ふたりの王女⑥
<スペースインパルス>とトスーゴ第一艦隊旗艦<ポセイドン>、その間に高速船<ペガサス>。まわりには追いついてきたトスーゴ第一艦隊2000隻。それらに対し4隻のインパルス2、新たに銀河系から銀河跳躍砲で移動して来た銀河連合改めATU艦隊1000隻がにらみ合っている。
リナ王女はインパルスへ乗艦する。
「温度、湿度、重力、空気成分、特に問題ありませんか?」クリスが尋ねる。
「問題ありません」リナが答える。
つまりトスーゴの好む環境は地球人のそれに近いことを意味している。
リナはヘルメット無しでその素顔をさらしている。服はひらひらの銀のロングスカート。
野次馬がいっぱい。グレイやリュウやヨキ、非番の明の姿もある。
「綺麗だ」野郎共の感想は一致していた。
護衛は数人。中に2mを超す大男がいる。顎髭を生やし多数の傷がある壮年男性。ガルゴスはがんを飛ばしまくる。
一行は野次馬を無視して応接室へ。めったに使われない場所だ。一流(超一流ではない)の調度品に囲まれた部屋である。
「私がスペースインパルス艦長・流啓三だ」
「トスーゴ第1王女リナ=G=トスーゴです。流艦長、お会いできて光栄です」
「トスーゴ第一艦隊司令官ガルゴスだ。姫さまの護衛の為、同席させてもらう」
部屋には他にアラン、ロイ、クリス、それにリナの側近(SP?)の女性二名がいる。
「貴方をATU本部へお連れします。ラプトンATU総長と会談していただきたい。勿論捕虜ではなく大使として」
「それは困ります。私はあの方を好きではありません」
吹き出すロイ、口を塞ぐ。
「流艦長、私は貴方とお会いしたかった。あと・もう一方・・」
ドアが開き、ロイが「明、入れ。ご指名だ」
明が入室する。
リナは出されていたお菓子をぱくっ。「おいしいっ!」明に気付いてあわてて飲み込む。
「姫様・・(毒見もしないで)」頭をかかえるガルゴス。
「貴方が弓月明さん」口元を隠しながらリナが訊く。
「はい」
「美理さんとピンニョちゃんは生きています」
驚く明たち。
「これを」手紙を渡す。「後で読んでください。さて、何からお話しましょうか」
『遠い昔より我々トスーゴは他次元からの侵略をうけていた。
その敵に対抗するため、我々は宇宙の多くの星々で生命をつくった。
その一つが地球。
・・だが多くの生物は自分達で殺し合いをする失敗作だった。
共同戦線を張るどころか、このままでは全宇宙を脅かす存在になる。
・・だから支配下に置くか、さもなくば滅ぼすことにした』
交差するふたつの銀河。その中心近くにトスーゴ星。二つの輪を持った美しい星だ。
巨大な宮殿の中心。美理は大広間に立つ。すぐ傍にオズマ王子がいる。
美理はきょろきょろと周りを見回す。
緑の大地。あたりに木は無い。土そのものが緑色をしている。葉緑素を含んでいるのか?
空に太陽は見えないが、明るい。空にあるのは雲ではない。波打つ“海”だ。人々は海の底に住んでいる?深くないのか?そもそもあれは水なのか?違う液体なのか?
「これがトスーゴ星!そして・・・」
「わが名はゼノン。トスーゴ大神王ゼノン」
美理の目の前にいるのはトスーゴの王。バッファローのような角の生えたヘルメット?王冠?をかぶった2mを優に超す大男。流艦長のような口髭と鋭い眼光。かなりの筋肉質だ。その傍にエルザ王妃。こちらは床に着きそうなほどの長い髪の美人だが(リナには悪いが)冷たい感じがする。
「な、流美理です。よよろしくお願いいたします」
「本当にエレーヌそっくりだ。驚いた。お前は母親から我々の事を聞いていたのか?」
「母は記憶を無くしていました」
「あれがここを出たのは和平のためだった。愚かな・・」
「愚か?」美理はむっとする。「私達は恒星消滅を起こす“暗黒星”があなた方トスーゴによるものと考えていました。でも本当はトスーゴの敵“他次元生命体”だと聞きました。・・つまり、共通の敵です。私達とあなた方が戦う必要は無いと思います」
「フ・・では“ATU・反トスーゴ連合”なるものの言っている事は何だ?」
「ATU?」
ラプトンの演説が流れる。暗黒星を操っているのがあたかもトスーゴのような言い方だ。
「彼女はこの放送を知りません」オズマが助ける。
「真実をねじ曲げるような連中を信じろと言うのか?」
「・・・(父さん、母さん、兄さん、明くん・・私に力を、力をください・・)」
「我々はお互いに多くの同胞を失った。今さら停戦など出来るものか」
「停戦ではありません。終戦です」
「フ・・ハハハハハハ・・・面白い娘だ。他次元生命体が何をしようとしているか、教えてやろう。・・新しい“ビッグバン“だ」
「!」
ビッグバンとは何か?
もう半分常識化していますが、ビッグバンとは宇宙のはじまりの大爆発のこと。
それは138億年前に起こったとされ、“無“から誕生したとか、誕生直後の温度は10の27乗Kだったとか。
でも誰も見たことがありません(当たり前か)。
ですので、このお話ではその辺を「てきとー」に書いています。
宇宙は今も膨張し続けている。それは事実のようなので、宇宙を膨らみ続ける風船だとしたら、その中に別の風船が膨らみ出したらどうなるか?そんな感じ。




