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ようこそ鬼道島へ  作者: ダノン
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10/28

10話

「不公平だと思う」

 ぶぅと頬を膨らませて、俺の背中で黄土色のキャスケットを被って黒のTシャツに黒いジーンズのしおりんが呟く。

 舞い散る桜がおんぶされてるしおりんや俺に落ちる。

 それ以外は無惨にもアスファルトに降り注ぎ、人の足によってコンクリートに押し付けられていた。

「不公平?」



 はて?なんの事やら。

「だって、つぼっちはまもっちに裸見せてるんでしょ?」

 あらぬ誤解が生まれていた。

「しおりん」

「何?」

「あれは事故だ。そして故意ではない。そして裸ではなく下着姿だ」

「けっけっけ、似たようなものだって」

「否!断じて否!」

 笑い飛ばすしおりんに弁明をするも、聞いてくれない。



「でね、お願いがあるの」

 真剣なトーンだ。

「何?」

「今日の清拭、まもっちがやって」

「清拭ってまさか……!」

「想像通りだよ」

「いやいやいや!自分を大事にしな!男にやらせるものじゃない!」

 なんなら今不可抗力とはいえ、胸当たってるし、尻を両手で支えてるんだぞ。

 それだけでドキドキしてるのを隠しているのに必死なんだ。

 清拭とは、主に寝たきりなどでお風呂に入れない人の身体を拭くことだ。



「男にしたら女の裸見れるからいいじゃん」

「良くない!」

「なんでさ?」

 ポカーンとほおけた気がした。

 表情は背中越しだからわからん。

「いや、だって男からしたら背中やら脇やら胸やらを見せることになるから目のやり場に困る」

「まもっちは草食だねぇ。まぁそこがいいところでもあるんだけど」

 草食のあとがよく聞こえなかった。



「なんて?」

「意気地無しって言ったの」

「いや、だってさぁ……」

「実際男の看護師さんにやってもらうこともあるよ」

「抵抗されることは?」

「いや慣れてる感じだった」

「変なことされない?」

「1回胸揉まれたし、尻も触られた」

 そのセクハラ看護師、どう料理してやろうか……?

