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十一 VSリザードマン

 昼間は営業していない居酒屋が並ぶ細い道に男が五人と、倒れた女が一人。

 辺りに他の人の気配はない。

 誰かが偶然通りかかったとしても、ほとんどの人間が怯えて逃げ出すだろう。


 そんな場面だった。


 男たちは皆、似たり寄ったりのアウトローな感じの服を着ていて、へらへらと笑っている。

 その中で一際目立つ奴がいた。


 元は長いのが分かる茶髪を何本も編み込んだ鱗のような頭と、色白で眉毛も薄いせいでどことなく爬虫類を思わせる風貌。

 あいつが写真の男、尾長か。


「こいつ、いきなり殴りかかってきやがって、何がしたかったんすかねえ?」

「知らね。なんか俺らのこと気に入らねえみたいなこと言ってなかったか」


 取り巻きの一人がうつ伏せに倒れた犬走の方に一歩踏み出して、尾長の方をふり返る。

 様子からすると、もう決着はついているのだろう。

 男たちはほとんど無傷なのに対して、犬走は口の端や頬に血を滲ませているのが見えた。


 あいつが立ち上がれない、ということはかなり痛めつけられているはずだ。


「……やめろって言ってんだよ」

「あ?」

「お前らがやってること、やめろっつってんだよ!」


 犬走は体を震わせながら、どうにか顔を上げ男たちを睨み付ける。

 その言葉に尾長は一瞬目を丸くして。


「あー、そういうアレね。キミさ、高校生くらいっしょ? 何? 俺らキミのお友達でもボコっちゃった?」


 自分に向けられた鋭い視線をものともせず、尾長が犬走の前にしゃがみ込んで小馬鹿にしたように笑う。


「つってもなあ、俺らも色々やっちまってるし、いちいち覚えてらんねえんだわ。ごめんねー」

「ふ、ざけんな! お前のせいでどんだけの人が……」

「なあ、落ち着けよ。犬のお嬢ちゃん。そんな怖い顔すんなって」


 宥めるような言葉とは裏腹に、尾長は犬走の髪を掴んで上に引っ張った。


 まだだ。

 まだ出るな。


 腹の底から湧き上がる怒りを飲み込んで、息を殺す。

 時を待つ。


「俺ら、そんなに悪い事してるかね? こう見えて、ちゃんとルールだって決めてんだぜ? カツアゲやゆすりは月十回まで。人から貰った金はその日のうちにこの街で全部使う。経済を回すとか、そんな感じ?」

「でも尾長さん、使うのは女にか、知り合いの店だけじゃないっすか」

「うるせえんだよ! 文句あんならてめえらもついてくんなや!」


 振り返って怒鳴った尾長の言葉に、何が可笑しいのか取り巻きたちがどっと笑いだす。


「頭が良い奴らは勉強して、いい仕事見つけて、上手いこと人を騙して金稼いでんだろ。俺だって同じさ。頭悪いから、体張って暴力で金稼いでるだけ。言っちまえば狩りだよ、狩り。人間らしいだろ?」


