉に忍さんと眠子も同調する。


 俺は生徒会室に残していたカバンを回収して動物病院へ。

 向かう途中で紫音のお母さんに事情を説明して、帰りが遅れることを伝えた。

 そうして治療してもらった猫は約束通りちっこい男子生徒の元へと届けてやった。


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