ふたりの王女⑤
『今です!』
流は動かない。無言で前をにらんでいる。
グレイはトリガーに指をかけたまま。命令を待っている。
明はふりかえり流を見つめる。
明には何となく流の気持ちがわかる。この戦法は卑怯ではないのかという気持ちと、ここで先制攻撃してしまっては和平を結べないのではという気持ち。しかし今攻撃しなければ敗北は目に見えている。
流が命令を出そうとした時、
「重力震!」そうクリスが言うのと同時だった。
背後に宇宙船がワープアウトして来る。インパルスに似た艦影の黒い宇宙船だ。
援軍の<量産型スペースインパルス2>。完全自律型AIによる無人艦。通称ブラックインパルス。それら3隻はワープブースターを破棄する。
「40万光年をワープして来たのか?」
ブラックインパルスは姿勢制御し艦首を“リング”に向ける。
その無人ブリッジに無感情な声が流れる。
『エネルギー120%、発射3秒前・2・1・発射!』
両主翼下よりスーパーノヴァボンバーを発射!!
「!」
ビームは“天使の輪”へ吸い込まれて・・・消える。
流は無言でそれを見つめる。
エネルギーの束がワープアウトする。
トスーゴ第一艦隊へ・・。
無数の艦が光に包まれる。爆発が広がる。
ガルゴスは驚く。
「!! 銀河跳躍砲が敵の手に・・全艦散開!散れ!」
ギガロ宙域。
遅れて有人の<スペースインパルス2司令艦>がワープして来る。こちらはカーキ色だ。(ちなみに元祖インパルスはいぶし銀と一部青である)
『流艦長!援軍に参りました!』ロイの声。
「感謝する」流はそう言ったきり黙りこむ。
再びアランより通信が入る。
『続けてもう一方の艦隊を狙う!』
アランは機械を操作する。
“天使の輪”が消え、別の方向にまた現れる。
『エネルギー120%、発射3秒前・2・1・発射!』
3隻のブラックインパルスの両尾翼よりスーパーノヴァボンバーが再び発射される。
それはワープしていく。
エネルギーの束がワープアウトする。
トスーゴ第四艦隊へ・・
広がる爆発。
ユーダが叫ぶ。「!! 全艦散開しろ!!」
「俺たちのインパルスと違い、全4門で連続発射が可能なんだ」グレイが明に説明する。
「・・・」
「しかも司令艦以外は無人だ」
「だから無茶な長距離ワープが可能なのか」
人間がいない方が優秀なのは皮肉だ。
「だがインパルス2にはウィングサーベルとバリアーアタックは装備されていない」
「へえ」
「各敵艦隊の約1/4を撃破。艦隊は分散。すぐにこちらには来な・・」
クリスの報告は途中で止まる。「重力震!」
目前に何かが現れる。ワープアウトして来る。巨大戦艦<ポセイドン>!
「全砲門開け!」流は即座に反応する。
ガルゴスが叫ぶ。「大将だけでも叩く!」
<ポセイドン>がインパルスへ迫る。
超長距離ワープを行った<ポセイドン>にエネルギーは残っていない。ガルゴスは体当たりを敢行しようとしていた。
明はその突っ込みをかわそうとするが、速い!
「くそお!」避けられない!
その時。一隻の宇宙船が両者の間にワープアウトして来る。
<フロンティア号>に似た小型の宇宙船。
「! と、止めろー!!」驚いたガルゴスは制動をかける。
間一髪で三隻の船は衝突を免れた。
インパルスに通信が入る。
『私はトスーゴ第1王女リナです。ATU代表と話し合いに参りました』
恒星に迫る黒い闇<暗黒星>。
ブラックインパルスが接近する。
暗黒星は怪しい光を放つ。
しかしブラックインパルスは何事もなく航行する。
『エネルギー100%、発射3秒前・2・1・発射!』
スーパーノヴァボンバー4門一斉発射!
4つの光が命中。暗黒星が消し飛ぶ。
「素晴らしい」
高級ソファに座りモニターを見ているATU総長ラプトン。まわりには秘書やら部下やらが数名立っている。
「コンピューター制御の無人艦ですから、幻覚などに惑わされる事はありません」
「トスーゴも対暗黒星には無人艦を使用しております」
「週末にはあと12隻揃います」
警告音と共に報告が入る。
『ラプトン総長。地球連邦の移民星で同時多発テロ発生!』
「またか。戦争反対、トスーゴと戦うななどと言っているヒマな連中だ」
「どうなされますか?」
「愚民など放っておけ。どうせ何もできん」
「ところで、お聞きになりましたか?」
「ああトスーゴ王女の件だな。うまく捕虜に出来れば、今後有利になるのだが」




