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聖属性を授かったら前世の記憶が戻りました ~伯爵令嬢アルシアのほのぼの領地生活~  作者: クロミ


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 屋敷が近づくにつれ、道が緩やかな坂になった。馬車が丘を登っていく。

「もうすぐだよ」

とアルベルトが言った。

カリナが窓から身を乗り出した。

「おやしきー!!」

「リナ座って」

レオナルドが席に引き戻す。


 丘の上には屋敷が見えた。石造りの、大きな屋敷だった。王都の邸宅より横に広く、どっしりとしていた。壁に蔦が絡まる素敵な建物だった。庭に大きな木が何本も立つ。あれはなんの木だろう…そんなことを考えていると、馬車が正面の門をくぐった。

屋敷に着くとすでに使用人たちがずらーっと並んでいた。十数人が二列に整列して、頭を下げる。

「お帰りなさいませ、伯爵様」

先頭の年配の女性が言った。白髪をきっちりまとめた、背筋の伸びた女性だった。

「ただいま、マーガレット。みんな元気だったか」

「おかげさまで。レオナルド様もアルシア様もカリナ様も、皆様ご立派に成長されて」

マーガレットがアルシアを見た。

「ようこそいらっしゃいました、アルシア様」

「よろしくお願いします」

アルシアが頭を下げると、使用人たちがほっとしたような顔をした。

カリナが使用人の列を見て言った。

「こんにちはー!!」

使用人たちが一斉に破顔する。


 荷物を運び込む前に、アルベルトが屋敷を案内してくれた。広間、食堂、書斎、図書室。

図書室でアルシアの足が止まった。壁一面に本棚がある。

「全部読んでいいの?」

「もちろんだよ」

アルシアの目が輝いた。

今にも読み始めそうなアルシアの手を掴み、エドワードがため息をついた。

「アリー、今は続きがある」

「もうっ…わかってる」

それでも名残惜しそうに図書室を後にした。

裏手には広い庭が広がっている。王都の屋敷のように、管理された庭園ではないが居心地の良さそうな庭だった。その先に果樹園が見える。

「わあ」

アルシアが呟いた。

林檎、梨、桃、実がまだ青いものもあったが、どの木も葉が青々としている。

果樹園の隣に畑があった。麦、野菜、豆様々な植物が太陽の光をたっぷりと浴び、のびのびと葉を茂らす。さらにその先に、柵で囲まれた場所があった。

牛が三頭、馬が数頭、豚が数頭、のんびりと草を食んでいた。

カリナが柵に駆け寄った。

「うしさんー!!」

牛が迷惑そうに顔を上げる。レオナルドが慌ててカリナを追いかけた。

アルシアは果樹園を見ていた。

頭の中で植物図鑑の中の絵と、目の前の木を照らし合わせる。

「お父様、この木って温室の木より大きいね」

「外で育ってるからね」

「実の大きさは?」

「温室の方が少し大きいかな。魔法をかけてるから」

「じゃあ外の木にも魔法をかけたら?」

アルベルトが少し考えた。

「……試してみようか」

エドワードがその会話を聞いて、静かにため息をついた。


 夕方、屋敷に戻るとすでに食堂に料理が並んでいた。到着を祝う夕食なので、いつもより品数が多い。そのどれもが温かかった。

「お帰りなさいませ」

とマーガレットが言った。

「領地の食材を使いました、ぜひたくさん召し上がってください」

「美味しそう!」

カリナが椅子に飛び乗った。

家族が揃って席についた。

アルベルトが杯を持ち上げた。

「今日から領地での生活が始まる。みんなよろしく頼む」

「「「よろしくお願いします」」」

掛け声と共に杯が合わさった。

その日の夕食はとても賑やかだ。カリナが豚の肉を頬張りながら、興味見た豚の話をし、レオナルドが苦笑いしながら聞いていた。セシリアが美味しそうに料理を食べ、アルベルトがマーガレットに領地の近況を聞く、ヴィクター先生がなぜか羊皮紙を出しかけて、エドワードに止められた。

エドワードが止めたことを、誰も突っ込まなかった。


 夜、アルシアは自室の窓を開けた。

冷たい空気が髪を揺らし頬をくすぐる。

王都で見る夜空より星が多かった。王都では見えなかった星まで見えるらしい。そして空が広かった。遠くで、虫の声がして、風が吹くと、木の葉が揺れた。

静かだった。

王都の夜とは全然違う静けさ。

アルシアはしばらく大きな窓の外を見ていた。ここから、何かが始まる気がしていた。

(上下水道、煮沸、品種改良、手洗い)

頭の中にやりたいことが、どんどん浮かんでくる。なんだら胸が高鳴り、アルシアは少し笑った。

楽しくなってきた。

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