第2章 デッド・フィールド
少しすると、空気が持ち直された。
「続けよう。奴は一度封印すれば、もう二度と封印する事は出来ない」
「え? じゃあ、どうすればいい? 邪神の剣でも抹消できない奴をどうやって?」
「残念だが、それは私にも分からない」
ナヌアの爆弾発言にジェイルとガーウェンは唖然とした。
「おい、ナヌア。お前は全眼があるよな? その目で現世や幽界の血を見て回っても、デッド・フィールドを消す方法は見当がつかないと?」
ガーウェンが身を乗り出すように聞いてきた。
「ああ。皆目見当もつかない。だが、それを知っている人物たちに心当たりが居る」
「誰だ、そいつは?」
「ガーウェン君。君にも心当たりがあるはずだ。現世と幽界の血の魂を管理する魔職者に」
「――深海の聖地、現幽界魂郷か!?」
驚くガーウェンに静かに頷くナヌア。
「なんだよ? そのなんとかコンキョウてのは?」
「現幽界魂郷。私の全眼をもってしても透視する事が不可能な、魔の海底都市だ」
ナヌアの言葉に愕然と肩を落とすガーウェン。
一体、どのような場所なのか?
「ジェイル君にも分かりやすく説明すると、魂を操作できる者たちの魔の海底都市だ。と言っても、彼らは抹消された魂を食い物にする者たちでもあり、魔と言う表現が用いられ、その名称となった場所なのだ」
「おまけに、奴らは相手に触れる事により、魂を抜き取る事が出来る。抹消された人間が少なく、食に飢えてるときは、主に地獄に赴き、死者たちの魂を奪い、餌にする連中だ」
ナヌアとガーウェンが深刻な面持ちで語るものだから、ジェイルの表情も暗くなってしまう。
「だが、味方を変えれば好機かもな。あの連中なら、デッド・フィールドの魂を抜き取り、食らう方法があるかもしれない」
「正直、これは賭けだ。君たちを食い物にされるか、もしかしたら打ち解けあい、今回の騒動の相談に乗ってくれるか」
聞いてるだけで怖くなってくるジェイル。
「それで、その魔の海底都市とやら、どうやって行くんだ? 聞いてる話だと、その魔職者たちは地獄に往来できるんだろ? だったらこっちから行く方法もあるんじゃないか?」
「そうだ。出入りするに特に問題はない。ただその場所が限定的な入り口ではないんだ」
「どう言う意味だ?」
「簡単に言うと、海の黒い渦潮が入口だ。入り口の渦潮が、時間の経過と共に変わってしまう。だが安心してくれ。私が全眼で彼らが頻繁に出入りする場所を何箇所か目星は付いている。これがその彼らが出入りするポイントだ。主に君たちが居るリンダルト付近での海域の地図に印をつけておいた」
ナヌアはそう言うと、一枚の地図を取り出した。
そこにはリンダルトの地図がど真ん中に描かれ、その周辺の海域に4カ所、赤い丸が描かれている。
「ナヌア。リンダルト付近以外で奴らが出入りする黒い渦潮の場所は分かるか?」
「それがどう言うわけか、彼らはここ最近、リンダルト付近にしか出没しない」
「え? 何でまた?」
「おそらく、聖者の血が使われた事に、何か関係があるのかもしれない。彼らは魂を喰らうと言ったが、それ以外にも味を求めている。生きた人間の魂の方が好物で、その発端の力に引き寄せられている可能性もある」
「……なるほどな。生きた人間の魂の方が上手いイメージあるし、なんとなく合点がいく」
「よし。では頼むぞ。ジェイル君。ガーウェン君。ネクロラズエルを倒す勇士たちを出来るだけ集め、ネクロ・ラズエル、基、デッド・フィールドを倒してくれ」
「「ああ」」
ナヌアはそう言いながら深々と頭を下げる。
「ジェイル君。すまないね。君にはユエルを倒した後、現世に蘇らせる約束をしたと言うのに、破る結果になってしまった」
「気にすんなよ。そもそも、俺、生き返る理由が無くなっちまったんだ」
「もしや、例の彼女か?」
「ああ。そう言えば、あんた全眼で見てたんだな。そう、俺には地獄で最愛な奴が出来た。あいつを置いて一人、現世で余生を過ごす選択肢は無いんだよ」
「えっ!? お前、とうとう、あっちの童貞を卒業できたのか?」
何故か知らないがシリアスな空気をぶち壊すガーウェン。
好奇心剥き出しで聞いてくる。
「……まだだ。まだ始まったばかりだ。俺も、あいつも」
何故か知らないが尊い表情で語るジェイル。
それを見たガーウェンはやけに嬉しそうで、まるで不甲斐ない息子に、ようやく彼女が出来たような親心の様な心境に浸っていた。
「分かった。今回の事が片付いたら、それ相応の見返りはこちらで用意する。それとガーウェン君」
「ん? なんだ? クズだと言う自覚ならあるぞ」
「いや、そっちじゃない。……シャーディッヒ君についてだ」
ナヌアが躊躇う様に言うと、ガーウェンの目が変わる。
「シャーディッヒについて何か情報があるのか!?」
「ああ。今回の件だけでなく、君には心労をかけた。そのお礼も兼ねて、私も特例としてシャーディッヒ君の居場所を教えようと思ったのだ。だが、彼女は、私の全眼でも捉える事が出来なかった。この言葉の意味が分かるかね?」
「ま、まさか……」
「そうだ。では、武運を祈る。また会おう」
重苦しくそれだけ言うと、唖然とするガーウェンを置いていく様に、ナヌアだけでなく、自然界の景観が徐々に消えていく。
こうして、ジェイルとガーウェンは、ネクロ・ラズエルを倒すため、戦力になりうるヨシュアとパーラインを無理やりにでも地獄に来てもらう必要があった。
ただ、ガーウェンは芝居ではなく、本気で楽しんでいた事は、ガーウェンを見れば誰もが一目瞭然なのは確かではあるが……。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回で第2章は終わりです。
次章からも是非ご一読ください。
よろしくお願いします。




