宇宙のたまご②
数億光年のワープを終え、トスーゴ無敵艦隊前衛旗艦<アポロン>は二重銀河へ接近していた。
艦長室。
美理とピンニョは外を見ている。
「これが我らが本星を守護するトスーゴ無敵艦隊だ」オズマが説明する。
それは数光年にわたる星雲のよう。
無数の船。惑星サイズの要塞。惑星サイズのミサイル。惑星サイズの砲身の巨砲。
「なんて数・・」
「見て、綺麗な星」
二重の環を持つ地球に似た青い惑星。
「あれがトスーゴ星だ」環が蛍光灯のように光っている。
トスーゴ星は機械化され自ら移動可能な機動惑星である。地球よりふた回りほど大きいが、後述する海を除いた中心部分は地球とほぼ同じ大きさだ。星の周辺はバリアーで守られている。二重の環は人工太陽代わりの光源。そのため太陽がなくても人々は生活していける。惑星表面は海で覆われており、その海の底に“コア”と呼ばれる人々の住む大地と空気の層がある。海と空気の境界にもバリアーがあり、そのバリアーに空(昼と夜がある)が映し出されている。
そのトスーゴ星の背後に黒い闇が広がる。宇宙よりも黒い何か。
リナが傍に来る。
「見えますか?あれは元々トスーゴの太陽だったのですが、今はエネルギーの塊・・“宇宙のたまご”・敵の創ったビッグバン発動装置です」
「え?」
約1光年にもおよぶ母星ゼウス。赤色巨星というより黒色超巨星。その表面は半透明で中に何かが蠢いているように見える。この星系のトスーゴ星以外の惑星はその中に飲み込まれてしまった。
オズマが説明する。「ビッグバンが起これば、この宇宙は消滅する。我々は幾度となくあれを攻撃した。結果は惨敗だ。いま全宇宙より艦隊が集結中だ。間もなく最後の総攻撃が開始される」
艦隊がワープアウトする。別の方向からも。次から次へとひっきりなしにそれは続く。
無敵艦隊の他に各方面よりトスーゴ艦隊が集結していた。九つの主要艦隊は第三艦隊を除きその半分がここに集まっていた。
<スペースインパルス>中央作戦室。メインスタッフが集合している。
結晶体のデータを見て、皆ショックを受けている。
流が口を開く。
「クェーサー(準星)か。距離56億7千万光年・・この位置は・・」
「暗黒星のエネルギー転送先。まさにそのポイントです」アランが説明。
グレイが「ではビッグバンというのは、トスーゴの本拠地で起きるのか?」
「これは美理が?」
明の疑問に流が答える。
「いやリナ王女だろう。あの子がこんな情報を入手できるとは思えん。モカ、ATU(反トスーゴ連合)本部にデータを送ってくれ。・・指示を仰ごう」
「了解しました」
「アラン、現状報告をたのむ」
「銀河系中心部で建造中だった銀河跳躍砲は完成。マゼラン銀河への発射テストも成功しています。
一方修復中のアンドロメダ銀河の銀河跳躍砲はM33ギガロ宙域への長距離移動テストに成功。ギガロ防衛のため艦隊の出撃準備中。
ATUは<インパルス2>無人艦の建造中止を決定、残存艦の有人艦への改装を計画中。
回収したトスーゴ艦特にリナ王女の宇宙船を調査中。報告は以上です。
引き続き本艦は第28戦隊と共にここ(ゲマハナ宙域)を防衛せよとの命令が出ています」
腕組みをしていたグレイが口を開く。
「敵・・この場合トスーゴがどう出るかですね。本当に報復攻撃をかけてくるのか?」
今度はリュウが挙手。
「ビッグバンまであと1年と王女は言っていた。そんな状況で攻撃して来るかな?」
「副長、君の意見は?」
「ビッグバンが敵本拠で起きるとすれば、連中は他への避難・移住を考えるのではないでしょうか?ビッグバンが起こっても、例えばここまで影響が及ぶには数万~数億年かかります」
「つまり攻めてくると?」とグレイ。
明は黙って手を挙げる。流が指名する。
「彼らが移住を希望するなら、協力をするべきです。それで戦いが避けられるなら」
「そうだな。だが決定権は我々には無い。・・ん、何か他に言いたい事があるのか?」
「銀河跳躍砲のワープシステムって言いにくいので変更を。例えば・『どこでもワープ』とか」
「却下だ」
リベラが計器を操作する。メインパネルにインパルスの内部図が映る。
「この場を借りて報告があります。スーパーノヴァボンバーにエネルギーカートリッジを併用しました。従来のチャージも可能ですが、予めエネルギーチャージしたカートリッジを装填することで次弾発射までの時間が短縮できます。また威力は落ちますが、カートリッジを装填した“ノヴァミサイル”を開発しました」
「すげえな機関長。就任してすぐなのに。当然知っていた?」明がグレイに訊く。
「ああ」戦闘長だもん。
モカが「ATUより入電。『敵に対し先制攻撃をかける』」
「どこまで頭固いんだ!」
「お前が言うか?」
ヨキとマーチン。マーチンはともかくヨキがなぜここにいるのか?
「とにかくATUは間違っている!戦うべきじゃない!あんな数・・」
リュウがこんな事を言うなんて。お前ビビったのかと誰も言わない。みんなビビったから。
「・・・」
「我々は軍人だ。命令は絶対だ。脱走でもしない限りはな」流は明を見て「・・意見はしてみよう」
会議終了。スタッフは解散する。
マーチンはアランを呼び止める。
「副長。王女の船の資料を見せていただけませんか?」
トスーゴ無敵艦隊は母星ゼウスを取り囲む。
<アポロン>で指揮をとるオズマは命令する。
「ゼウスの周囲へバリアーを張れ!」
ゼウスの周り約1光年に及ぶ半透明の膜が現れる。
こちらからの攻撃は通すが、あちらからの攻撃や爆発は通さない一方通行のバリアーだ。計算では“宇宙のたまご”を破壊しても破られないらしい。それでもビッグバンが起これば抑え込めないらしい。
美理とピンニョはリナと彼女の居室にいる。全天モニターで外の様子がわかるようになっている。
トスーゴ星はゼウスからは約5光年程離れた場所にあるが、その全天をゼウスが占めている。威圧感がすごい。
大神王ゼノンは立ち上がる。
ゼウスを睨みつけながら無言で進撃の合図をする。
旗艦<アポロン>でオズマはうなずき、命令する。
「全艦・総攻撃開始!」




