宇宙のたまご⑥
トスーゴ星。今日は“転生の儀”の日。
上空にある“海”までは届かないが、<命の塔>の高さは8000mを超える(軌道エレベーターではない)。その周りはスタジアムになっており、数え切れない人々が集まっている。人々の手にはトスーゴのマークが入ったホログラフの旗が握られている。
美理とピンニョはマルゲリータと共にVIPルーム?にいた。オズマとリナからの招待だ。
「こんな近くからあの子の晴れ姿を見られるなんて。オズマ様ありがとうございます」
「いや、こちらこそ妹の世話をしてくれて感謝している」
「・・・(妹、そうか妹になるんだ)」美理はオズマを見る。「(この人は啓作でもケークでもなく転生した勇者オズマ)」
「慣れた?」リナが訊く。
「ぼちぼちでんな」ピンニョが返す。
「なにそれ面白い。教えて」
歓声が上がる。きれいに着飾ったリリーが壇上に登る。
祝福の声。
拍手するマルゲリータから美理は視線をリリーに戻す。
塔の中からマント姿の老人が姿を現す。大神官ムー。白い顎髭を生やし瘦せこけてミイラの様に見えるが、動作は敏捷だ。火の付いた長い棒を持っている。
ムーはリリーに近づく。ムーの持つ棒の火が激しく燃え上がる。
火が消えた時、リリーは気を失い倒れる。ムーが支える。
マルゲリータははっと息をのむ。
リリーが目を開ける。その顔はもう少女の顔ではなかった。
「ああっ」叫んだきりマルゲリータは黙る。・・・やがて嗚咽。
「マルゲリータさん?」
「エレーヌ様のお気持ちがやっと・わかりました。神王になったあの子は確かに幸せです。でももう・いない。あの人はリリーではない。もうあの子に会えない!」
美理がなだめようとした時、兵たちがVIPルームに入室する。
「失礼いたします」
兵たちは一直線に美理の元へ。「!」美理の両脇を取り捕らえる。
オズマは立ち上がり「何をする!?」
「大神官様の命令です。その娘を拘束いたします」
「何のために?」
「リナ王女殺害未遂の容疑とのことです」
「私?」リナは驚きを隠せない。
兵はオズマに透明な板を渡す。オズマはそれを読む。
「馬鹿な。大神官は何をお考えなのだ?」
アッシュが出入口をふさぐ。
「どけっ!雑隷の分際で!」
アッシュは引かない。兵たちを睨みつけて、ESP衝撃波!
兵たちがひるんだすきに「美理さま!」手を取る。
だが美理は動かない。アッシュはテレポートしようとするが、兵たちのESPバリアーに阻まれる。彼らの持つ電磁警棒がアッシュを打ち据える。
「ぐわっ」ぼこぼこにされる。
美理を連行しようとする兵たちをオズマが呼び止める。
「おい。挨拶ぐらいさせろよ」
振り向く美理にオズマは静かに語りかける。
「何があっても希望だけは捨てるな!いいな」
「・・・」
美理は連行される。リナが後を追う。
ピンニョはいつの間にか消えていた。羽根がふわりと床に落ちる。
美理は連行されながら声にならない声でつぶやく。
「兄さん・・」涙があふれてくる。
美理は眩い光の中へ・・
<スペースインパルス>がワープアウトする。
目の前に銀河系(天の川銀河)が視界いっぱいに広がる。ワープにワープを重ね、ようやくここまで到達した。
「銀河か」
「戻って来たんだなあ」どこかで聞いた台詞である。
「まってください。緊急通信が入っています」モカはスピーカーに流す。
『私・リナです。スペース・・パルス流・長。聞こえますか?』
「リナ王女?」
『美理さんが・逮捕されました』
「!!」 「え?」 「何?」
『このままでは・死刑・されてしまいます。裁判は・・れますが、結果はもう決まって・ます』
「!!」
明は無言で聞いている。内心穏やかでない。それは流も同じだ。
『ごめん・さい・・こんな結果・なって・・・・裁判はそちらの時間で・早け・ば74時間で・・まり、即日判決・・・ます。刑は翌日・は執行・・・す。お願いです、助けて・・・ザー』
通信は切れる。
一同声がない。
「艦長!トスーゴ本星へ向いましょう!我々だけでも!」そう発言したのはアベルだ。
「・・・」
アランが「56億7千万光年の彼方へ、どうやって行くつもりだ。銀河跳躍砲のワープシステムでも300万光年がやっとだ」
絶望的な距離という名の壁。
「唯一の可能性は・・」アランは明を見る。「バリアーを張って暗黒星に突入する事だ」
「!?」
「え?無茶ですよ、副長。間違いなく死にます」
そう言ったエヴァンスだが場の雰囲気に黙る。皆の藁にも縋りたい気持ちが伝わる。
アランは言葉を続ける。
「暗黒星はビッグバンの卵に繋がっている。トスーゴ星とは目と鼻の先だ。無人センサーはその場所までは到達できた。到達後通信は途絶えたがな。到達寸前にワープで逃れられれば何とかなるかもしれない。だがすべて空論上の話だ」
「・・・」
「しかもこれは片道切符だ。うまく行けたとして、56億7千万光年先から帰る術は・無い」
「・・・(美理のためなら死んでもいい)」
明は流を見る。
流は何も言わない。だがその目は何かを語っている。
<美理をたのむ>
艦長ではなく父親として、自分の代わりに美理を救ってくれと!そう嘆願している。
明は無言でうなずく。
命懸けの旅になる。それでも万に一つの可能性があるならそれに賭けたかった。