 これが、尾長という男の信条か。


 善悪という基準を偽善と必要悪にすり替え、自分を正当化する無茶苦茶な理屈だ。

 狩り、という言い回しはこいつがたどり着いた便利な言い訳なんだろう。


「俺ら馬鹿だからさ、シンプルに考えさせてくれよ。強い奴が正しい。そういうことがあっても、よくね?」


 話は終わり、とばかりに尾長は掴んでいた犬走の髪を三度横に振って放す。


「さ、暗い話はここまで。お前らの中で、このお嬢ちゃんと遊びたい人―?」


 立ち上がった尾長がわざとらしくはしゃいだ声で、取り巻きたちに尋ねる。

 男たちは互いに顔を見合わせ。


「じゃ、俺、もらってもいいすかね」


 一人の男がおどけた様子で首をすくめながら、小さく手を挙げた。

 それを見て、周りがまた笑う。


「お前マジ? こーいうのが趣味なわけ? こいつ胸とかめっちゃちっちゃくね?」

「いやでも顔は可愛くないすか? それに俺、どっちかっつったら脚の方が好きなんで」

「うーわ、出たよ。こっわ」


 尾長に胸元を小突かれた男が犬走に向かって歩み寄る。

 にやつきながら、目の前でアスファルトを引っ掻く犬走の悔しさや、絶望なんて気にもせずに、魔の手を伸ばそうとする。


 お前らみたいな奴らが、正しいわけないだろ。


 もう我慢も、様子見もここまでだ。

 容赦する必要がないことがよく分かった。


 全員、この場で潰す。


 そう決めてからは迷わなかった。

 今まで足場にしていた居酒屋の窓のふちから飛び降り、腕を振るって今日買ったばかりの武器を投げる。


 狙ったのは犬走に寄ろうとしていた気持ち悪い奴だ。


「いぎっ!」


 命中。男の眉間でゴッと鈍い音を立てたのは、釣り用の錘。

 鉛で出来ているそれは、ほどよく縦長で武器としての重さも申し分ない。


 死なない程度に痛い、期待通りの威力だった。


 だが、まだだ。

 地面に着くと同時に前に走る。

 額を両手でおさえて悶えている男に一気に接近して、無防備な顎を殴りつけた。

 続けて鳩尾、体がくの字に折れ曲がったところで後頭部に肘鉄を叩きこむ。


 三発ともまともにもらった男は地面に俯せに倒れ、そのまま動かなくなった。


「ああ? なんだ、こいつ」

「……お前っ!」


 いきなり取り巻きを倒された尾長が俺の姿を見て、怪訝そうな顔をする。


 犬走も似たような反応だった。

 驚き、というよりも何か変な物でも見たような表情。

 まあ、今の俺の格好なら仕方ないか。


 顔面にはデカいゴーグルと、立体マスク。

 さらに学校の制服でどこの誰かバレないようにと、上からビニール製の雨合羽を羽織ってみた。

 腰のベルトはきつめに巻き直して、ズボンとの間にさっき投げた錘をはじめとした武器をいくつかねじ込んだスタイル。


 合羽のフードをすっぽりとかぶれば正体不明の不審者の完成だ。


 不格好なのはわかってるが、ほとんど全部百均で見繕ったところは褒めてもらいたい。


「おい、ヒロ! ……てめえ、いきなり何してくれてんだ!」


 ヒロってのは倒れた奴のことか。

 仲間がやられたことで尾長の後ろの取り巻きが騒ぎ出すが、無視だ。

 どうせ何を話しても無駄になるだけだろうからな。


 こいつらみたいな連中を黙らせたかったら、力ずくが最適解。


 敵の数は尾長も含めて残り四人。

 一人だけ鉄パイプを持っている奴がいるな。犬走を相手にする時に使ったんだろう。

 この狭い路地だと同時に相手にできるのは二人まで、挟まれると流石に面倒だ。


 倒れている犬走を背にして、後ろには通さないように仕留めていく必要がある。


「黙ってねえでなんか言えや、コラア!」


 取り巻き達が目をつり上げ、声を荒げながらこちらに向かってくる。

 寄ってきてくれるなら好都合。


 一人ずつ処理してやろうと、腰の錘に意識を向けた時だった。


「待てや、お前らあ!」


 尾長の一喝が周囲の空気を震わせた。


「今の動き見たろ。こいつ、妙な格好してるがどーもヤバそうだ。下手こいて数減らすんじゃねえよ」


 ぴたりと動きを止めた取り巻きたちの間を通り抜けて、尾長が自ら前に出てくる。


「一日に二回も知らねえ奴に襲われるなんてなあ。ほんと、物騒な街だぜ」


 唇の薄い口の片側を上げ、尾長は肩を揺すって笑う。

 軽口を叩けるのは余裕がある証拠だな。

 不慮の事態への対応も冷静で、仲間を平然とコマとして扱える。


 良くも悪くもボスタイプの男のようだ。


「変質者さんよお、真っ先に助けに入ったところを見ると、お前通りすがりって感じじゃねえな。そのお嬢ちゃんのお仲間かあ?」


 俺を上から下までねめつけるように眺めた後、尾長は近くの仲間に耳打ちする。


 あいつも変われるタイプかもしれねえ。

 俺が相手すっからお前らは動き止めろ。とか、そんな指示を出したようだ。


 見た目のわりに用心深い奴だ。

 少し感心した。

 俺の耳が良くなきゃ、さぞ効果的だったろうに。


 こりゃ、尾長を最初に仕留めておくのが良さそうだ。


「……っふ!」


 この距離だ、回転はなしでいい。

 ベルトから抜いて投げた二つの錘は真っ直ぐに飛び、尾長の顔をとらえたのだが。


「いってえ、なあ」


 不愉快そうに頭を振って、尾長が呻く。

 見れば錘が当たった尾長の額と顎の皮膚の様子が変わっていた。


 鱗だ。

 人の肌とは違う、硬質化した黄緑色の皮膚が尾長の顔を覆っていく。

 変わったのは肌だけじゃない。

 口は横に裂け、耳が側頭部に埋まるようにして無くなっていった。


 ずるり、と服の腰元の隙間から太い尻尾が滑り出し、五指の先の爪は伸びて鉤型に変化した。

 この姿は、間違いない。


「トカゲ……いや、リザードマンだな」


 これで魔物も三種類目。

 犬走が人狼とかワーウルフみたいなもんだとして、いろははグレムリンとか言ったか?

