4 Creditisne vos duo in divinatione?
「ほんと、申し訳ありませんでした」
藤堂のジャケットに付着した白い粉をようやく払い終わった。玄関口に立つ娘の知子は、とよが使っていた祓い棒を持ちながら申し訳なさそうに謝罪する。
とよの祓い棒は、埃叩きの要領で白い粉を落とすのに非常に役立った。
「興味深い予言も聞けましたし、お気になさらないでください。こちらこそありがとうございました」
「くっさいのは残ってるっすけどねー」
藤堂は謝る知子をなだめると、靴を履いて玄関から出る。
去り際に、気になっていることを質問することにした。
「少し立ち入ったことですが、質問よろしいですか」
「ええもちろん」
「とよさんのオカルト趣味って、いつ頃からあんな感じで?」
「いやあ……詳しいことはわかりませんが、私の生まれる前から占いやら気功術やらをやっていたらしくて。でもボケるまであんな感じじゃなかったんですけどね」
「なるほど。それで生計を立てているご様子はありましたか」
「うーん。昔ちょっと、何かのNPOのような場所で活動してたとか何とか言ってた気がします。確か、ソウなんとか協会だか何だか……ちょっと覚えてないですけど」
「……そうですか。最後に、お部屋に飾られてたタペストリーなんですけど」
藤堂の目つきが鋭くなる。
「あのデザイン、非常に良いですね。どちらで買われたんですか?」
「あれは確か、おばあちゃんの占星術の師匠さんからもらったって言ってましたよ。その方はもうお亡くなりになっていると思いますけど」
藤堂はこくりと頷いて、家を出る。
「ありがとうございました」
後に続く大谷は、腕を伸ばして大きなあくびをした。
「変な婆さんの戯言じゃないすか? 藤堂さんは何が気になったんすか?」
「……俺はやっぱり、オカルトは嫌いだ」
藤堂は低く吐き出すと、家の前に停めていた車に乗る。
「なあ大谷。ちょいと新田川高校のことを調べてみないか?」
「ええっ!? まだやるんすか?」
大谷はつまらなさそうに体を伸ばす。
「いくら暇だっていっても、あんな婆さんの訳わかんない予言を当てにして捜査するなんて」
大谷の言う通りだった。オカルト趣味のよくわからない戯言だと思うのが当たり前の感覚である。
しかし藤堂は、とよから言われた言葉の中で引っ掛かることがあった。
――――――ソナタはこれまで、巨大な闇に立ち向かおうと努力してきたな。じゃがそれは叶わなかった。多くを失い、ソナタはそれを大きく悔いておる。違うか?
その言葉は藤堂にとって、一言一句間違いないものであった。
「ちょっと気になったんだよ。予言の内容が」
「あんなデタラメ信じるんすか?」
藤堂は車の窓を開け、ジャケットの懐に入っていた煙草をくわえる。
「昔の苦い思い出の中に出てくる花が、焚きつけてきやがる」
「ふーん。失恋かなんかすっか?」
藤堂は微笑し、煙を小さく吐き出した。
「なあ、大谷」
「なんすかさっきから改まっちゃって」
「お前は占いとか信じるタイプか?」
大谷は少し考えてから、ニカッと笑う。
「実はオレ、信じるタイプなんすよね。意外でしょ」
「なら、決まりだな」
「えっ。でもあの婆さんの言ってることは……」
「ほら、署に戻って高校のことを調べるぞ」
藤堂はアクセルを踏み込み、新田川署へ戻っていく。




