〈8〉雷ライター
リダ国の辺境にあるダンジョンの最深部の広い一室。そこはクレンが仕掛けたボンブ草によって爆発、破壊され瓦礫にまみれ土埃が舞い、その一室を埋め尽くしていた。
「雷撃」
そんな土埃が舞う空間に雷鳴と共に一筋の歪な光線が走り、傷だらけの女児の横を通過した。
「…あっぶないわねぇ……アンタ、本当に雷操るんだ。いいじゃない」
「埃で姿がよく見えなくて外しちゃった、でも大丈夫、次はちゃんと当てあげるよ」
逃げ場の無い閉鎖空間に、クレンと雷人テテの話し声が反響する。
「へぇ………」
「君は俺の仲間を殺したんだ。手加減されると思うなよ」
「アッハッハッ!………はぁー…いいから早く来なさいよガキ」
クレンは笑った後何故かため息を吐き捨てる。
「死ね!雷撃!!」
雷人テテは武器を構えクレンの頭部にその先端を向ける。そして放出される雷撃。
クレンに向かい走るその雷撃は、土埃を煌めかせ一直線にクレンに当たった。
雷人テテの放つ雷撃の速度は場の状況に左右されることなく常に光速の5分の1、数字にして約秒速6万㌔。いくらクレンが人間を超越したヴァンパイアだからといってもそれは反応どころか認識すら出来ず結果、感電死するに値した。
「…………あっけな」
雷人テテが見下す視線の先には黒焦げになったクレンが倒れ死んでいる。
雷人テテは今まで勝負というものをした事が無い、厳密に言うと『雷撃』という最速にして最強の必殺技を有している為、決着が速すぎるが故に『した』という感覚が無いのだ。だからこそ雷人テテは不意打ちとはいえ楽聖のヤトウを殺したこの女児に期待をしていたのだ。
だが、この女児は期待を裏切らない女である。
「だーれがあっけないですって?」
クレンは何事も無かったかの様に無傷で立ち上がる。
「……………………は?」
雷人テテの思考が止まる。
「なんて顔しんのよアンタ、まるで死んだ人間が生き返ったみたいに驚いて」
「………お前がそうだからだ」
「アハッ!あははははは!」
「………回復魔法か?」
「私がそんな最高級魔法を使えると思う?私はヴァンパイア。不老不死のただの人間よ」
「雷撃」
再び雷人テテの雷撃がクレンに直撃する。そしてクレンは倒れ死ぬ。
「痛ったー!」
が、女児は再び起き上がる。
「雷撃」
クレンはまたも死ぬ。
「ねぇ何回やるのよ」
そして三度起き上がる。
「雷撃雷撃雷撃雷撃雷撃雷撃雷撃雷撃雷撃………」
雷人テテは何かに取り憑かれたかの様に無数の雷撃をクレン放つ……が。
「………もういいかしら?そろそろ終わらせたいんだけど」
女児は起き上がる。
「何だそれ、クソチートじゃんかよ」
雷人テテはそう呟き膝を着く。目の前の圧倒的無敵感に心が耐えなれなかったのだ。
「もういい!殺すなら早くして…………あー!もっと長生きしたかったー!!」
雷人テテはそう叫ぶと武器を手放す、そして全てが嫌になり大の字で倒れ、地面に寝転がる。
クレンはそんな無抵抗な雷人テテに近寄り、テテが手放した武器を拾い上げる。
雷人テテは悟る、自分は自身の武器で殺される運命なのだと。
だがこの女児はまたも期待を裏切る。
「ねぇアンタ、私の下に付く気ない?」
クレンはそう言い武器の取っ手を雷人テテへと向け差し出す。
「………………はぁ?」
雷人テテは考える。が、その答えは言うまでもなかった。
雷人テテは差し出された武器を再び手に取った。
「理由…聞いても?」
雷人テテは立ち上がるとクレンを見つめ真っ先に浮かんだ疑問を問う。
「最近私ボンブ草での自殺戦法にハマってるの、楽聖殺したあの植物の事ね。あれ着火のタイミング難しいのよ、でもアンタの雷撃ならどんなに遠い所からでも好きなタイミングで着火出来るでしょ。良い着火剤になると思ったのよ」
「ふーん………そう」
クレン対テテ・コルノック…テテがクレンの仲間になり決着。




