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ようこそ鬼道島へ  作者: ダノン
紫音ルート
21/29

紫音ルート4話

「もしもし?母さん?」

『あんたから連絡なんて珍しいわねー。明日は槍でも降るのかしら』

「ダイン○レイヴで狙撃したろか?」

『冗談よ。で、用件は何?』

「今年の夏休み、紫音と1週間くらい実家に行ってもいい?」

『構わないわよー。ってなんで紫音ちゃん?』

「だって俺たち付き合ってるし」

『はぁ!?聞いてないわよ!?』

「言ってなかったか?」

『フリ○ドみたいな返答しない。全く聞いてないわよ』

「まぁ、色々ドタバタしてたし」

『それは紫音ちゃんとお母さんには話してるの?』

「いや、これから」

『一応私は全然いいわよ。時間はまだあるけど、早めに話通しておきなさい』

「はーい」

『それじゃあ、身体に気をつけなさいよ。おやすみ』

「ほい」

 ブツ、ツーツーツー。



「というわけで、紫音よ。夏休み俺の実家に行かないか?」

 ゴールデンウィークが終わり、6月に入る直前の日曜日の朝。俺はご飯の上にかき混ぜたを納豆を乗せつつ、うちに来ることを提案する。

「んー、僕は構わないよ。かーちゃんは?」

「私も反対する理由はないわ。楽しんでらっしゃい」

 みんなでもぐもぐとそれぞれ卵焼きやら、きんぴらごぼうやらを粗食する。

 出汁が効いててこの卵焼きは非常に美味い。

「ほんじゃ、決定……って実家!?」

「うん実家」

「じじじじじじ実家!?」

 ものすごく動揺している。

「守の実家かぁ……。今のうちにお義母さんに挨拶するのはいいけど、緊張するなぁ」

「嫌なら無理にとは言わん」

「嫌だとは言ってない!ただ心の準備が……」

「夏休みまでまだ1ヶ月半くらいあるから、それまでには心の準備出来るだろ」

「そりゃあ……」

 すぅーはぁーと深呼吸をして桃色の前髪を指でいじる。

「ふふふ」

 見守っていた紫音のお母さんが微笑んだ。

「いいわねぇ、青春してて」

「…………………」

「…………………」

 俺達は揃って赤面した。



「車椅子のお姉ちゃん、それと希導さんおはようございます」

「あ、朝露先輩と希導先輩おはようございます」

 いつも通りの登校。とはいかず、少しづつ変化が訪れていた。

 小学部や中等部の後輩から俺は少しづつ慕われるようになっていた。

 美咲先生のスパルタのおかげか、後輩達に会うと声をかけられることが多くなっていた。

 あの後の次の授業で鬼ごっこから始まり、ドッチボールやスポンジ製の剣でチャンバラなど、様々な授業というか最早遊びになっていて、体育の授業が楽しみという声が多く上がっていた。



