第2章 デッド・フィールド
ここまでお読みいただき、また評価して下さった読者の皆様方、本当にありがとうございます。
今回からネクロ・ラズエルの真相が少し見えてきます。
是非ご一読ください。
よろしくお願いします。
話は半年前に遡る。
ジェイルとガーウェンは、ヨシュアを生者の血で蘇生させたのち、本当に寂しくなり、ヨシュアとパーラインの居る現世へと向かうため、まだ生きていた悪人の血を使って蘇る事にした。
もちろん、他の人間に生きた人間だとバレさせないため、その場で息の根を止め、文字通りの死人にしてから。
生き返る経緯の話だ。
なんとナヌアが蘇生されるまでのジェイルたちをナヌアの居る安住の地、自然界へと招いていた。
ナヌアは、ガーウェンに会って早々「君は本当に変わったな。見事なクズっぷりだったよ」と呆れながら口にすると、何故かガーウェンは照れていた。
そんな話はさておき、ナヌアにはジェイルたちを招いたのにはもちろん訳があった。
木造の家の椅子に腰かけるよう促し、ジェイルたちはそこに座る。
「さて、早速だが君たちを呼んだ本題に入ろう」
ナヌアは重苦しい表情になる。
「俺たちを呼んだ本題?」
「ジェイル。お前が原因じゃないか? この前、勝手にナヌアの銅像を作って、顔のど真ん中にチンコを掘るから」
「おい! 微塵も覚えがないぞ!」
ガーウェンがニヤニヤしながらおちょくってくる。
「はあー。やれやれ。今まさにとんでもない事態が起きていると言うのに、君たちは相変わらず呑気なものだ」
深い溜息を吐いて呆れるナヌア。
「なんだよ? 深刻な事態って?」
「……ネクロ・ラズエルが復活した」
「「ん? ネクロ・ラズエル?」」
「君たちがイルメン島でヨシュア君を救出しようとした時に、死人の血で復活させようとした男の名だ」
重々しく話し続けるナヌア。
ナヌアの表情から見てもただ事ではない事を察したガーウェンは、先に話を進めようとする。
そもそも元神であるガーウェンにすら知らない男の名。
「んで。そいつはどんな奴だ? 俺の知っている男か?」
「ああ。そもそもその男は名前を詐称している」
「詐称? じゃあ本名は何て言ううんだ?」
「その男の本名はデッド・フィールド、と言えば、ガーウェン君。君にも分かるはずだ」
「――なに!? デッド・フィールドだと!?」
ネクロ・ラズエルの本名を聞いた瞬間、ガーウェンを飛び跳ねるように驚愕した。
「ん? 何だよそいつ? おい、ガーウェン?」
ジェイル一人だけがついていけてない。
「そうだな。ジェイル君にも話の流れを掴んでもらうためにも、ガーウェン君の素性を明かした方が良いかもしれない」
「こいつの素性? どうせカミさんだけに働かせて自分は豪遊三昧していたとか、そう言う話だろ?」
「おい」
ジェイルがくだらないと言わんばかりに辟易と語る隣で、ガーウェンは素でツッコむ。
「ガーウェン君。構わないかね?」
「ああ。今更、隠す気なんてない。それに奴を消すためにもこいつらの協力も必要不可欠だしな。そのためにも隠し事はなしだ」
ナヌアとガーウェンだけが淡々と話をするのを見て怪訝な面持ちになるジェイル。
そして、ナヌアの口から、ガーウェンが、イエス・マキナだと言う元、神である真実を聞かされることになる。
「――はあっ!? こいつが元、神だー!? おいおい、死人に口無しなんて聞くが、こいつが神なんてやってたら、死人に口無しどころか、死人をゾンビにさせてゾンビ同士で性行為させて、生殖機能があるかないか検証しかねない男だぞ」
「お前、俺がそんなに死者を愚弄するような奴に見えるのか?」
「ああ。自覚がない所がなおさら拍車をかけてるぐらいだしな」
呆れて言葉が出てこないガーウェン。
「その話はデッド・フィールドを倒した暁にでも、いくらでも討論すればいい。それよりも話を戻そう」
「あ、ああ」
「数百年前の話だ。まだ、ガーウェン君が激洗で幽界の血と現世を平和に安定させていた日々の時の中で、突如、ある厄災が起きた」
「突然の厄災?」
「そうだ。地の帝王、デッド・フィールドが誕生した。その者は全てに置ける悪の集合体。ガーウェン君は嘗て、激洗を行使し、人々から悪と言う感情を消していたのは嘘で、除外していたのだ」
「は? それとデッド・フィールドとやらの復活に何の関係があるんだ?」
「まあ話は最後まで聞け」
ナヌアが暗い表情で語る中、遮るジェイルを宥めるガーウェン。
「いいかね。悪の感情を除外だ。除外と言うのは消すと言うよりも隅に追いやる、と言い換えるべきだ。その隅に追いやった全人類の悪の感情が、どう言うわけか、一つの集合体になった。つまり、全人類の悪と言う概念の集合体が、デッド・フィールドと言う人物に集約している」
「要は、デッド・フィールドは悪の化身だ。俺が今まで人間の悪と言う感情に、入れ物を用意しなかったからこうなった」
「はあ。なるほどな」
話には付いていけてたジェイルだったが、些かバツの悪い顔をしていた。
「んで、そのデッド・フィールドが蘇ってから、奴は何をしたんだ。話を聞く限り、とんでもない事をしているから、そんなに慌ててんだろ?」
「あの男は、現世と幽界の血を文字通り悪の世界に変えようとした。天使界も含めて。そのためには憎しみを利用しようと、多くの家族や友人の片割れを、その者の前で抹消し、憎しみを自分に向け与えた。あの男は悪と言う感情が主食の様な物だ。要は、あの男は自分の食事のために、世界を食卓に変えようと動いていたのだよ」
「なんだそりゃ? いや待てよ、抹消ってことは邪神の血を使ったって事か? そんなことしたら、死者の血なんて、いくらあっても足りないぞ? 一人を抹消したらその塗られた血は、役目を終えるんだから」
「お前にしては冴えてるな」
ジェイルの分析に思わず称賛するガーウェン。
「いや、あの男の邪神の剣は文字通り無制限に使える。何人斬ろうとも、その邪神の血の効力は消えない。もっと正確に言うのならば、あの男の手にする物は、全て邪神の血が塗られ続けている状態だ」
「はあっ!? そんなの反則だろ? どうやってそいつを倒したんだ?」
「私が直々にあの男の前にまで赴き、私の手で封印した。倒す術がなかった。あの男には邪神の血が効かない。だから封印と言う消去法の手段を用いたのだ」
自分の力の無さにうんざりするかのように話すナヌア。
「え? お前が向かった? でもあんた、この安住の地から出れないんだよな?」
「簡単な話だ。私が封印する際、デッド・フィールドに縛りを強制的にかけられた。この自然界でしか生きられない体にされたのだ」
「……そうだったのか」
重苦しく話すナヌアに、ようやく出てきたジェイルの言葉はその一言だけだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回の投稿はここまでです。
次回からも是非ご一読ください。
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