原案5 ゲーム&異世界 シンクロ③
べリス(敵プレイヤー)視点
「よし! いよいよだぜ」
VRマシンを装着し、興奮冷めやらぬ様子の少年。
彼こそが戦闘狂として悪名高い『ロクモン・べリス』のプレイヤーであった。
無双系ゲームの大ファンである彼のキャラは、当然のように真紅の甲冑の武者だった。
名前も、もちろん六文銭からとられている。
ゲームには様々なプレイスタイルのプレイヤーがいる。
ある者は平凡なセカンドライフを満喫し、ある者は文化の伝道師を目指した。
ある者は将来の予行練習として仕事を行い、ある者はリアルでは実行できないコトを実行した。
やり過ぎて粛清された者もいるし、順調に満喫している者もいる。
そして彼、戦場で戦う事だけが目的だった。
彼は一騎当千の爽快感に魅了された人間だったのだ。
大人気のワイバーンハンティングゲームは好みではない。
何故なら基本的に敵のスペックの方が高いから。
作戦や罠など面倒くさいことは嫌いだった。
好むのは正面突破、ただそれだけ。
通常のVRゲームは規制などの関係で物足りない。
その点このゲームは最高だった。
現実と勘違いするほどのリアリティ。
リアルの精神状態に影響が無いのが不思議なほどだった。
ロクモンは真紅の騎馬武者として誕生し、戦乱のサタン領を駆け抜けた。
立ち塞がる者は全て薙ぎ倒した。
戦い勝つたびに配下は増え、一大勢力となるのに時間はかからなかった。
好戦的な獣魔族を中心とした配下を引き連れ、連戦連勝を重ねた。
そんな彼に転機が訪れる。
ロクモンは祝福を得て固有スキルを手にしたのだ。
祝福名はソロモンの悪魔として有名な真紅の騎士『べリス』であった。
彼は遂に大悪魔の仲間入りを果たしたのだ。
しかし、そこで予想外の事が起こった。
彼に従う者達は彼に『王』であることを望みだしたのだ。
もちろん、魔神の代行者である魔王にとって代わるなどという意味ではない。
一国一城の主、領主という意味である。
彼自身は傭兵として戦場をハシゴ出来ればそれでよかったが、部下たちはそうではかったのだ。
それに物資を略奪するのは簡単だが、悪評が広がるというデメリットもある。
初めは悪評など気にしていなかったが、彼らが現れたというだけで民が逃げるようになると不便になった。
それらも加味した上で、本拠地となる領土があった方が良いと部下たちは説得してきた。
そして納得した彼はちょうど近くにいた領主を倒し、領地を奪い去った。
領地経営に興味の無いロクモンは、内政を部下に丸投げしていた。
だが、その部下たちはとんでもない悪政を敷くことになる。
それは頭の出来の問題ではなく性根の問題だった。
他者から奪う事しかしてこなかった者達が、いきなり心変わりするはずもない。
彼らは領地から搾取し、私腹を肥やし続けた。
当然のように反乱が続発したが、ロクモンは嬉々としてそれを鎮圧した。
彼は戦えるのなら戦争だろうが反乱だろうが、相手が敵兵だろうが領民だろうがどうでもよかったのだ。
さらには領地が衰退すると、隣接する他領に難癖をつけて攻め込む。
部下たちは領民や他領にとっては最悪の害悪だった。
しかし、ロクモンにとっては戦場と敵を用意してくれる最高の部下達だった。
部下たちにとってもロクモンは最高の主君だった。
何しろ何をやっても許されるのだ。
敵は全て倒して自分達を守ってくれるのだ。
彼がいる限り自分達の栄華は約束されるのだ。
それは歪な共生関係だった。
ロクモン・べリスの快進撃は続き、その名はサタン領を超えて他の魔王領にも轟いた。
紅い鎧と苛烈な戦いぶりから付いた二つ名は『鮮血公べリス』。
領土は凄まじい広さとなり、彼は魔界でも有数の大領主となっていた。
しかし、その中身ははっきり言ってスカスカだった。
ただ広いだけでボロボロの領地は、まさしくバブルであった。
