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三十三 VSオーガ

 駆け足でたどり着いたその場所は、他の服屋や飲食店と比べてかなり広めの空間が設けられていた。


「ここは……」


 どことなく毛色の違う雰囲気を感じ取って、俺は辺りに目を走らせる。


 月日の流れのせいで薄汚れてしまっている点は変わらない。

 だが、意図的に中が覗き込めるようにしてあるのか、通路との境目が壁ではなく板ガラスであるところ。床全体に薄いマットレスが敷いてあるところ。天井に設置された電灯の数が多いところなど、そもそもの造りから手を加えられているようなところが目立つ。


『久郎くん、調べてみてわかったよ。そこ、元々は会員制のスポーツジムがあったみたいだね』


 俺の疑問に答えるように、いろはからの通信が入った。

 ……なるほど。ジムか。


 店の中に入ってみて、やっぱり広いな。と感じる。

 踏み出す足音が吸い込まれるマットレスの感触も、安全のためとか、衝撃を吸収するためのものだと考えれば納得だ。

 この場所が元々、何らかの運動をするためのスペースだったということに疑いの余地はない。


 だが。


「最近まで誰か居たのも、間違いなさそうだな」


 薄暗いジム跡の床に、ダンベルが転がっていた。

 片手で持つ形状の物だが重さは、ニ十キロくらいか。

 実際に持ち上げてみると相当な手応えがあった。

 トレーニングで使うにしても、扱う人間を選ぶ代物だろう。


 よく見ればダンベルの他にも、金属製のバーやら、円盤型の錘やら、人が一人で寝ころべるサイズのベンチやらが無造作に置かれている。

 このジムに置き忘れられた物かとも思ったが、その割には埃もかぶっている様子もない。


 間違いなく誰かが、定期的に使っている。


 こんな場所に通って体を鍛えている。

 その、誰か、が今は問題なわけだが。


「いろは、見つけたぞ。これが、発電機か?」


 トレーニング器具とは別に、ジム跡の片隅で四角い箱のような物が低く唸りをあげていた。

 一定のリズムで小刻みに震えているそれは、近くの配電盤に何本かのコードのようなもので繋げられていた。


『うん。梶くんも間違いないってさ。そっからジム全体の明かりを補えるくらいの電力が供給されてる』

 これで決まりだ。この場所はただの廃墟じゃない。誰かが身を潜め、何かをするための拠点。


 初めてオーガの足取りを、はっきりと掴んだことになる。


「後は、妻崎の居場所だ。敵の隠れ家がここならそう離れた所に、は……?」


 俺が発電機を見下ろし、呟いたその時だった。

 ジジジッという音と共に、視界が一瞬白く染まった。


「ぐっ!」


 突然飛び込んできた光に反応して、目の中の筋肉が急激に引き絞られるのを感じる。

 誰かが室内の明かりをつけた。


 そのことを頭が理解した瞬間、耳が背後から空を切って何かが飛んでくる音を捉えた。


 咄嗟に体を右に傾けて、倒れこむようにして横に転がる。

 時間の感覚が伸びて、ゆっくりと回る視界の中で、自分の頭があった場所を丸い何かが通り過ぎていくのが見えた。


 さっき床の上で見つけた、バーベルに取り付ける錘の一枚。

 真ん中に穴の開いた円盤はそのまま壁にぶつかって跳ね返り、床に落ちてけたたましい音を立てる。


 この重量の金属がまともに当たっていれば、最悪、その時点で終わりだっただろう。

 反響する金属音を耳にしながら、俺は自分の胃の底の辺りが冷えるのを感じた。


 疑いようがない。

 今のは、攻撃だ。

 すぐ傍に敵がいる。俺を殺そうとする誰かが。


「青い、フード……っ!」


 振り返った俺の目の前に、見覚えのある人影が立っていた。

 黒ではなく青だとどうにか感じられる濃紺のパーカーと、目深に被ったフード。

 俺よりも二十センチほど背が高く、肩、首筋、胸、腕にがっしりとした筋肉のついた体躯。


