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聖属性を授かったら前世の記憶が戻りました ~伯爵令嬢アルシアのほのぼの領地生活~  作者: クロミ


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 領地に来て数日が経った頃、アルベルトが言った。

「今日は森に行ってみるか。この季節は野生の果実が取れるんだ」

「行く!!」

カリナが飛び跳ねた。

「森は危なくないですか?」

エドワードが聞いた。

「領地の森は管理されているから大丈夫だよ。護衛もつけるから安心しなさい」

こうして一行は森に向かった。

森の入口から少し進むと、木々の間に赤い実が見えた。

カリナがその木に駆け寄った。

「あかいー!!」

「これは木苺だよ。食べられる」

アルベルトが一粒摘んでカリナに渡した。

カリナが躊躇なく口に入れる。

「あまーい!!」

「良かった」

続いてアルシアも一粒食べた。口の中に爽やかな甘みが広がる。隣の木の実も摘んで食べる。

「あれ?……酸っぱい」

「そうだね、同じ木苺でも味が違うものがある」

アルシアが食べた甘い木の実と酸っぱい木の実を見比べた。

「見た目は変わらないのに、なんでこんなに味が違うの?」

「さあ、昔からそういうものだと思っていたけど」

アルシアが木をじっと見た。

「なんでだろう?」

エドワードが小声で言った。

「……また始まった」


 果実をたくさん摘んで屋敷に戻る途中、アルシアがアルベルトに聞いた。

「お父様、果樹園の木も味が違うものってある?」

「あるよ。同じ林檎でも甘いものと酸っぱいものがある」

「なんで?」

「それは……昔からそうだとしか」

「なら甘いのだけ増やせないかな?」

アルベルトが足を止めた。

「増やす?」

「温室でも言ったじゃない。甘い実がなった木の種だけ育てたら、だんだん甘くなるんじゃないかって」

アルベルトが少し考えた。

「でも果物は種から実がなるまで何年もかかる。実験するには時間が……」

「でも果物より早く育つものだったら?」

「早く育つもの?」

アルシアが頷いた。

「トマトはどのくらいで実がなるの?」

「トマトなら……早ければひと夏で」

「じゃあトマトで試してみたい」

アルベルトがしばらく考えた。

「……面白い考えだな」

また同じ声だった。

ヴィクター先生が羊皮紙を取り出した。

エドワードがため息をついた。


 翌日、畑の端に小さな区画を作った。領地の農夫が首を傾げながら手伝ってくれる。

「何をなさるので?」

「トマトの実験です」

「実験……ですか」

「甘いトマトだけ選んで種を採って、それをまた育てるんです」

農夫がもっと首を傾げた。

エドワードが小声で言った。

「アリー、農夫さんが困惑してる」

「でも興味があるみたいよ?」

確かに農夫は困惑しながらも、目が少し輝いていた。

最初のトマトの種を蒔いた。

アルベルトが手をかざし、成長を促進させる。緑の光がトマトの苗を包むと、葉も茎もぐんぐんと育った。

「お父様の魔法ってすごいね」

「品種改良に使うとは思わなかったけどな」

アルベルトが苦笑いする。

1週間後、トマトが実った。全部の苗から良く熟れた実を収穫して、一つ一つ食べた。

甘いもの、青くさいもの、酸っぱいもの、その味は様々だ。

「甘いのだけ種を採って」

アルシアが甘いトマトの種を丁寧に採った。

「次はこれだけを育てる」

ニ回目、また同じように育てた。

そして全部の苗から収穫し、また全部食べた。

アルシアは前回の事を思い出して呟く。

「前より甘いのが増えた気がする」

農夫が目を丸くした。

「……本当ですか?」

「食べてみて」

農夫が一口食べた。

「……甘い」

「でしょ」

「でも気のせいでは?」

「三回目を育てたらきっとわかるわ」

三回目、またアルベルトの木魔法で加速させながらトマトの苗を育てた。

同じように全部収穫し、みんなで食べた。

「甘い」

農夫が呟いた。

「前より甘い」

アルシアが頷いた。

「でしょ」

農夫は一度畑を見た、それから空を仰ぎ、最後にアルシアを見た。

「……アルシア様」

「なぁに?」

「これは、すごいことでは?」

アルシアが首を傾げた。

「普通のことだと思うけど。だって子供は親に似るでしょ?トマトも甘いトマトからできた種のトマトは甘いのよ」

農夫が頭を抱え、ヴィクター先生が羊皮紙に書き続ける、それからいつものようにエドワードがため息をついた。

アルベルトが一つトマトを食べた。

「……確かに甘い」

口元が緩んでいた。


 その夜の夕食に、三回目に収穫したトマトが出た。

カリナが一口食べた。

「トマトあまーい!!」

「でしょ」

「おいしい!!」

レオナルドも食べた。

「……本当に甘いな」

セシリアが上品に一口食べてから言った。

「まあ、美味しい」

アルベルトがアルシアを見た。

「よくやった」

アルシアが笑った。

「まだ三回しかやってないから、もっと甘くできると思う」

エドワードがトマトを食べながら言った。

「どこまで甘くするつもりだ」

「もっと甘くなるまで」

「……際限がないな」

「だって気になるんだもの」

エドワードはため息をついた。

でも手元のトマトは、今まで食べていたトマトより明らかに甘かった。

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