1 学校生活に思いを馳せなければならない。
二章です!
昂大君、高校へ通うのですが、何やら悩みがおありな様子……。
――――――キーン、コーン、カーン、コーン。
授業の終わりを告げるチャイムが、教室内の静寂を破る。
どよめきが一斉に教室を満たし、教師の話が遮られた。
「はい、今日はここまでなー。さっき言ったけど、明日は小テストだ。きっちりと対策しておくように」
私立新田川高校一年五組の英語教師である堀田は、肩を回しながら教室を後にする。
時刻は正午。午前の授業が終わり、一年五組の生徒たちは各々昼食に向かっていく。弁当を食べる者と学食へ行く者は概ね半数ほどに分かれ、教室に少し余裕が生まれる。
入学から一か月が経過し、生徒たちは学校での過ごし方に慣れてきていた。教室に残るメンツはいつも通りで、その中に沖田昂大はいた。
眠そうに目をこすりながら、机に広がった英語の参考書と教材であるタブレット端末を机に押し込むと、窓の向こうを見る。小高い丘の上に立つ新田川高校からは、新田川市内が一望できる。
「なあなあこの間バズってたピクの投稿見た?」
「あれやろ? オカルト投稿的なやつ」
昂大の近くで喋る女子グループは、いつものように弁当を食べながら雑談をしている。
毎日、世間話などのくだらない話題を昼休みが終わるまでずっとしているのだが、これをラジオ代わりに聞くことも昂大のルーティンとなっていた。
「七不思議とかいつの時代だよまじで」
「でも一期生の頃からあるらしいよ。まあ五年しか経ってないけど」
「学校できる時になんかあったんじゃね? お墓の上に建てたとか?」
「いや、まじありえんやろ」
今日の話題は、意味のわからない七不思議の話だった。SNSに疎い昂大にとって、流行りの話は苦手なジャンルだ。
というのも、入学して早々既に人間関係が出来上がっていた。入学前から様々なSNSを通して繋がっていた同級生たちは、入学と同時にまるで中学の時から友人であったかのように振る舞っていた。
そんな状況に、昂大は完全に飲まれてしまった。
思い返せば、これまで碌に学校に通ったことはなかった。
小学生時代は、訓練と勉強漬けの毎日を吉凶で過ごし、中学へ上がるころにはそれに加えて任務に就くようになったので、学校へ行く暇などほとんどなかった。
「……」
仕事を忘れ、初めてきちんと過ごすであろう学園生活に、気づかぬうちに大きな期待を寄せていた――――――。
昂大は現実逃避するように、意識を外へ向ける。同級生の野球部員たちがグラウンドを整備したり、練習の準備をしたりしている。一年生は当番制で整備をする決まりがあり、当番の時は昼休みになった瞬間、グラウンドに出なければならない。
今日が当番だったらよかったのに、などと思い、持ってきていた爆弾サイズのおにぎりにかぶりつく。
昨晩、乱雑に握ったおにぎりの数は、合計十個。黙々と完食した昂大は、机の上に突っ伏した。
――――――誰とも話さない時間、記録更新。
今朝からクラスメイトと一言も口を利いていない。
大抵は授業か連絡などで、誰かと言葉を交わす義務が発生するが、今日は一度もなかった。
別に拒絶しているわけではない。話しかけられれば応じるが、自分から話しに行くことを放棄しているため、存在が限りなく空気に溶け込んでしまっている。
「……はあ」
小さく漏らした今日初めての言葉に、気づく者は誰もいなかった。
悩みが暗いですね……。
今の自分が見たら、しばいたろかと思うやつですが、モデルとなったのはくろひこうき自身の体験でございやす。(恥をさらけ出していくスタイル)