 二人に比べれば、尾長の今の姿はむこうだと割とメジャーどころだな。


「殺すぞ!」


 大してダメージは与えられなかったみたいだが、腹は立ったらしい。

 尾長は縦に裂けた瞳をこちら見据え、突っ込んでくる。


 速いな。

 姿は違うが、どうやら犬走と同じように身体能力も高まっているみたいだ。


 牽制として錘をもう一つ投げてみたが、腕の一振りで落とされた。


「……チッ、邪魔だな」

「んだと、コラア!」


 この位置からだと後ろの取り巻きも狙えない。

 尾長が振り下ろしてきた右腕の爪を躱しながら、リザードマンとの戦い方を思い起こす。


 警戒しなきゃいけないのは爪と、牙。

 さらに腕より太い筋肉の束で、足よりも自在に動く尻尾が厄介だ。

 厚い鱗のせいで下手な打撃は通らない。


 狙う場所が重要だ。


「あっぶね!」


 考えていた傍から尾長が体を回転させ、尻尾を横に薙いでくる。

 頭を下げて躱しはしたものの、通り過ぎていった尻尾が打ち据えた壁にヒビが入るのを見て、流石にゾッとした。


「おい、コイツ動き回ってうぜえ! お前ら、捕まえろ!」


 回避に専念して隙を窺う俺に痺れを切らしたのか、尾長が後ろで控えていた取り巻きたちに呼びかける。


 数は三人。

 全員、こういう荒事には慣れているのか動きは迅速だった。


 躊躇いのない動作で鉄パイプを振りかざしてきた一人目はとりあえず殴って退けた。

 だが、残りの二人が襲い掛かってきたのはほとんど同時。

 左側から来た方を先に殴った。しかし、浅かったせいか、倒れない。


「調子乗ってんじゃねえぞ!」


 もう一人が姿勢を落とし、腰元に腕を回してくる。

 かなり鍛えているのか力が強く、すぐに振りほどくことはできなかった。

 俺がよろけた隙に、先に殴ってきた方が左腕を羽交い絞めにしてくる。

 それを見て、腰に手を回していた方が右腕を押さえてくる。


「よっしゃあ! そのまま掴んでろ!」


 両腕を広げた形で拘束された俺を見て、尾長が嬉々として叫びながら体を回す。

 また尻尾がくるか。

 当たればひとたまりもないからな。


「な⁉」


 ここはその威力を利用させてもらう。

 俺は両脚で地面を蹴り、腹筋に力を込めて体を上に向かって折り曲げた。

 両腕を押さえていた取り巻きがぎょっとしたような声をあげたが、もう遅い。


 お前らはここで退場だ。


「げばあっ!」


 横に振られた尻尾が取り巻きの二人をまとめてなぎ倒す。

 空中に置き去りにされる形になった俺は、そのまま後ろに回って着地した。


 予想以上に上手くいったな。


「今の、はじめっから仲間も巻き込むつもりだったな」


 言いながら、地面に倒れこんだ取り巻きの二人の頭を蹴り意識を奪う。


 最初に突っ込んできた奴は……もう倒れてるか。

 あいつだけ、やけに打たれ弱かったな。


「ボス面してるのに、冷たい奴だ。まあ、トカゲだから仕方ないか」

「うるせえんだよ!」


 俺の挑発に激昂した尾長がまた爪を振るってくるが、今度は避けない。

 警戒すべき仲間もいないからな。


「なあっ⁉」


 迎え撃つのに使ったのは、俺が準備してきたもう一つの武器。

 百均で売っていたシャベルで、爪を受け止める。

 火花が散り、シャベルを持つ右腕に痺れが走るがこの程度なら大丈夫だ。


 農作業用でも金属製。

 なかなかどうして使えるじゃないか。


