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聖属性を授かったら前世の記憶が戻りました ~伯爵令嬢アルシアのほのぼの領地生活~  作者: クロミ


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 その夜、エドワードは自室で天井を見つめていた。

今日の授業が頭から離れなかった。

ウォーターボールが四角じゃダメなのか。炎が白くなるのか。岩と金属の境界はどこか。

アルシアの問いは止まらず、先生は神に祈っていた。

エドワードはゆっくりと息を吐き出す。

(あの人は、きっとこれからもっとすごいことを言い出す)

温室での品種改良の話。保湿水の話。傷口を洗う話。魔力操作の特訓。全部、そう全部だ。普通じゃない。ずっとそう思っていた。でも今日、はっきりわかった。

(アルシア様は、きっと大変なことになる)

エドワードは決意した。


 翌朝、エドワードはアルベルト伯爵の書斎の扉を叩いた。

「伯爵、少しよろしいですか」

「どうぞ」

扉を開けると、アルベルトが書類から顔を上げた。エドワードを見て、少し目を細める。

「エドワードか。どうしたんだい、改まって」

エドワードは部屋に入り、きちんと立った。

「お願いがあります」

アルベルトが姿勢を正し、椅子に背を預けた。

「聞かせておくれ」

エドワードは真剣な顔をしていた。五歳とは思えない目だった。

「レオナルド様と共に剣術を学ばせてください」

アルベルトは少し考える。

「理由を聞いてもいいかな」

エドワードはその問いにどう答えるべきか…少し逡巡した。でも嘘は言わない。

「俺は火属性です」

「うん」

「魔法も鍛えます」

「うん」

「ですが、それだけでは足りません」

アルベルトが黙った。

エドワードは慎重に言葉を選んだ。

「アルシア様は…」

少し間があった。

「特別な方になると思います」

アルベルトの表情が、静かに変わった。

「だから俺が守ります」

決意を込めたエドワードの宣言に、室内が静かになる。その沈黙の中で、アルベルトはエドワードをしばらく見つめた。

 五歳だ、とわかっている。そのまだ五歳の子どもが、こんな顔をして、こんなことを考えている。娘を思ってくれる気持ちが嬉しかった。でもその反面、少し切なかった。この子はもう、自分の人生をアルシアの隣に置くと決めているのだ。

「そうか」

アルベルトは静かに立ち上がると、扉を開けて廊下に声をかけた。

「レオンを呼んできてくれないか」


 しばらくして、レオナルドが顔を出した。

「はい、父上。どうかされましたか」

アルベルトはエドワードを一度見てから、レオナルドに言った。

「明日からエドワードを頼む。一緒に剣術の訓練を受けさせてやってくれ」

レオナルドがエドワードを見た。エドワードが真剣な顔で頷いた。

レオナルドは一瞬だけ目を丸くしてから、笑った。

「承知しました」

部屋を出るとき、アルベルトがエドワードの肩に手を置いた。

一言だけ言った。

「よろしく頼む」

エドワードはしっかりと頷いた。


 翌朝から、エドワードの剣術訓練が始まった。レオナルドとの訓練は厳しかった。容赦がなかった。でも教師はとても丁寧だった。

エドワードは一度も音を上げなかった。

その頃アルシアは、ヴィクター先生の授業でまた新しい疑問を見つけていた。

二人の朝は、それぞれ別の場所で始まる。

数日後。

朝の訓練を終えたエドワードが水を飲んでいると、アルシアが駆けてきた。

「エド、今日剣術の練習やってたの?」

「そうだよ」

「見てたわ。かっこよかった」

エドワードが少し固まった。

「……見てたのか」

「うん。いつから始めたの?」

「少し前から」

「なんで?」

エドワードはアルシアを見た。

「なんとなく」

アルシアが首を傾げた。

「そう? でもかっこよかった」

エドワードは視線を逸らす、その耳が赤かった。

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