 ゴゴゴと怒りの炎に火がつく。



「けっけっけ。まぁ無理にとは言わないさ。僕としてはいつでも歓迎だからその気になったら声掛けて」

 けらけらと手をヒラヒラさせる。

「代わりと言ってはなんだけどさ」

 俺は彼女にお詫びを申し出る。



「うん?」

「特技披露してあげる」

「おっ、何?」

 期待に胸を膨らませるおんぶされてる少女。

「ギャグマ〇ガ日和の聖徳太子の声真似行きます」

 ぶっとしおりんが吹き出す。

「まもっちそんなことできるの?」

「では行きます」

 スウッと喉を整える。



「しおりん、清拭は無理だがゲームならいつでも付き合ってもいいぞ」

「ぶっ……。あはは!すっごい似てる。なんで聖徳太子にしたの?」

 しおりんがいつもの笑いではない。



「いや、コード〇アスのル〇ーシュの声真似の練習してたら、何故か聖徳太子になった」

「なにそれwじゃあル〇ーシュのセリフ言ってみてよ」

「撃っていいのは、撃たれる覚悟がある奴だけだ」

「ぶっ、あはは!聖徳太子がル〇ーシュのセリフ言ってるー!」

「満足?」

「まぁ、その特技に免じて許してあげよう」



 ふぅ良かった。

 心の中で額を拭う。

 今日は1月1日お昼すぎ。

 本日はみんなで初詣だ。

 1月なのに桜って不思議だなぁ。

 しおりんの送迎担当は俺だ。

 本人たっての希望だ。

 しおりんのお母さんは「守くんになら任せても大丈夫」とのことで同席していない。

 神社に近づくと、人の群れが多くなる。

 車椅子で来なかった理由はそれだ。

 人も多いし、段差もある。

 車椅子だと移動が困難だ。



「あ!きたきた!おーい!」

 桜花姉が俺たちの到着に気づき、ブンブンと手を振るう。

 栗色の髪が微かに揺れた。

「お待たせしましたー」

「全然大丈夫だよ、私かしおちゃんどちらが守くんに相応しいか談議してただけ」

「それ10:0で僕の惨敗だよね」

「ソンナコトナイヨー」

 ギギギと顔を背ける蕾さん。

「おかしいでしょ!美咲先生がいて僕に偏ることある!?」

「朝露よ」

「なんですか?」

「お前はこいつに裸見せられないだろう?」

「見せられるよ!やっぱり清拭まもっちやって!」

「美咲先生!せっかく解決した問題掘り起こさないでください!」

「なんの事だ?」

 道中のやり取り説明開始。



「ふむ、なるほど。蕾」

「何?お姉ちゃん」

 美咲先生が妹に振る。

「聖徳太子がル〇ーシュになったとは、どういう意味だ?」

「声真似が練習してたキャラと違うキャラになるって完全にギャグだと思う」

「よく分かんないけど、ファイト!まもりん!」

 桜花姉の謎の声援。

 絶対わかってないこの人。



「ところで教え子よ」

「なんですか?」

「そろそろ代わるぞ」

 そういい、膝をまげ、背中を俺に向ける。

「あ、しおりんはこのまま俺が背負ってもいいですよ」

 やけに優しい。怖い。

「だが重いだろう?」

「いや、それが案外そうではなくて、苦ではないですよ」

「問題はそこじゃない」

 ずいっと顔をちかづける。

「胸は当たるし、尻を支えてるだろう?立派なセクハラ行為だ」

「不可抗力ですよ!」

「あ、胸に至ってはわざと当ててるから」



 しおりーん!?