「そら、もう一本プレゼントだ」


 自慢の爪を真っ向から受け止められ唖然とする尾長の大口に、左腕で抜いた二本目のスコップを突っ込む。


「よく噛んで、味わえよ」


 その顎を下から蹴り上げた。

 ギイッという硬質な音と共に、尾長の歯が砕ける感触が靴底から伝わってくる。


「あ、ガッ、ああああっ」


 何本折れたかはわからないが、相当な痛みだろう。

 尾長は手で口元をおさえ、数歩後退る。


「安物でも、捨てたもんじゃないな」


 おかげで最大のチャンスが作れた。

 再生能力持ちだったら面倒だ。

 ここで一気に畳みかける。


 この下衆野郎相手に容赦するつもりはなかった。

 助走をつけて尾長に肉薄し、無防備な鳩尾を蹴りつける。

 次いで下がってきた顎に膝蹴り、さらに側頭部に後ろ回し蹴り。

 そのまま横の壁を蹴って跳ぶ。前宙の要領で回り、重力と勢いを乗せた踵落としを尾長の脳天めがけて振り下ろした。


「う、ご、てめ……」

「驚いたな」


 膝を折って崩れ落ちる尾長だったが、まだ立ち上がろうと身を震わせている。

 仕方ない。とどめだ。


 俺は取り巻きの一人が持っていた鉄パイプを拾って、尾長の顔面に向かってフルスイング。


「ぐぎぁっ」


 弾かれたようにのけぞった尾長は、そのまま後ろにひっくり返った。

 三秒ほど待ったが動く様子はない。


「……これで死なないんだから、大したもんだよ」


 少なくとも人間の頑丈さじゃない。

 溜息を吐き、ぐにゃりと半ばから曲がってしまった鉄パイプを投げ捨てる。


 他の奴らも気を失っていることを確認してから、俺は犬走のところに駆け寄った。


「大丈夫か」

「うっさい! 触んな!」


 助け起こそうと差し出した手を払いのけられる。

 一応、大声を出す元気はあるみたいだ。


「何のつもりだよ! 助けてくれなんて、頼んでないでしょ!」

「頼んできたのはお前の友達だ。実際、危なかった」

「それでもお前の力を、借りるっ、くらいなら……」


 チンピラに酷い目に合わされた方がマシってか。


 まあ、こいつらと似たようなことを俺も昨日やったからな。


 犬走にとって、いろははそれだけ大切な友達だったってことなんだろう。


「…………悪かったよ」


 俺が昨日、いろはを脅してさえいなければ犬走が傷つくこともなかった。

 どう罵られても言い返せない。


「お前が無茶したのは、俺のせいだ。その」

「うざい! 誰もお前のせいだなんて言ってない! 謝んな!」


 犬走がまた怒鳴って体を起こし、俺に背を向ける。

 ごちゃごちゃ言い訳しても逆効果みたいだ。


「ごめんな」

「だから、謝るなってのに。人の話聞いてんの? あんた」


 再び頭を下げた俺を、首だけで振り返った犬走がぎろりと睨み付けてくる。

 違う。

 俺が言いたいのは今日のことじゃない。


「今のは、昨日の分だ。あそこまでするつもりはなかったんだ」


 それだけはきちんと伝えておきたかった。

 昨日からずっと、自分が間違ったことはわかっていた。

 謝ってなかったことにできるとは思わないが、過ちは認めなきゃいけない。


「……おい、その変なゴーグルと、マスク取れよ」

「は?」

「それつけてたら顔見えねえだろ! 謝るなら謝るでちゃんとしろよ!」


 おっしゃる通りだ。

 俺はゴーグルを上に、マスクを下にずらしてから屈みこみ、犬走に視線を合わせる。


