2 サボる二人
二人は新田川署から車で十分ほどのところにある、駅前交番に来ていた。
偶然にも、担当した巡査の相方―――上司の細井巡査部長が出勤していた。
「お疲れ様です。ちょっといいですか」
「あれ、藤堂さんじゃないですか。またサボりですか? いい加減クビになりますよ」
「あはは。ご忠告痛み入ります」
ちょうど暑い昼過ぎだったこともあり、新田川駅前の人通りはまばらだった。
藤堂と大谷は交番の中に入れてもらい、つかの間のクールダウンを行う。
「仕事してたらね、ちょっと気になったもんですから」
藤堂はそう言って、報告書を作成者である細井巡査部長に見せる。
「二か月前くらいですけど、覚えてます?」
細井巡査部長はメガネを外し、目を細めて報告書を睨む。
「ああこれね! もちろん覚えてますよ。なにせ、変なおばあちゃんだったもんだから」
「具体的にお聞きしても?」
「うん。騒ぐわけでもなく、すごい真剣でね。新田川高校の生徒が危ないーなんて言うもんだから、部下と首を傾げちゃって」
「悪魔とか何とか? それに降霊術?」
「ほんと、びっくりですよ」
細井巡査部長は苦笑いすると、冷蔵庫から麦茶を出してきて、二人に振舞った。
「でも、気になったんじゃありません? だってこんなこと、日報にするまでもないじゃないですか」
「ええそうです。飯田さんね、信用しない僕らに向かって、予言だーなんて言い出してね。それで聞いてたらびっくり……当たったんですよこれが全部」
「当たった?」
「はい。私は家に帰ってからの出来事を詳細に言われました。リビングでの出来事、晩御飯、その日妻から言われる言葉まで……全部、当たってたんです」
「うええ、気持ち悪」
大谷の言葉に、細井巡査部長の表情が少し重くなる。
「だから詳しく書いたんですか?」
「まあ、そうです……お恥ずかしながら。娘が新田川高校に通ってるんで、尚更気になっちゃって。ああでもすいません。聞きに来られるってことは、迷惑でしたかね。もし課長とかに何か言われたら、訂正しますよ」
藤堂は麦茶を飲み干すと、報告書を返してもらった。
「いえ。その必要はないと思います。私の方からも課長には言っておきますので」
「はあ……」
「ありがとうございました」
大谷も、「ごちそうさまっした!」と元気よく言って、二人で交番を出る。
「俄然、気になってきた」
「え? 降霊術っすか?」
「まあそれもそうだが、予言だよ。俺はオカルトがか、な、り、嫌いだ。だから是非、体験してみたいと思ってな」
「えー嫌いならいいじゃないっすか。オレはもういいっすよ。暑いし帰りましょうよー」
嫌がる大谷を無視し、藤堂は相談者の元へ向かうことにした。




