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ENIGMA6   作者: The kid 王
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〈12〉別れと出会いはニコイチ


 朝…起きたら俺の隣のベットに菜月はいなかった。

 菜月にしては珍しくもう起きたのかと思っていたが、そうではなかった。


 「ナツキは昨日の夜にはベティー家を出て行ったよ」


 レイにそう言われた時は言葉の意味を理解出来なかった。


 「なんで?」


 俺はそう言うしかなかった。


 「さぁ?……だが彼女なりに考えついた結果なのだろう」


 「何で止めなかったんですか?」


 「何でって…昨日も言ったが君達はあくまでもお手伝いさんだ、正式な従者じゃない。僕は彼女の意思を尊重しただけだ」


 「…………」


 考えてみればわかっていた事だった。菜月はこの家にそれほど入れ込んでいる様子も無かったし外の世界を視たがっていた。


 「なぁセイヨウ、ナツキはいなくなった訳だが、君は残った。つまり、正式に従者となるという風に受け取っていいのかな?」


 「…………俺は」


 ただ、俺は俺達は兄妹だ。この異世界で唯一の血の繋がりがある大事な妹。

 だったら……


 「レイ様、俺は妹を追います」


 俺がなぁなぁで結論を出すのが遅かった故に離れてしまったが今ならまだ遅くない。


 「…………そう…か、それは残念だ」


 「今までお世話なりました。この恩はいつか必ず返します」


 「だったら従者になってくれ……アハハ冗談だよ。じゃあねセイヨウ」


 「はい」


 そうして俺はレイから最低限の資金と食料、それとベティー家の家紋が刻まれた剣を貰った。


 「いいんですか?こんな高そうな剣まで貰っちゃって」


 「あぁ、構わない。お金に困ったら売ってくれてもいいよ」


 「ふっ……売れませんよ」


 「……君の旅路に幸福を祈るよ」


 俺はベティー家の敷地を越える、その先は未知の世界。一歩先に出た菜月とまた会う為、俺は旅に出た。


――

 

 菜月を探す旅に出て約半年、俺は大都市『ノーウン』にいた。

 レイから貰った食料はだいぶ前に終わってしまったので俺はそこら中にある屋台を眺め、比較的安い店を見つけ声をかけた。


 「その干し肉…銀貨1枚分に分けてくれ」


 「おう……」


 店主はそう言い吊るされた干し肉の塊をナイフで削る。


 「銀貨1枚でこんだけ?」


 俺の手元に返ってきたのはうっすい肉片だった。


 「あぁ!?文句あんのか!」

 

 「いっ!いえいえ……………ッはぁ…」


 あぁ…ベティー家にいた頃の食事が惜しい。正式な従者になっていればこんな思いしなくてよかったのだろう。

 だがまぁ…この生き方を選んだのは俺自身、今更ベティー家に戻ってもどの面下げてきたんだってなるしな。


 「にしても……」


 大都市だからだろうか、やたらと人が多い。これじゃ歩くのも一苦労だ。


 「なぁオヤジさん、今日なんかの祭りなのか?」


 俺は買ったばかりの干し肉を食いながら店主に聞いてみた。


 「あぁ?知らねぇのか兄ちゃん。今日は勇者がこの街に来てんだよ、一目見ようって連中が多くてな」


 「勇者?」


 なにそれド●クエっぽい。


 「おう、勇者ゼルバトスって聞いた事あんだろ?」


 いやーないですねー……めんどくせぇし知ったかぶるか。


 「あぁはいはいゼルバトスねー」


 「俺もよー魔物に襲われた時、ゼルバトスに助けられた事あるんだよ」


 へぇー。


 「へぇー」


 勇者……か…。

 冒険者でも何でもないただの旅人の俺には縁のない話だな。

 

 「兄ちゃんも剣持ってるって事は冒険者か?」


 店主は俺の腰にあるレイから貰った剣に視線を向ける。


 「いや、ただの護身用だよ」


 「……ふーん、そうか。良い体してるのに勿体ねぇなー」


 「…………冒険者か」


 確かにこの先何かやっていくにはどうしてもお金がいる……どうだろう、この際思い切って冒険者にでもなろうか?


 「オヤジさん、冒険者用のギルドってどこにある?」


 「この先真っ直ぐいけばあるよ」


 なる…と決めた訳ではないが、ギルドでも覗いてみるか。


 という訳でギルドに来てみたはいいものの…いざってなると緊張してなんか入りづらい。


 「冒険者……魔物を倒してお金を稼ぐ仕事」


 俺がそうなるイメージが湧かない。


 と、俺がギルドの入り口で立ち止まっていると後ろから肩を叩かれた。

 振り向くとそこには1人の少女がいた。


 「……な、なにかな?」


 「邪魔だからどいて」


 「えっ?」


 「ギルドに入りたいのに立ち塞がる邪魔な存在があなたなの」


 「あっ悪い、邪魔だったよな」


 「うん、そう言ってる」


 俺は少女の言う通り身を避けた。だが少女はギルドに入ろうとしない。


 「………?」


 「……ねぇ邪魔な存在さん、この扉重いから開けて」


 「邪魔な存在さんって……」


 「早く」


 「はいはい…どうぞ」


 確かにギルドの扉は重かった。そして開かれるギルドの入り口、中からは冒険者達の熱気が溢れていた。


 「うおっ」


 俺はその熱気を浴び鳥羽がたった。一目でわかる強者達のオーラ、体躯、顔つき、それらには素人だからこそ感じ取れる凄みがあった。

 そして、この少女もまたそれら一員なのだと理解した時は先程とは別の感情が込み上げる。


 「あなたは入らないの?」


 少女はギルドの中から俺に問う。


 「………」


 ギルドの中に入るという事は生きる為に魔物と命を削り合う覚悟を待ち合わせているという事なのだと俺は認識させられた、果たして俺にはあるのだろうか、そんな崇高な覚悟が……。

