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買ってくれるもんちゃうんか

 こんにちは、伊吹みおです。猫を助けて異世界トリップを果たしたヒロインです。自称ちゃうぞ、正真正銘ヒロイン様やぞ。そこんとこよろしくな。


 さてさてやって来ましたイベントデート。デートイベントではないよ。

 デートメインじゃなくて、あくまでもアイテム追加のストーリー進行イベだからね。

 今回のアイテムはちょっと特殊というか、ぶっちゃけ課金アイテムお試し版みたいな役割を持つ。何と選んだアイテムによって特定の攻略対象者の好感度が上昇するのだ。

 今回はお試し版なのでアイテムは四つ。初期の攻略対象者四人それぞれの専用アイテムになってるの。


「これはどうかな、きっとみおに似合うよ」

「俺はこれを着たお前が見たい」

「いや、こちらはどうだ? きっとみおによく似合うぞ」

「こちらはどうでしょう。みおさんは可愛らしい方ですから、何でもお似合いでしょうね」


 シュウくんたちの言葉に感動した。

 ちゃ、ちゃんと攻略対象者らしいセリフ言えるんだ~~!!


「早く選べ。後詰まってるんだよ」

「ヒロインのイベントの後に何予定詰めてんねん」


 アキトさんが腕時計を見ている。感動した後にこれって本当もうドライ過ぎない? 私ヒロインだよ? ヒロインだよね?


「気にすることはありませんよ、みおさん。アキトは照れているだけてすから」

「カナエさん……好きです」

「ありがとうございます。ごめんなさい」

「断るんかい」


 和やかに微笑んでいる彼はカナエさん。

 紳士で柔和で中性的な皆のお兄さん。ラベンダー色の長髪を肩甲骨あたりで一つ結びにしている。好きなものはどら焼き。苦手なものは歌うこと。種族は抜け首。年がら年中マフラーを巻いている。

 暑くないのかと思うけど、まあそういうキャラクターデザインだからしゃあないな。


 優しい彼は一番ゲームで見たキャラクターらしい性格だけど、こうやってヒロインからの告白を平然と断るところは他の対象者と同じだった。ヒロインから告白されたら普通照れるもんちゃうんかい。アキトさんこめかみ揉みほぐしてるぞ。


「カナエ、勝手なことを言うな。あとヒロイン。選べ」

「私の扱いが雑。じゃあ……とりあえず全部ね」

「とりあえずの意味なくない? まあ、そうすると思ったけど」


 シュウくんがさっさと衣装をカウンターに持っていった。

 今回のアイテムは別に一つしか選べない訳ではない。好感度の総合計が決まっていて、アイテムごとに振り分けることが可能なのだ。


 ゲーム仕様の場合、全120ポイントある好感度を、例えばシュウくん専用アイテムしか買わない場合なら120ポイントをシュウくんの好感度上昇に使用できるのだ。

 シュウくんとアキトさんの専用アイテムを買った場合ならそれぞれ60ポイントの上昇。三人なら40ポイント。今回は四人全員分を買ったのでそれぞれ30ポイントの上昇である。


 30ポイント分の好感度上昇がどう行動に影響してくるのか、今から楽しみだよね。何が出るかな。鬼が出るか蛇が出るか。鬼はすでにユウマさんがいたわ。


「……みお、この後のことなんだが、その」

 アキトさんの声に振り向く。お、これがイベントってやつか?

「……バイト入れてやってるから、働いてこい」


 ふわい? はたらく?

 え、え、と戸惑っていると、アキトさんに手を取られた。甲に口付けを落とされびびる。展開早くない? いや、そもそもバイトって。


「無料でくれてやると誰が言った。知り合いの店に頼んで1週間接客担当にねじ込んでもらっている。行ってこい」


 お前、アキトお前。買ってくれるもんちゃうんかい!!

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