「チッ……」

 一方で全ての人から慕われている訳でもない。

 初日で100m走にて手を抜いた者や、道連れにされた生徒からは目の敵にされていた。

 美咲先生が「手を下したら内申点下げる」という言葉通り、紫音に下手に喧嘩が売れず、ストレスが溜まっているのだろう。

 まぁ、内申点を下げる対象が紫音で俺には特に影響がないため、すれ違いざまに舌打ちや「お前のせいだ」と悪口は言われる。

 正直ストレスにはなっているが、おそらくこちらが手を出すと、「希導守にやられました」と教師に告げ口でもされれば、俺の立場も危うくなる。

 一応頼みの綱である美咲先生には相談したものの

「これはお前の問題であってあたいが助けてやる訳には行かない。希導、これはお前にとっての試練だ。

 あたいが手を加えれば、問題はすぐ解決する。が、それだとお前の成長にはならない。

 冷たいようだが、お前が周囲の人に相談や、自力で乗り越えられる強さを身につければならん。その力をつけれれば、社会に出た時、きっと役に立つはずだ」

 との事。

 美咲先生は俺にはカリスマ性があると仰ってくれた。

 その力を高めるためといえば理解はできる。ただやはり、冷たくないかと、納得できない部分もある。

「守、あんまり気に病むなよ。敵は少ないし、守のことを支持してくれる人は沢山いる。なんなら僕が囮になってアイツらを嵌めることも出来るんだ」

「ん、そうだな。ありがとう紫音」

「どういたしまして。上に立つって大変なんだなって隣から見てて理解はできてるよ」

 そんな紫音と会話しつつ校内へ。

 ガラガラと車椅子を押し、彼女の教室に着く。

「2人ともおっはー。今日もよろしく」

「紫音さんおはようございます」

「しおりんおっはー」

 紫音のクラスメイト2人が暖かく彼女を迎える。

「希導、おはようさん。軽く疲れてないか?」

 俺は自分の2学年の教室へ。

「まぁ、精神的に軽く」

「あんまり無理せず、誰でもええ、相談せぇや」

「ありがとうございます。なら恵さん少しいいですか?」

「ええで」

 俺は今の状況を恵さんに伝えた。



「アイツらも根に持つなぁ。自分たちが悪いっちゅうのに」

 嘆息する恵さん。

「そうですね」

「うちに考えがある。今日の体育、サッカーやろ?」

「はい」

 俺は前回の授業で次はサッカーと伝えていた。

「うちと一緒に審判せぇへんか?」

「それだと紫音のリハビリが……」

 俺は恵さんの提案より、紫音が心配になってくる。

「たまにはええやろ。今日はルミに相手してもらおうや」

「でも……」

「ええから、うちに任せとき」

 ニヤリと悪い笑みを浮かべる恵さん。

「はぁ……。わかりました。恵さんを信じます」

 俺はため息混じりに応じた。



 本日の体育の授業。

「今日は宣言通り校庭でサッカーだ。みんなで体操してからストレッチして、安全に取り組んでくれ」

 俺は校庭に集まった後輩達に命ずる。

「今日は、俺と恵さんが審判。紫音のリハビリは、ルミちゃん。君に任せた」

「合点承知之助!」

 力こぶを見せて恵さんの指示通りに配役を決める。

 しかし、この学校の全校生徒は25人。

 俺、恵さん、紫音、ルミちゃん。

 4人抜けて21人のはずだが、おかしい。

 1人足りない。

「あと一人はどうした?」

 俺の問にみんな「?」マークを浮かべる。

「いないやつのことは気にせんでええ。これで10対10。ピッタリやろ」

 いないのは小学部の生徒だ。

「気にしない訳には行かないでしょう!俺、探してきます!すみません、恵さん!審判は任せます!」

「しょうがないやっちゃなぁ。引き受けたる」

 あっさり承諾。



「ルミちゃん!紫音のこと任せた!」

「了解だぜ」

 彼女の言葉を背に俺は校内に駆け出した。

 まずは保健室。

「今は誰も来てないわよ?」

 ハズレ。

 職員室。

「今は体育の授業だろう?あたいらも探しておく。お前は持ち場に下がれ」

 美咲先生に追い出された。

 放っておく訳にも行かず、小学部の校舎へ。

「おーい。(みなと)くーん!」

 行方不明の男子生徒の名を叫び、返答を期待しながら彼を探す。

 シーン。

 返事はない。

「どこいったんだ……?」

 ポリポリと頭を搔く。

 恵さんを信じていない訳では無いが、行方不明の生徒、そして紫音のことが心配で、焦る気持ちが高まり額から汗が流れる。

『キャー!』

『紫音さん大丈夫!?』

 校庭で叫び声。

 紫音という名を聞いて、俺は校舎内から窓越しに、校庭でに張り付く。



 紫音が倒れていたのだ。