 

 いやないな。


 俺は魔物と戦いたくなんてないし、第一死にたくない。

 わかった…俺に冒険者は無理だ。引き換えそう、一度でも冒険者になってみようなんて考えた俺が馬鹿だった。 

 

 「俺は入いら……」


 「おい邪魔だ、入るならとっとと入れ!」

 

 入り口で迷っていた俺は後ろから来た別の冒険者にどつかれ、不可抗力とはいえギルドに入ってしまった。


 「あなたはどこまでいっても邪魔な存在さんなんだね」


 「はぁ……ねぇ冒険者って大変?」


 「そうでもない」


 「俺でも出来る?」


 「それは知らない」


 「あっそう……」


――

 

 「では説明は以上です。最後に貴方のお名前をここに記載してください」


 俺は冒険者になった。

 受付のお姐さんから紙を渡されたが俺は字が書けない。


 「あの…俺字書けないんですけどどうすれば?」


 「でしたら私が代わりにお書きしましょうか?」


 「はい、お願いします」


 「お名前は?」


 「聖陽…日向聖陽です」


 「セイヨウヒナタセイヨウ…ですか?」


 「あー違います違います。ヒナタセイヨウです」


 「かしこまりました、では受理まで少々お時間いただきますのでお掛けになってお待ち下さい」


 俺はお姐さんの言う通り近くの席に座る。

 

 「邪魔な存在は冒険者へと進化した」


 俺の向かいの席に先程の少女が座る。


 「うるさい……」


 「あなたは邪魔な存在、果たしてそんな人を受け入れてくれるパーティーはあるのか!?」


 「なんで実況口調なんだよ。てかお前こそパーティーに入れんのかよ?」


 こんな年端もいかない少女を入れてくれるパーティーなんてないだろ。


 「……いやもう入ってる」


 「え?」


 「ボクは冒険者の中でも貴重な支援者(バッファー)。楽聖のヤトウ・ゼルバトスとはボクの事だよ」


 「………へ?」


 学生?確かに中学生に見えなくもないがその二つ名をつけた奴はセンスがいいな。


 「おい邪魔存在、まさか知らないのかボクのことを」


 「うん」


 「ガーン!」


 擬音口で言う奴初めて見た。てかゼルバトスって…さっき店のオヤジが言ってた…。


 「……てことはお前が勇者ァ!?」


 この中学生が!?


 「勇者ゼルバトスはボクのお兄ちゃんだよ。パーティーはボクとお兄ちゃん、2人だけだけど最強だよ」


 「あー良かったー」


 勇者というカッコいいイメージが崩れてしまうところだった。


 「邪魔存(じゃまそん)は人を邪魔するだけでなくイラつかせるのも得意なのか」


 「名称を略すな、いや名称でもねぇよ」


 「だってボクは邪存(じゃそん)の名前を知らない」


 「……日向聖陽です」


 「(じゃ)はヒナタセイヨウに進化した」


 「(じゃ)って…それだとただの(よこしま)な奴じゃないか」


 「間違っていないと思う」


 「思うな」


 「それよりヒナタ、その剣…」


 露骨に話題を逸らされた。


 「剣がどうした?」


 さっきの店のオヤジといい、やけに注目浴びるなコレ。


 「凄い良い剣だね、お兄ちゃんの剣と同等…いやそれ以上かも」


 「マジ?勇者の剣よりも?」


 「うん。売れば家が建つよ」


 「ヨイショー!」


 レイ様ー!!俺は貴方を神として崇めます!!


 「あー…剣が可哀想」


 「何でだよ!」


 「無能に良剣とはまさにだね」


 「猫に小判みたいに言うなよ…」


 「ヒナタは剣得意?」


 「得意だぜ」


 木剣とはいえレイとそれなりにやってたからな。

 レイとの戦績は56勝無敗だ。


 「………ねぇヒナタ、良かったらボクのパーティーの荷物持ちになってよ」


 「流れ的に剣士とかじゃないかよ!」


 「は?何で?肉弾戦をしないボクでもヒナタは凄く弱いってわかるよ?死にたいの?」


 「えっ……そんなマジな顔しないでよ」


 「おいヤトウ!お前遅いぞ!集合時間はとっくに過ぎてるぞ!」


 するとヤトウの後ろから20半ばくらいの男が現れた。


 「あっお兄ちゃん」


 ヤトウのセリフからして…こいつが勇者ゼルバトスか。いかにも勇者って感じの野郎だな。


 「ヤトウ!昨日も言ったがギルドに来た理由は俺達の次の依頼に着いて来てくれる荷物持ちを見つける為だ」


 「話が早くて助かるよお兄ちゃん、それならボクが見つけた」


 そしてヤトウは俺を指差す。


 「はじめまして、ヒナタセイヨウ…です」


 勇者ゼルバトスと目が合う、眼光が鋭い、怖い。


 「………そうか!よろしくな!ヒナタ!」


 爽やかな笑顔…第一印象と反して良い人そうで安心した。

 

 「はい、よろしくお願いします」


 俺の名前は日向聖陽、苗字がヒナタで名前がセイヨウだ。前世で交通事故により若くして死亡、そして運良く異世界転移し獣人のレイ・ベティーに拾われた。

 でも俺は今なんやかんやあり、妹の日向菜月を探す為に旅に立ち冒険者になった。

 所属するパーティーはまさかの勇者のパーティー。役割はただの荷物持ちだがそれで良い。

 俺は菜月を見つけ、また2人で幸せの日々を過ごせる為に勇気ゼルバトスとその妹ヤトウと共に行く。


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