宇宙のたまご④
美理は目を開ける。
ベッドに寝かされている。
「また倒れたんだっけ?」
風が頬に当たる。白いカーテンが風にそよぐ。その向こうには田園風景。
「え?(<アポロン>の中じゃない!ルリウス?いやそんなはずは・・)」
「お目覚めになられましたか?」
振り向くと女の人が立っていた。古代ギリシャかローマの人が着ているかのような服。その脇にミニサイズの同じ服を着た女の子。その肩にピンニョがいる。
「ミリ様、ここはトスーゴ星です。私はマルゲリータ、この子は娘のリリー。トスーゴの民徒です。オズマ様よりあなた様のお世話をするよう命じられております」
美理はぺこりとお辞儀。ピンニョが美理の肩にとまる。
民徒(非戦闘民)はトスーゴの世界では雑隷(他星民)に次ぐ下層の身分だ。
「オズマさんが『大神王はお忙しい。<ゼウス>の事もある。謁見はかなり先になるだろう。トスーゴの市民の生活を見ておけ』って」ピンニョがモノマネして補足。
「ホームステイ?」
「そうゆうこと。あ、もう一人いるよ」
窓の外で畑仕事を終えたアッシュが深々とお辞儀をする。護衛役をかって出たらしい。
こうして美理たちのトスーゴ星での生活が始まった。
人工的に改造され移動も可能なトスーゴ星であったが、自然は豊かで郊外には田畑が広がり、いざとなれば自給自足可能なようだ。太陽=ゼウス星が敵の手に落ちたが、環が人工太陽の役目を担っているため、凍りつくことはない。周囲のバリアーや水の層が有害な宇宙線などを防ぎ、スクリーンとなって目障りなゼウスの代わりに青空や夜空を映し出す(星の裏側でも同じ時刻に環の明りが点火消灯されるため時差がない)。地球やルリウス星とほぼ変わらぬ環境がそこにあった。しかし・・空が波打つ。空に“海“があるのは違和感あり。
<スペースインパルス>はワープアウトする。
銀河跳躍砲のワープシステムで350万光年、さらにワープブースターで80万光年。
眼前にソンブレロ型銀河が見える。
辺縁にある変光星(明るさを変える恒星)グーサショイが目的地だ。その周囲は強力なイオン流の嵐が吹き荒れている。さすがのインパルスもまともに進めない。
“那由他”は「時を待つべし」と分析した。時間が経てばこの嵐が収まるのであろうか。
三時間後。イオン流が弱くなってきた。
「微速前進」
「微速前進」流の命令を明が復唱する。
インパルスはゆっくりと動き出す。
「ミサイル接近!」
突然の攻撃。一発のミサイルが来る。
明は難なく避ける。
艦隊が接近して来る。それらは小惑星にしか見えない500m程の岩の塊が動いている。
メインパネルに岩が映る。よく見ると目や口がある。クィーンは立ち上がる。
「我々は反トスーゴ連合ATUだ。バール連盟と話し合いに来ました」
『我はバール連盟メルス将軍だ。トスーゴと手を組もうとして、大失態かましたATUか。お前達は我らと手を組みたいのか?戦いに来たのか?』
クィーンはにっこりと笑い、「もちろん話し合いに来ました」
『あの嵐の中を強行突破しなかったのは褒めておく。話し合いに応じよう』
バール旗艦で会議が始まる。
空気等の環境が違うためATU側は宇宙服を着用している。
(会議内容を淡々と描いても仕方ないから)
「レーダーに反応!トスーゴ艦隊接近中」
インパルスのメインブリッジに緊張がみなぎる。
「迎撃準備。総員戦闘配置。会議の邪魔はさせない!」
流は会議出席中のためアラン副長が指揮を執る。
インパルスはバール連盟艦隊400隻と共に敵艦隊へ向かう。
アランは前方を指さす。トスーゴ第四艦隊約500隻がイオン流の中を逆らいながら接近中。
「バール旗艦の防衛を第一目標とし、極力後方支援に徹する」バール艦隊の実力を知ると共に花を持たせるつもりだ。
明は「エヴァンス、操縦を任せる」
「りょ了解しました」
副操縦席のエヴァンスは操縦桿を握る。少し手が震えている。
「旗艦の横に張り付いて防御、接近してくる敵を迎撃するんだ」
「敵艦隊発砲」
数え切れないビームが来る。バール艦はまだ反撃しない。
敵のビームが命中する。ビームを跳ね返す。防御力はATUを上回る。
それでも集中攻撃を受けた艦は爆発、四散する。
「撃たないんじゃない、撃てないんだ。つまり射程距離が短い」アランの分析。
敵艦隊が近づく。
ようやくバール艦隊の反撃。一斉砲撃が始まる。ビームではなく実体弾だ。
弾速が遅いので簡単に避けられる。しかし数が半端ない。文字通りの雨あられ・・命中。一撃で敵巡洋艦が大破する。イオン流の流れを受けて威力が増している。
「敵の増援、来ます」
「副長、我慢できません。前に出ましょう」グレイがしびれを切らす。
「許可する。エヴァンス、第一戦速で前進!」
「りょ、了解」
インパルスはバール旗艦の前におどり出る。
「副長、機関長、あれを使います」
「よく狙え」とアラン。 リベラは無言でうなずく。
艦底部のハッチが開く。新兵器“ノヴァミサイル”。スーパーノヴァボンバーの約1/10のエネルギーを装填したミサイルだ。
「発射!」グレイがボタンを押す。
発射された大型ミサイルは敵艦隊の目前で炸裂。
爆発は百隻近くの敵艦を巻き込む。小型のスーパーノヴァボンバー爆裂モードだ。
「おおっ」メリス将軍が思わず感嘆の声を漏らす。
インパルスは敵に左舷を向け、全砲門を放つ。
主砲が敵ビームを蹴散らし、敵艦へ命中。うち漏らしたビームをホーミングアローの弾幕が防ぐ。次元衝撃砲とワープミサイルがさらに遠方の敵を撃つ。
「ほう」メルスの目は戦闘に釘付け、会談どころではない。
「あれは何という武器だ」目がキラキラ。
インパルスの快進撃はつづく。
メルスは壁の時計らしきものを見てマイクを手にする。
「スペースインパルスに告ぐ。それ以上先行するな!ただちにこちらへ戻れ!」
インパルス・メインブリッジ。
「どうします副長?完全にこちらが有利ですが」エヴァンスが訊く。
「もどれ!急速回頭だ!」
エヴァンスはしぶしぶ艦をもどす。
次の瞬間、衝撃が艦を襲う。
変光星グーサショイの輝きが増す。再びイオンの嵐が吹き荒れる。
インパルスは無事だが、もろに巻き込まれたトスーゴ艦隊は木の葉のように舞う。
味方同士衝突し爆発。半数近くを失う。残存艦隊は撤退していく。
「ごくろうさん。あとは代わる」
明は操縦桿から離れなくなったエヴァンスの指を引っぺがす。
皮肉にも敵の襲来が会談を成功に導く。




