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聖属性を授かったら前世の記憶が戻りました ~伯爵令嬢アルシアのほのぼの領地生活~  作者: クロミ


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 ようやく陽の光が暖かくなってきた頃、この日伯爵邸の庭は、朝から賑やかだった。

使用人たちが花を飾り、テーブルを並べ、料理を運ぶ。青い空の下、ヴェルナ家の庭園がいつもより一層明るく見えた。

今日はアルシアの誕生日だった。

「おねいたま!!」

カリナが走ってきた。

「リナ、走らないの」

「だってだってー!!おねいたまのおたんじょうびー!!」

アルシアの手をぎゅっと握った。

「おめでとー!!」

「ありがとう、リナ」

カリナが後ろ手に隠していた紙を差し出した。

「あのね、かいたの!」

差し出された絵を、丁寧に受け取った。

丸と線と、何かよくわからない色がたくさんついていた。

「……なにを描いてくれたの?」

「おねいたま!」

「……そうなの」

「そうなの!!」

アルシアは笑った。

「ありがとう、大事にする」

カリナが満足そうに笑った。

カリナと入れ替わりに、レオナルドが近づいてきた。

「誕生日おめでとう、アルシア」

「ありがとうお兄様」

「これ」

小箱を差し出した。それを開けると、淡い色の髪飾りが入っていた。小さな花があしらわれた、繊細な細工のものだった。

「お兄様が選んだの?」

「……ああ」

耳が少し赤かった。

「似合うと思って」

アルシアはすぐに髪につけた。

「どう?」

レオナルドがアルシアを見た。

「……似合ってる」

ぶっきらぼうだったけれど、嬉しそうだった。

こんどはセシリアが、アルシアの前に立った。

「アルシア、こちらへ」

連れて行かれた先には、淡い青紫のドレスが用意されていた。

「今日のために仕立てたの」

「お母様……!」

「着てみましょう」


 着替えて戻ってくると、全員の視線が集まる。

「まあ」

とセシリアが微笑んだ。

「素敵よ、アリー」

カリナが飛び跳ねた。

「おねいたまきれいー!!」

レオナルドが目を逸らした。

エドワードは固まったまま動けない。その様子に、アルシアは気づかなかった。

アルベルトが分厚い本を持ってくる。

「これを」

受け取ると、表紙に細かな植物の絵が描かれていた。

「植物図鑑だよ。この大陸で見つかっている薬草や植物が全部載っている」

「お父様!!」

アルシアの目が嬉しそうに輝いた。

「温室の植物と照らし合わせてみるといい」

「絶対する!!」

アルベルトが目元を緩めた。

最後にエドワードが近づいてきた。

「……これ」

小さな包みを差し出した。

受け取って開けると、金色の栞が入っている。透かし彫りで、小さな花の模様が施されていた。光を受けてきらきらと輝いている。

「綺麗……!」

アルシアが目を丸くした。

「エドが選んでくれたの?」

「……ああ」

「どこで?」

「街で」

「一人で?」

「……レオナルド様に連れて行ってもらった」

レオナルドが遠くから小さく手を振った。アルシアは栞をじっくり眺める。

光の加減で少し模様が変わって見えた。

「すごく好きだわ」

エドワードが視線を逸らし、耳を赤く染める。

「……気に入ってもらえたなら」

アルシアはもう一度栞を見て、大切そうに胸元に抱えた。


 その後のガーデンパーティーは賑やかだった。料理を食べて、笑って、カリナが庭を走り回った。なぜかヴィクター先生がカリナを追いかけるはめになり、レオナルドは笑いを堪えていた。

セシリアが優雅にお茶を飲みながらその光景を眺め、エドワードがアルシアの隣に座っている。とても暖かな空間だった。

「アリー、楽しい?」

「うん、すごく。エドは?」

アルシアが笑った。

エドワードは少し目を細めた。

それだけで十分だった。


 日が傾き始めた頃、アルベルトが立ち上がった。

「少し、話がある」

全員がアルベルトを見た。

「アルシア」

「はい」

「春から、領地へ行こうと思っている」

静かな声だった。

アルシアが目を丸くした。

「領地!」

「ああ」

「みんなで?」

「もちろんみんなで行く」

アルシアが顔を輝かせた。

「行く!!絶対行く!!」

エドワードがため息をついた。

「……もう少し考えてから返事をしなくていいのか」

「なんで? 楽しそうじゃない」

「楽しそうって……」

そんな会話を尻目に、カリナだけが

「りょうち!!」

と叫びながら、まだ庭を走り回った。

春の空が、少しずつ近づく気配がした。

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