 忘れるはずがない。

 こいつが、俺達を襲った奴だ。

 町で魔物の力を得た人間にすら恐れられ、尾長を殺し、妻崎を攫った張本人。


 オーガと呼ばれる男が、そこに立っていた。


「よく、避けたな。今ので、終わらせるつもりだった」


 天井に明かりがついたことで光に満ちたジム跡の中、暗い影のような男が口を開く。

 ほんの少しかすれた低い声だ。

 歳は、おそらくだが三十手前か、少し超えたくらいかもしれない。


 よく見ればフードで隠した目元に、黒い布地のマスクを着けている。

 鼻から顎にかけてはむき出しになってはいるものの、それだけでは人相がよくわからない。


 あとは、何だ?

 フードの額の辺りに、少し離れて二つ穴が開いている。

 穴の周りの糸がほつれているところをからすると、元々のデザインではなく、破れてできたもののようだが。


「ここに、直接乗り込んでくるとは思っていなかった。外の騒ぎも、お前らだろう?」


 淡々としていて、落ち着いた口調だ。

 色濃い敵意をこめた俺の視線を受けても、オーガに動じる様子はない。

 怒りも、焦りも、緊張も、感じていないようだった。


 それにしても、お前ら、か。


 外で犬走が暴れていることに気付くのは当然として、この男の口ぶりだと俺に仲間がいることにも察しがついているらしいな。


 防犯カメラにメッセージを残したところからすると、いろはの能力も知っているのかもしれない。


「俺がここに来た理由は、わかっているだろう。妻崎は、どこにいる?」


 目の前に立っていても得体の知れないところが多い奴だが、ここで尻込みするわけにはいかない。

 俺は余計なことはすべて省いて、今、一番訊くべき疑問だけをオーガにぶつけた。


「…………何の話だ?」


 しかし、オーガの反応は薄い。短く鼻を鳴らされ、はぐらかされてしまう。


「しらばっくれるな。そんな誤魔化しが通じると思うか? さっさと居場所を教えろ」

「だから、知らん。知っていたとしても、どのみち、お前が首を突っ込む話じゃない」

「……そうかよ。なら、仕方ない」


 ここで簡単に口を割るような相手じゃないのはわかっていた。

 交渉の余地がないのなら、ここからは力ずくだ。

 口を無理矢理こじ開けてでも、本当のことを吐かせてやる。


「馬鹿みたいな格好で顔を隠して、ヒーロー気取りか。大概にしとけよ、ガキ」


 姿勢を落とし、腰元のホルスターに手を伸ばした俺を見て、オーガが初めて、呆れとも、苛立ちともとれる感情のこもった息を吐いた。


「フードやマスクで顔を隠してるあんたに、そんなことを言われる筋合いはないな」


 おかしな格好をしているのはわかっている。

 だが、ヒーローなんてものを気取っているつもりはない。


 俺は友達を助けに来た。

 そのためだったら、どんなに汚くて、残酷な方法を選ぶことも躊躇わない。


「……俺は、お前らみたいなガキとは違う」

「ああ。あんたと、俺は違う」


 確かにその通りだ。

 人殺しの誘拐犯なんて見下げた悪党に比べれば、俺にもまだ救いはある。


「はじめの頃は、見逃そうとも思ったんだがな。お前たちは調子に乗って、関わり過ぎた。町の不良のことにしても、沢尻や、岩田みたいな力を持った連中にしても。そして」


 オーガは一度口をつぐんで、俺を見る。


「尾長のことにしても、だ」


 向けられたのは、射すくめられるような視線だった。

 尾長のことを口にしたその声色が一際重かったのは、自分が手を下して命を奪った相手だったからなのか。


 それとも。


 お前もそうなるぞ、という警告なのか。

 俺は目の前の男の目的は何なのか、考える。


「これが最後の警告だ。もう二度と、この町の闇に関わらないと誓え。そうすれば、今回は見逃してやる」


 見逃す、だって? 俺はオーガの言葉に耳を疑った。


 こいつは一体、何を言ってるんだ?