 倒れる紫音。

 手を掴み、支えようとしてくれてるルミちゃん。

『お前ら!いい加減にせぇ!』

 怒鳴る恵さん。その先には悪そびれもなく、ニヤニヤと口角を上げる例の中坊。

『すみません、ボールを蹴りあげる方向をミスってしまって』

 俺はすぐに校庭に戻る。

「紫音!大丈夫か!?」

 彼女に駆け寄る。

「ちょっと足挫いたけど、大丈夫だよ。痛たた」

 強がって笑って見せたが、足を痛めたらしく、足首が腫れていた。

「そうか。ということやが、撮影班どうや?」

 恵さんは血相を変えて怒鳴ったかと思うと、ニヤニヤする男子生徒達の自信を真っ向から引き裂くように「撮影班」とやらを呼ぶ。

 彼は、小学部と中等部の校舎の隙間からひょっこり現れた。



「港くん!」

 探していた生徒が、ビデオカメラを片手に持っていた。

「恵さん、バッチリ撮れました」

「サンキューな」

「どういうこと……ですか……?」

「まずは、港が撮ってくれた映像、見よか」

 彼女の言葉で、小さい画面を覗き込む。

「ここや。何が『蹴りあげる方向間違えた』やしっかり紫音さん狙ってるやろ」

 映像にはわざと足を紫音に向けてボールを蹴り飛ばしていた。

「盗撮は犯罪ですよ!」

「盗撮やない。校内記録や。生徒会で学校新聞作ろうって話題になっててな、その記録を港に頼んだんや。なぁ生徒会長?」

「はい、そうです」

 怒鳴る中坊こと萱場裕太(かやばゆうた)

 冷静に反論する恵さんに同調する眠子さん。

(学校新聞?聞いてませんが?)

 コソッと忍さんに、耳打ちする。

(今は話合わせておいてぇ)

 ゆったりとした忍さんの返答。



「だったら、隠れて撮影する意味あります!?」

 もう1人の佐藤将太(さとうしょうた)が声を張り上げる。

「隠れるも何も堂々とカメラ回してたら自然な授業風景撮れないやろ?」


「そこまでだ、お前ら」

 美咲先生がダルそうに、薄紅色の前髪をクルクルと指で丸めて登場。

「先生、こいつらが……」

「話は全て聞いた。萱場裕太、佐藤将太。朝露紫音に手を出したら、内申点下げると忠告したはずだ。

 リーダーの希導がその場に留まっていないタイミングを見計らっての行動。しっかり記録しておくからな。少なくとも、ここの高等部への進学は許さん」

「待ってください!」

「あんまりですよ!」

 2人が美咲先生に抗議するが、当の本人は「

 話は以上だ」

 と取り付く島も与えない。

「希導守!お前のせいで!」

 ドカッと、頬に強い衝撃。

 顔面を殴られたと理解したのは、反動で倒れてからだった。

「キャー!」

 女子生徒が悲鳴をあげる。

「お前のせいだ!」

「このやろう!」

 萱場裕太と佐藤将太は怒りの矛先を俺に向けてドカドカと蹴りかかる。

 俺は見を丸めて防御に徹していた。

「2人とも、希導に手ェ出すのはええが、まだ撮影続いてるで」

 ジーと。ビデオカメラが2人を収めていた。

「立派な暴力。精神科に連れていかれて、ここの高等部はおろか、本土の一般の高校にも通えないやろな」

「「そん……な……」」

「気に入らないことがあればすぐ暴力。これは今回だけやないやろ?中等部の後輩、小学部の生徒にも危害が出ていると生徒会でも問題視されてたんや。被害者、チャンスやで、手ェあげ。」

 ポツポツと5人ほど被害者が挙手した。

「これほどの人数に手荒い真似してくれたな。教師権限だ。お前たちは退学処分とする」


「「そん……な……」」

 膝から崩れ落ちた2人。

 キーンコーンカーンコーン。

 授業終了だ。

「萱場裕太、佐藤将太。お前らはこのまま職員室に連れていく。親御さんも呼ぶから覚悟しておけ」

 美咲先生は問題児2人を無理やり校内へ連れていった。


「希導、紫音さん。大丈夫か?」

「俺は」

「僕は足が腫れてきて痛いかな」

 口が鉄の味で染まり、殴られた頬、庇っていた背中が痛み、砂だらけになったが、何ともないと強がってみせる。

「とりあえずまずは2人とも保健室や。ルミ、紫音さんを頼む。うちは希導を抱えていく」

「了解だぜ!」

 そう言い、俺を担ぎ、校内へ向かっていった。

「恵さん」

「なんや?」

「最初からこれが狙いだったんですか?」

「ゆうたやろ?うちに任せときって」

 にっと、してやったり顔だ。

「ありがとうございます」

「気にせんでええ、うちもアイツら気に入らんかったんや」

 そうポツリと呟いて保健室まで連れていかれた。

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