「お前の友達を傷つけて、ごめん。もう二度とあんなことはしない」


 そう約束するのが、今の俺には精一杯だった。

 犬走は眉間に皺を寄せたまま、しばらく俺の顔を見つめ。


「情けねえ顔」


 不機嫌そうに鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。

 やっぱ駄目か、と俺が肩を落としかけたその時。


「許す。次はないけど」


 ぼそり、とそんな呟きが聞こえた。

 聞き間違いじゃない。

 魔法を使わなくても、耳の良さには自信がある。


「ありが……」

『ねーねー久郎くーん、私にはごめんなさいしてくれないのお? 痛かったの私なんですけどお』


 俺の言葉を遮るようにして、ポケットの中のスマホからいろはの声が聞こえてきた。


 魔の悪い奴だ。

 絶対にわざとだろうけど。


「いろは、いつから電話繋いでやがった」

『んんー? ずうっと?』

「……そうかよ」


 決めた。こいつには謝らない。

 犬走に約束した手前、手は出せないからな。

 せめてもの抵抗だ。


『ところでさあ、久郎くん。そこにいる人たち、みーんなやっつけちゃったの? 死人とか出てない?』

「まあな。一応、全員命にかかわるほどのことはしてないぞ」

『ううーん。尾長がどうやって力を手に入れたのか調べたかったんだけどなあ。まだ話できそうな人いる?』

「そういうことか。だったら、都合のいい奴が一人いるぞ」


 ゴーグルとマスクをつけなおして、立ち上がる。

 そのまま俺が歩み寄るのは、鉄パイプを持って最初に殴りかかってきた奴のところだ。


 一発殴っただけでひっくり返った尾長の取り巻きの一人。


「おい、お前。気絶したフリは止めろ」

「ひ、ひいいっ! ご、ごごごごめんなさい!」


 やっぱりか。


 倒れていた横っ腹に蹴りを入れたら動き出した。

 俺、こいつにだけは、とどめを刺した記憶がないからな。

 おかしいと思ってたんだよ。

 一発殴られたくらいで気絶するなんて。


「か、勘弁してください! ねっ、ほら、俺、尾長さんに脅されてて」

「お前がどうなるかは、この後の態度次第だ。いくつか質問があるから、よく考えて答えろ」


 あ、やべえ。

 俺、また脅しやってる。


 怯える男の胸倉を掴んで、低い声を出した時点で気づいた。


 どうしようかと犬走の表情を窺ったら、呆れたようにシッシッと手を振られてしまった。


「そいつはノーカンでいいよ。私の友達じゃねえし」

『ねねね、久郎くん。質問する役、私にやらせて! なんか楽しそう』

「だ、そうだ。正直に、答えろよ」


 いろはと犬走が良いなら、俺としても迷うことはない。

 目の前の奴に同情する余地はないしな。


「や、やめて! わかった! わかりましたから! 言います! 知ってること全部言いますから!」


 その後、約五分くらいだっただろうか。

 男が思いのほか根性なしだったおかげで、俺達の尋問は実にスムーズに進んでいったのだった。

 リザードマンって作品によっては魔物じゃないこともありますね。

 獣人、とか、亜人に分類されることもあるでしょう。

 久郎が行った世界では魔物にカテゴリされていたと思ってください。

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