 冗談のつもりか、それとも頭がおかしいのか。

 妻崎を攫ったことも、いろはを罠にかけたことも、全部そっちからふっかけてきたことだろう。


 お前が好き勝手やっていることにただ目をつぶれと、そんな要求を受け入れると思っているのか。


「嫌だと、言ったら」

「どうなるかは、わかるだろう。お前もこっち側に片足を突っ込んでいるんだからな」


 すっと、オーガが一歩足を前に踏み出した。

 距離にすれば五十センチほど近づいただけ。


 それだけなのに。

 肌に感じる、空気の圧が変わった。


 こっちの世界に戻ってきて向かい合ったどの相手よりも、段違いに重い。

 口から吸いこんだ空気のせいで体が内側から強張っていくような、肩や膝が勝手に震えだすような、圧倒的な気配が、部屋全体に広がっていく。


「選択を間違えたな。ゴーグルのガキ」


 そう呟いたオーガから、あの、魔族や魔物特有の臭いが滲みだす。

 いろはや、犬走、尾長、沢尻、岩田、これまでに出会った魔の力を持った連中から感じた物と比べると、こいつのは異質だ。


 邪悪なだけじゃない。暗くて、冷酷で、強く、揺るがない覚悟のような何かを感じる。


「……オーガ、か」


 魔力の気配と共に姿を変え始めた男を見て、なぜそう呼ばれるのかがやっとわかった。


 パーカーやマスクで隠されていない部分の素肌が、青く染まっていく。

 それに合わせて、元から鍛え上げられているのがわかる全身の筋肉が、さらに一回り膨れ上がっていった。

 男が深く呼吸をし、肩が上下するたびに、その体から放たれる威圧感が増していく。

 そして、フードに空いていた二つの穴。

 そこから漆黒の角が二本、天井に向かってゆっくりと反り返るように伸びていくのが見えた。

 光を受けるその角の表面は、生半可な金属なら易々と貫いてしまいそうな迫力をたたえていた。


 なるほど。確かに、鬼だ。

 夜の闇に潜み、異形の力を持った連中の頂点に立つ、青い鬼。


 それが、オーガという名前の由来なんだろう。


「少なくとも、お前はここで終わりだ」


 怪物へと完全に姿を変えたオーガが、静かに俺を見る。

 その瞳の色は、銀。

 肌と同じく暗い色になった目の中に浮かぶ光が、俺を映す。


 感じるのは、確かな殺意だった。


『……久郎くん、大丈夫なんだよね』


 無線から珍しく、いろはの弱気な声が聞こえた。

 目の前に居る相手は強い。理屈ではなく感覚でわかる。

 一つの失敗、一瞬の読み違いが致命的になるような敵だろう。


 それでも今は、確信なんてなくても、根拠なんてなくても、言わなければならないはずだ。


「安心しろ。俺は、負けないから」


 決意を形にしたのと同時に、腰元のホルスターからナイフを抜き取って投げる。

 距離にして五歩、回転はいらない。

 切るように短く息を吐きながら、横なぎに腕を振るった。


「…………」


 右目を一直線に狙った俺の投擲を、オーガは上半身を僅かに左に反らして躱した。


 適当に避けたわけじゃないな。

 目で追って、次の行動を考えながら動いている。

 となると、次は。


「飛び道具か。好みじゃないな」


 オーガの体が横から前に揺れるように動き、こちらに向かって一気に踏み込んできた。

 突き出された角が邪魔だ。顔を狙って反撃するのは難しい。

 今度はこっちが回避に集中する番だ。


 振りかぶられたオーガの拳が、尋常ではない速度で繰り出されてくる。

 まともに躱せたのは顔を狙われた最初の一撃だけ。

 右、左、下からと容赦なく襲い掛かってくる連撃が掠めるだけで、服の上からだというのに焼けるような痛みが走る。


 見てから動いてたんじゃ間に合わない?

