宇宙のたまご⑦
夜。
明は寝静まったインパルス艦内を歩く。ズックを背負い音を立てぬようにこっそり。
第二格納庫へ。
誰かいる!明は身構える。
ボッケンが「おでかけですか?」
「いや~・・ちょっとそこまで」
麗子が「じゃあご一緒させてください」
ヨキが「抜け駆けはなしだぜ」
「お前ら、・・いや残ってくれ。無茶すぎる旅だ。行くのは俺一人で十分だ。美理なら自分のために無茶しないでと言う」
三人は顔を見合わせるが、お互いにうなずく。
「なぐりこみは多い方がいいって」
「美理は親友なの」
「ESPバリアーならまだおいらの方が上だよ」
三人の決意の強さに頭が下がる。
「・・・ありがとう」
「あきらぁ!」
明は駆けてきた望を抱っこする。シャーロットと目が合う。
「ごめん。望がいるから、私は行けない。でも麗子ちゃんにワーププログラミングのノウハウ叩き込んでおいた」
「しかし・・」
「私も説得したけど、麗子ちゃん頑固だから・折れた。それにワーププログラマーは必要よ」
「・・・」
麗子は任せてと胸をはる。かわいい。
グレイが首を垂れる。
「偉くなっちまったから俺は行けない。航行長と戦闘長が両方いなくなったら困るだろ。だが後の事は任せてくれ」
明はうなずく。
「エヴァンスへ伝えてくれ。腕はいいんだから、あせらず落ち着いて操縦しろと」
「伝えとくよ」
四人は<フロンティア号>コクピットへ。
「遅かったな」
「マーチンお前・・」副操縦兼機関制御席に座っている。
「まだ整備も解析も途中だ。壊されたらかなわん。・・ニコライさんにあとを任されたが、あの人は中途半端が一番嫌いだった。あ、アレ付けといたからな」
指さす先、船首にアンテナみたいな突起物が装着されている。
「懐かしいだろ」
伸縮可能なロッドアンテナ型バリアー発生装置。ハレーGPやデコラスからの逃亡の際に何度も船を救った。確かに力強い味方だ。ありがたい。
もうひとり意外な人物もいた。最後部のソファにでーんと座っているのはジグだ。
「俺たちを支配したトスーゴ。その本星を見てみたい。連れて行ってくれ」
「重量オーバーだ。降りろ」
ヨキも「お前美理ちゃん知らないだろ」
「君たちが命を懸けてまで助けようとする人だ。さぞかし素晴らしい人物なのだろう。君たちに受けた恩に報いたい。連れて行ってくれ。必ず役に立つ」
「命の保証はできない。無駄死にする確率の方が高い」
「えーそうなの?」いまさらヨキくん。
「死はこわくない。生まれる前にもどるだけだ」ジグの星の考えか。
「好きにしろ」
一行は席に着く。よく見るとマーチンの席の近くには数え切れない程のお菓子がある。
「差し入れと言うか餞別と言うか」
クリスやエヴァンスらからのメッセージが書かれている。ハット&ラーの名前もある。
見つめる明に熱いものがこみ上げてくる。
シャーロットとグレイと望は管制室で見送る。リュウとロミもいる。
「ありがとうグレイ、つきあってくれて。行きたかったでしょ?」
「それもあるが、ちょっと気になる事があってね」
シャーロットはマイクで「明くん。・・啓作に会ったら・・・」
「わかっている。(・・さよならは言わない)・・行ってきます」
「必ずもどって来い。約束だぞ」リュウがスイッチを押す。
格納庫のハッチが開く。明は無言で親指を立てる。
「針路クリア」そう言うとボッケンは麗子を見る。
「ワーププログラミング出来ています。ワープインポイントは・・」
「補助第2第3エンジン始動。出力10・20・・」マーチンが計器を操作する。
明は前を見据える。
「<フロンティア号>発進!」
<フロンティア号>は静かに飛び立つ。
「!」明は艦長室の人影に気付く。
流が黙って敬礼で見送る。
「行ってまいります!」
<フロンティア号>はワープに入る。蒼い光跡を残して消える。