 どおりで、ふくよかなあれが背中に当たるなぁって思ってたら……。

「まぁでも、守くん1人に任せるのは大変じゃないかな?」

 蕾さんが気にかけてくれる。

「まぁ、両手が塞がるから不便があるのは確かですね」

 俺が答える。

「でしょ?というわけで、お姉ちゃんに代わってもらって」

「なーんか、乗せられてる気がするなぁ。だったら条件」

 しおりんが納得いかずに悪あがきする。

 美咲先生が反応を示す。

「なんだ?」

「帰ったら身体洗ってもらうのは、まもっちに任せる」

「掘り返さないで!」

 カアアと顔が赤くなる。



「しょうがない、教え子」

「まだ何も教わってません」

「今日の朝露の世話はお前に任せた」

「はい、僕の勝ちー。けっけっけ、お礼にまもっちには僕の体を洗う権利を与えよう」

「「「それは約束が違う!」」」

 蕾さんと美咲先生と俺が叫ぶ。

「けっけっけ、そっちだって2対1で僕をまもっちから引き剥がそうとしたでしょ?」

 勝ち誇るしおりん。

「紫音よ、残念だ。もし病気が良くなったらと、お前のために今まで家庭教師を買って出たがこうして降りることになるとはな」

「大丈夫です。先生からご教授させて頂いたことは頭に入ってるので」

「ぬ、たしかにお前は成績は良かった。しまったな、ライバルを育ててしまったか」

「けっけっけ」

 すげぇ、美咲先生にレスバで勝ってるよ。

 しおりん結構策士だな。



「いつまでもくだらないことしてないで、行くよー」

 桜花姉が呆れて急かす。

「まぁいい。最後に真面目に話すぞ。希導、辛くなったらいつでも交代するからな」

「あ、はい。ありがとうございます」

 美咲先生はあれでも半分は心配してくれてたんだな。

 ちょっと嬉しかった。


 桜が通路のにところ狭しと並んでいる。

 まるでまっすぐ賽銭箱まで誘導してくれているようだ。

 しかし、流石は1月1日。

 この島の人口がどのくらいか知らないが、初詣で人が溢れていた。

 稼ぎ時だからだろう、たこ焼き・お好み焼き・焼きそば様々な屋台が立ち並んでいた。

 色々混ざっているが、たこ焼きのソースの匂いが一番に鼻を刺激する。

 とりあえず、神様に1年の願いを聞いてもらったら、一番にたこ焼き食べよう。

 そう心に決めつつ、列に並ぶ。

 30分程だろうか、俺たちの番が回ってきた。



 チャリンチャリン。

 ゴトゴト。



 俺としおりんの分の五円玉を賽銭箱へ。

 チリンチリンチリーン。

 鐘を鳴らす。

 パンパン。

 瞳を閉じて神に祈る。

 みんなが幸せになれますように。

 これでいいだろう。

「まもっち何お願いしたー?」

 背中からしおりんの問い。

「んー?今年1年いい年でありますようにだよ」

「けっけっけ、ありきたりだねぇ」

「そう言うしおりんは?」

「そりゃあ、まもっちに選ばれますようにだよ」

 恥ずかし気もなく告げる。

 好意をストレートで伝えてくれるのは嬉しいけど、恥ずかしい。

「ダメだよ、しおちゃん。守くんは私たち共有だよ」

「けっけっけ、つぼっちはまもっちが僕に取られるのが怖いんだ?」

 しおりん煽るなよー。



「そんなことないよ!守くんがどちらを選ぶにせよ、気持ちは大事ってこと!」

 おー、挑発に乗ってはいるが、冷静に対処する蕾さん。

「どっちでもいいよー。屋台行こ。何食べようかなぁ」

 桜花姉は呆れている。

「けっけっけ、まもっち。君が何を食べたいか当てて見せよう」

「わかるかー?」

「たこ焼きだね」

 なんでわかった!?

 しおりんからは見えないだろうが、驚きの表情で肩を揺らす。

「けっけっけ、たこ焼きの屋台を凝視してたからねぇ。僕の分も頼みたいからお金出すよ。でもまもっちが食べられないから誰かに交代してもらわなきゃ」

 すごいな、この子。



「桜花ちゃーん!」

 しおりんが桜花姉を呼ぶ。

「なにー?」

 呼ばれた本人は俺たちに駆け寄る。

「かくかくしかじかでさ」

「ん、了解。あたしが紫音ちゃんおぶるから、まもりんタコ焼き3人分ね」

 しおりんと桜花姉が財布からお金を出して俺に渡す。

「了解。行ってくるわ」

 敬礼する。

 桜花姉は「はいはい」と手を振り、しおりんは俺を真似る。

 テクテクとたこ焼きの屋台へ。

「おーい、そこの」

 背後から誰かが誰かを呼ぶ。

 一応振り返る。



「おー、そこのお前」

 前方指さす。

 俺?

 と自身の顔を指す。

「そうお前」

 俺を呼び止めたのは1人の男子だった。

 黄金色(こがねいろ)の髪に永〇豪作品の主人公のように髪を尖らせている。

 耳にはピアス。

 顔立ちは幼さが残るが、なんとなく悪い奴ではない印象だ。

「お前さ、希導守だろ?」

「そうだけど」

「俺は橘徹(たちばなとおる)よろしく」

 握手を求められた。

「こちらこそ」

 戸惑いながらも差し出された腕を握る。



「それで君は?」

「俺?冬休み終わったらクラスメイトになる男だよ」

「え?確定なの?」

「そりゃそうさ、この島の学校1つしかないから、小中高一貫だからな。小中高学年ごとに1組。お前を入れて5人なんだよ、俺たち」

「へぇ、なるほど。それで俺に声をかけた理由は?」

「警戒するな!」

 はっはっはと肩をばんばんと叩く。

「クラスメイトになるんだから、挨拶は基本だろ?そしてな」

 どうやら目的は1つではないらしい。



「俺、希導桜花さんのことが好きなんだよ」




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