 だったら、考えろ。

 予測して、先に動け!


「お、ラァ!」


 ほんの少しだけ大振りで繰り出された右の一撃をしゃがんでやり過ごし、沈み込んだ姿勢から抉りこむようにしてオーガの脇腹に拳を捩じり込む。

 膝と肩と腕と腰、全ての力を乗せることができたはず。


 だったのだが。


「!」


 オーガの体は揺るがなかった。

 俺の拳が生み出した衝撃は何かに吸い込まれたように消える。


 理由は単純だ。筋肉に阻まれた。

 人間のそれよりも遥かに強靭でしなやかな繊維の束。

 柔らかいのに、壊すことができない。絶望的なまでに厚い鎧を、オーガは全身に纏っている。


「ゴアアッ!」


 俺を叩き潰そうと間髪入れずに振り下ろされたオーガの一撃は、上半身を仰け反らせることでどうにかやり過ごす。

 俺の体の中央を皮一枚のところで通り過ぎていった拳が、足元の床を易々と砕くのがわかった。


 下から舞い上がる埃と、床の破片がゴーグルの表面を叩く。

 だが、止まっている暇はない。


 即座に後ろに跳んで一旦距離を置く。

 相手の力が明らかになった今だからこそ、ひと呼吸分でも考える時間が欲しい。


 ずば抜けて高い身体能力と、頑強な体。

 おそらくオーガの能力の核はそれだ。

 最初に出会った時に使われた目に見えない爆発のような攻撃も警戒すべきだが、本質じゃない。

 ただ人間より速く、強く、硬い。単純すぎる力。

 だが、それ故に恐ろしい、圧倒的な暴力の化身。

 その理不尽さを感じ取る。


「ガアッ!」


 一歩退いた俺を追って、オーガがすかさず距離を詰めてくる。

 ほとんど突進のようにして繰り出されてきた肘鉄を身を捻ってやり過ごせたかと思えば、間隔を開けずに回し蹴りがやってきた。

 俺は背筋の力を使って後ろに勢いよく倒れ、片手をつきバク転の要領で後ろに回る。


 どうにか、間に合った。


 一手一手が致命傷に繋がる攻防。

 戦い方で判断するなら、犬走の完全な上位互換というところだろう。

 身体能力だけに頼った戦い方じゃない。力任せに暴れているのとも違う。

 勘が鋭く、攻め方も緩急自在だ。


 人間よりも強い肉体を持って生まれ、戦士として知性と技術を鍛え上げた種族の戦い方。

 人型の魔物が、下手な能力を持っている化け物より上位種として君臨する理由はそこにある。


 こっちは一発ももらえないのに、相手は多少読みを外して攻撃をくらっても無理矢理押し切ってくる。

 そういう奴を相手に正面切って殴り合うのは、流石にまずい。

 俺はオーガに視線を向けたまま後ろに下がりつつ、外套の袖から両手に一本ずつナイフを取り出す。


 牽制がてら投げつけてみたが、当然のように避けられた。

 時間差で投げた二本のナイフを、左右のステップでリズムよく躱すその動きを確認して、俺は駆け出した。


 とりあえず決定打がない今は、簡単に接近戦に持ち込まれない間合いを維持しなければならない。


「…………ナイフは、嫌がる、か」


 飛び道具を受けるのではなく、避けるということはゴーレムほど刃物に強いわけではないということ。スライムのような再生能力も持ち合わせていないのだろう。


 頑丈だが、無敵じゃない。

 痛みも感じれば、人間と同じように急所も存在するはずだ。


 俺の勝ち筋は、得意な距離を保ちつつ攻撃を避け続け、どうにかチャンスを作り出し、決定打となる一撃を叩きこむこと。

 それしかない。


 遠く離れた針の穴に糸を投げて通すような話だが、方法がないわけじゃない。

 いろはと、梶さんのおかげで一つだけ思いつくことができた。


「ちょこまかと……いい加減、まどろっこしくなってきたな」


 用心して十歩ほど距離を開けた俺を見て、オーガがうんざりしたように息を吐き、構えを解いた。何と言われようと、こいつの得意な範囲で戦ってやる義理はない。


