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煌めいて
趙氏の手には包丁が握られている。彼女は駆け出し、慶華に刃を向けた。
「邪魔よ!」
純嬪は公主を抱きしめた。その刹那、純嬪の背中が鮮血に染まった。直ぐに趙氏は義禁府に捕えられれた。慶華と慎嬪は慌てて純嬪のもとへ駆け寄る。泣き叫ぶ公主を慎嬪は抱きしめた。
「純嬪!純嬪!」
「中殿媽媽?公主は無事ですか?」
「大丈夫よ!ああ、御医を呼んで!」
「娘が無事なら安心だわ…ありがとう…中殿媽…媽」
純嬪は目を閉じた。大きな悲しみが慶華を襲った。趙氏の襲撃の知らせを受けて主上が急いでやってきたが、純嬪の息は止まっていた。冷たくなっていく純嬪を主上は抱きしめた。慟哭が止まらなかった。妻として少しも愛せなかった後悔が胸を抉る。少しでも愛していればこんな思いなどしなかったのに、そう思っても遅かった。
その償いとして純嬪は王后に追号された。趙氏は斬首された。
公主は慶華の養女となり、三代の王を見守るほど長生きをした。
主上は幸せだったが純嬪を愛せなかった後悔に支配されたまま亡くなった。慶華は思うのだった。後悔のない人生などない。人生は星のように輝くばかりではない、と。