周囲から奪い続けなければ維持できず、際限なく膨らむ泡。
飲み込めないモノにぶつかった時、それは弾けて壊れる。
だが、領民たちの大半がその日を待ち望んでいた。
そして、数年後べリス領はベルフェゴール魔公領と接することになった。
魔公領は平和で栄えていた。
治安は良く、技術レベルも高い。
当然のように人口の流出が起こり始めた。
べリス領での暮らしに絶望した民は魔公領を目指したのだ。
ベルフェゴール魔公領はべリス領に比べれば小さい。
故にそれ程大勢の民を受け入れることはできなかった。
しかし、ベルフェゴール公ゼノンは難民たちを受け入れると、後ろの魔王領へと入植させた。
そして一からの開拓であってもそこには希望があった。
べリス領の人口流出は、無視できないレベルにまで膨れ上がって行った。
ロクモンの部下たちは当然のようにゼノン公に難癖をつけた。
民を返せ、賠償金を払え、技術を差し出せ、恥知らずな要求を平然と行った。
今までならロクモン・べリスの威光をもってすれば、拒む者などいなかった。
しかし、今回の相手は他の魔王の勢力に属している上、魔公の名で呼ばれる大物だ。
彼らの予想を裏切り、毅然と拒否されてしまった。
それどころか自分達の暴虐を糾弾され、攻め込むなら容赦はしないと宣言された。
そこで、ようやく彼らは魔公ゼノンがロクモン・べリスに匹敵するビッグネームであることに気付く。
自分達が太刀打ちできる相手ではなかったのだ。
さらに問題は起こる。
強引に併合され、搾取され続けた有力者たちがゼノン公と通じようと動き始めたのだ。
もはや事態は彼らの手に負える範疇を超えていた。
彼らの最後の希望、それはもちろん最強の主君であった。
ロクモンは話を聞くと、即座にゼノン公との戦争を決断した。
こうして碌な話し合いすらせず、当代最強の一角同士が相対する事になったのだ。
「久々の強敵! 腕が鳴るぜ!」
ゼノンは彼にとって、未だかつてない強敵となるであろうプレイヤーだ。
対軍団用と思われる大規模な固有スキルに、最高位の天使を打ち破るほどの戦闘力。
間違いなく呂布や本田に相当するボスキャラといえるだろう。
ここ最近無かった勝敗の判らない勝負。
考えるだけでもゾクゾクする。
戦うのは好きだ。
だが、ここ最近の戦いはあまりにも手ごたえが無さ過ぎた。
自分が強くなっただけではなく、相手が弱すぎたのだ。
こんな弱い者いじめみたいな戦いばかりでは、はっきり言って飽きる。
だから久々に大物を釣り上げた部下達に感謝すらしていた。
誤解している者もいるが、彼は別に悪人ではない。
ただ、自分の打ち込んでいるモノ以外に興味が薄いだけだ。
ましてや、彼にとって異世界での出来事はゲームでしかないのだ。
そこで流れる血が、失われる命が、本物である事など知る由も無いのだ。
そして、ゲームが開始される。
キャラ設定
ロクモン・べリス
真紅の鎧を纏った魔人族の騎馬武者。戦うこと自体が目的のはた迷惑なプレイヤー。
アバターモデルはもちろん真田の弟の方。脳筋というワケではないが、好みの問題でやる事は脳筋と変わらない。
勇猛(狂暴)な部下たちを力でまとめる暴虐のカリスマ。
サタン領では力こそ正義なので、ひたすらに強い彼は正義という事になる。
固有スキル『一騎当千』は条件を満たすことで本人の戦闘能力を爆発的に上昇させる。
基本的にはこのスキルでパワーアップしたロクモンが、敵指揮官を片っ端から片付ける戦術を取る。
部下達
元々はロクモンが立ち上げた傭兵団のメンバー達で7割が獣魔族。粗暴ではあるが頭は悪くなかった。
しかし、ロクモンの圧倒的な力と、それを盾にすれば何でも許される状況に自制を失っていった。
弱者を踏み潰すことに慣れ過ぎた結果、質が低下し始めている。
一応次でラストの予定です。
内容は異世界視点。
今年最後になるのか、新年最初になるのか。