 わざわざ手を止めて、休ませてくれるならありがたい限りだと思った矢先。


「こっちは鬼に、金棒といかせてもらおうか」


 オーガが床に転がっていた鉄の棒に手を伸ばした。


 それはトレーニングに使うバーベルのバーだった。


 武器というにはあまりに原始的なそれを無造作に掴んで、オーガは野球のスイングのような動作で二、三度素振りをする。

 そして、今度は同じく床に転がっていたバーベルの錘を片手で何枚か掴んで。


「死にたくなければ、避けろよ。ガキ」


 そう言うなり、宙に放った円盤をまとめて薙ぎ払った。


「……っな!」


 オーガが打ち出してきた円盤が俺に向かって容赦なく飛んでくる。

 その軌道は狙ったものじゃない。完全に勢い任せだ。

 数に物を言わせただけ、しかし一枚一枚が確かな破壊力を持って迫ってくる凶器と化す。


 一度目を避けることはさほど難しくはなかった。

 だが、オーガが何度も金棒を振るい、ガガガガガガガアンと、金属と金属が激突する音が反響するたびに、飛来する円盤の数が増えていく。


 自分が立っているのか転がっているのかも見失うような視界の中で、動く物全てに手当たり次第に反応し続ける。

 当たれば終わる。

 向かってくるものは全部、死だ。

 避けろ、避けろ、しゃがめ、跳べ、躱せ、避けろ、避けろ、避けろ避け続けろ!


「……チッ、終わったか」


 唐突に、オーガの動きが止まった。

 見ればその手の届く範囲から、金属製の円盤は全てなくなってしまっている。

 これで弾切れか。

 あれだけ考えなしに打っていればいずれそうなるのは分かり切っていただろうに。


 俺が一連の回避で乱れた呼吸を整えようとしたその時だった。


「仕方ないな。あまり気は進まないが」


 呟いたオーガが、金棒で床を殴りつけた。

 敷かれていたマットレスを突き抜け、その下のコンクリートが蜘蛛の巣状に砕け散る。


 今度は、一体何だ?


「これで、いいか」


 そんなの、ありかよ!


 オーガが砕けた床の破片の中から一際大きな物を掴んだ瞬間、俺は喉まで出かかった叫びを飲み込んだ。

 あれを打ってくるつもりなのか。

 まずい!

 あれは金属の円盤と違って、おそらく!


「……く、うぉおおお!」


 オーガがコンクリートの塊を金棒で打ち付けた途端、灰色の粉塵が視界を覆うように一気に広がった。

 飛んでくる細かい破片の一つ一つにこちらの命を奪うような威力はない。

 しかし、さっきと違って避けきることもできなかった。


「そら、捕まえたぞ」


 俺の脚が止まったのは一瞬だった。

 オーガにとってその一瞬は距離を詰めるのに十分すぎる時間。


 煙の向こうから二本の角が伸びてくる。

 群青色の影が、すぐそこまで迫っている。


「終わりだ、ガキ」


 腕を振り上げ宣言するオーガの姿が見えた。

 駄目だ。

 確信をもって避けるのは不可能。


 目を凝らせ! 見ろ! どこにくるか、見極めろ!


 右か、左か、顔か、胴か、どう躱す? どうやって命を繋ぐ?

 理屈じゃない。感覚でいい!

 頼るしかない!


 決めろ。

 死にたくなければ、選ぶんだ!


 極限まで引き延ばされた時間の中で、ゆっくりと近づく死の気配を前に俺が選択したのは――

 私はわりかしカードゲームなんかもやるのですが、あの手のゲームに登場するモンスターって人型である方が強い気がします。

 そりゃ、ドラゴンや、悪魔みたいな姿をしている存在が弱いわけがないのはわかります。

 でも人に似た姿をしていて、人より強そうな要素をもっているほうが、印象に残りやすいのかもしれませんね。

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