女公爵は拷問卿の独白を聞く
拷問卿にも事情はあったようです
私は、幼い頃から継母に虐待されて育ちました。私の母は私を産むとすぐに亡くなり、父の後妻となった継母は前妻の忘れ形見である私を敵視していたのです。それも、継母と父の間には子が出来なかったため年を経る毎に余計に酷くなりました。
毎日毎日、継母やその侍女達から受ける拷問にも等しい虐待。それは去年、父が亡くなり私が若くして伯爵家を継ぐまで続いたのです。私が伯爵家を継ぐと、継母は私を傀儡にしようと考えたようです。それに私が抵抗し…暴れて、誤って継母を殺害してしまいました。その時、私の中で眠っていた吸血鬼の血が騒いだのです。私はそのまま、継母の侍女達を剣で殺して回りました。その時の快楽たるや…筆舌に尽くしがたいものでした。また、私は他の使用人達も同じように殺しました。あの快楽が忘れられなかったのです。
そして、私は奉公に来る使用人を募集し、招き入れては殺しました。その度に私の身体には快楽が走り…ああ、私はもうただの人間であった頃には戻れないのだと…。けれどそれでも、私はもう血を求めることをやめられなくなっていたのです。
爪を剥がし、指を切り、腹を裂き、腸を取り出し、拷問具に掛け、首を切り、そうして身体中のありとあらゆる血を絞り出し…その血を浴びるその瞬間が、私にとって最上の幸せとなったのです。
「…なるほどね。可哀想だとは思うけれど、だからといって我らが愛するベアトリス皇女殿下を泣かせるような真似をして許されるとは思わないことね」
「元より許しなど求めていません。私は地獄に落ちるべき悪そのものですから…」
「…そこまでわかっていて、それでも止められなかったのね。憐れな…」
「…先祖返りである貴女には分かりますまい。血が沸騰するかとすら思う、あの血が騒ぐ感覚は」
「分かりたくもないわ。私の家族や親戚達は、先祖返りでなくとも道を踏み外さなかったもの」
「ご主人様…」
「そうですか」
「でも、どうして去年からやらかしておいて今まで問題にならなかったのかしら」
「それは私にはなんとも…さすがに一年帰ってこないとなってようやく周りが騒ぎ出したのでしょうね」
「そう…ご遺体は?」
「庭を掘って頂ければ出ますよ。ああ、けれど門から中に入ると凄い匂いですから、どうぞお気をつけて」
「…そう。わかったわ。リュカ、治安部隊に連絡」
「はい、ご主人様」
サミュエル伯爵はリュカの連絡を受けた治安部隊に連れられゲートを通過。牢に繋がれて洗いざらい自白した。治安部隊が調べると、庭からは恐ろしいほどの死体の山が出て、世間でかなり騒がれる事件となった。
「リュカ、帰りましょう。ベアトリス皇女殿下にお手紙を書かないと」
「はい、ご主人様」
その後ベアトリス皇女に解決した旨をしたためた手紙を送ったアンジェリクは、ベアトリス皇女からお礼の手紙を受け取ってほっと胸を撫で下ろしたのだった。
ベアトリス皇女はあまりの事件の凄惨さを知りしばらく涙が止まりませんでした




