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ようこそ鬼道島へ  作者: ダノン
紫音ルート
23/29

紫音ルート6話

「不公平だと思う」

 季節は梅雨をすぎ、荒れた天気で桜が散ったかと思うと、またすぐ開花していた。

 7月某日、夏休みを控えて、テスト期間を終えて学生諸君が大好きな長期休み直前。


 夏とは思えない穏やかな気候に包まれた、ここ鬼道島。

 紫音と登校中に彼女がぷくーと車椅子越しからこちらを睨み、頬を膨らませていた。


「なんだよ、急に」

「なんだよ、じゃない!」


 一体何が気に入らないのか、皆目見当もつかない。


「とりあえず、一旦深呼吸な。はい」

「すぅーはぁー」

 紫音が体内の空気を入れ替える。


「で、何故にご立腹なんですか?」

「だって、最近めぐっちとばかりつるんでるから」

「あー、そういえば」

 恵さんとは4月からの付き合いだが、学級委員長補佐、生徒会と一緒に過ごす期間が増えているのはたしか。

 ただ、描写されていないが、紫音との時間も大切にしていないという訳ではない。


「そこに関しては申し訳ない」

「うむ、分かればよろしい」


 一言謝ったら、許してくれた。のかな?

 恋人がいるのに、他の異性の子にばかりかまけていたら機嫌は悪くなるのは確か。

 まぁ、独占欲が強いというか、単に軽い嫉妬だろう。

 ここのところ恵さんは目立ってた訳だし。


「はぁー、良かったー」

「恵さんになびくと思ったか?」

「違うよ。僕が心配してたのはね」

「おう、なんだ?」


「僕のルートなのにRe〇riteのち〇やルートみたいに、咲〇が目立ってて咲〇ルートって言われてるみたいに、紫音ルートじゃなくて恵ルートって言われないか心配だっただけ」


「そういう話はなるべく避けような?」

「え?なんで?」

「怒られるからな」

「誰から?」

「誰かから」

「守って変なこと気にするよね?」

「むしろ気にせず、メタい発言してる紫音が俺は怖えよ」

「なんの事?」


 キョトン。

 ほんとに分かってないのか、とぼけているのかわからん。


「まぁ、夏休みだし、俺の実家に行く心の準備は出来てるか?」

「いっ!?そそそそりゃあ、ままままぁね……!」

 露骨に顔を逸らす。


「そんなに緊張することないだろ?恋人の実家に行くくらい」

「そりゃあ、まぁ。作者の恋人いない歴=年齢でそんな経験がないから疎いだけで、その辺の描写が上手くできてないだけで?でも僕としては、多少緊張する訳で」

「そこまで肩肘張らなくてもいいだろ。おばさんも来るんだし」


 最初は俺と紫音だけで、行くつもりだったが、俺の家が山の中で、介護するのが不慣れな俺たちより、紫音のお母さんが来てくれた方が、助かると言う、母さんの提案だ。

 介護支援の他の酒を一緒に呑みたいのも目的だろうがな。


「さて、それじゃあ、今日の音楽の授業にまたな」

「また後でー」

 学校につき、紫音を1学年の面々に任せて自分の教室へ。


 夏休みが楽しみで、授業中もずっと紫音をどこへ連れ回そうか考えていた。


 そんなこんなで、夏休み前夜の夜。

 ピンポーン。

 家のチャイムが鳴った。

 俺と紫音とおばさんの3人で、そうめんをズルズルとすすっていると誰か来たようだ。


「はーい」

「あ、おばさん。俺が出ますよ」

「そう?それじゃあよろしくね」

 立ち上がる朝露家の家主を静止し、玄関へ向かう。


「はーい、どちら様で……って恵さんとルミちゃん?」

「おばんやで希導」

「こんばんは。どうしたんですか?」

 恵さんとルミちゃんの間にクーラーボックスがひとつ。

「明日から夏休みやろ?景気よく魚釣りに行ったら、思いのほか大漁でな。親しい相手におすそ分けに来たんや」

「はぁ、そりゃあどうも」

 恵さんがクーラーボックスを開ける。

 その中にはキスに、メバル。クロダイとイカイカイカ、イカである。


「どれでも好きなの持って行きぃや」

「おばさーん」

「はーい」


 俺の一存で決めるより、家主に選んでもらった方がいいと判断した。

 とりあえず、キスとメバルを数匹。そして大漁のイカを幾つか受けとった。


「希導は夏休み帰省やろ?ゆっくりして来ぃな」

「ありがとうございます」

 ペコリと頭を下げた。

「ほな、休み明けな」


 そう言い去り、薄暗い闇の中へ恵さんとルミちゃんは消えていった。


「次は生徒会長やな」

「回るところ多いねぇ」

「しゃあない。うちらもそこそこ顔が広いからな」


 そう会話が遠ざかるのを俺とおばさんで見送った。


 そして数日後。

 俺たちは島の外へ出ていた。

「あっつーい……」

「そうねぇ……」

 島の外の気候に慣れていない2人は、日陰で溶けないように避難していた。


 俺はそんな2人へかき氷を買ってきた。

「どうぞ」

「おお、なんだこれ!?」

「もしかして、かき氷?」

 いちごのシロップに細細かく刻まれた氷の山。

 2人は感激してがっつく。


「うおおお!頭がー!」

「噂に聞いてたけど、なかなか痛いわねぇ」


 キーンとする頭を抑えながら氷の山を崩して口へ運んでいた。


「バカ息子ー。紫音ちゃーん。そして久しぶりね敦子(あつこ)

「そうねぇ、こうして顔を合わせるのも久しぶりねぇ」

「2人は知り合い?」

「そりゃあ、そうよ。小さな島だもの。自然と顔なじみになるわ」

「へぇー」


「とりあえず、車乗って。積もる話は移動しながらにしましょ」

「「「はーい」」」


 沿岸から内陸まで、車で数時間。

 そしてそこから俺の実家のある山道を車で登る。


「あ!見て見て守!牛がワイン飲んでる!」

「牛とワインの名産地だからな」


 仁王立ちで、ワインを飲む牛の看板を見るのも久しぶりである。


「ソフトクリーム美味しー!」


 道の駅で小休止して、アイスを堪能する紫音。


「この辺活気あるね」

「この辺だけな。ここを超えると、あとは何もない。山だけだ」


 車でどんどん家へ近づいていく。


「着いたー!」


 車内で母とおばさんが昔話に花咲かせて、俺と紫音はそれに耳を傾けること数時間。

 長い長い山道の中に俺の実家はあった。

 登る途中にも家屋はいくつかあるが、村というか集落だ。

 紫音を車椅子に乗せて、いざうちへ。


「母さん、スロープなんていつ用意したんだよ?」

「最近よ。紫音ちゃんのために当たり前じゃない」


 まぁ、うちの玄関は段差が高いから、紫音を入れるのには助かる。

 玄関で紫音を抱き、居間へ。ソファへ腰を落ち着かせて俺は廊下へ。


「守どこ行くの?」

「すぐ戻る」

「僕も連れて行って」

「……面白くないぞ?」

「いいの。なんとなく付いて行きたい」


 紫音をおぶり廊下の奥の部屋へ。

 その部屋には、来客用の布団座布団。

 そして仏壇が鎮座していた。



「ただいま、父さん」

 仏壇には腕っ節の強そうな男性。俺の父の写真が飾られていた。

 その横に、線香。

 火をつけて香炉へ。

 チーン。

 今は亡き父へ、一時帰省の挨拶を済ませた。

 気がつくと横にいた紫音も俺に真似て黙祷してくれていた。






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