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route:00  作者: レイレイ
第1章 学園編
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選択は誰のものか

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第3話「選択は誰のものか」


⸻


静まり返った教室。


全ての視線が、前方に集まっている。


過去に滅びを余儀なくされた文明の記録が

淡く投影されている。


音はない。


ただ、映像だけが流れている。


⸻


 指先が、止まる。


 人間たちが、紙に何かを作っている。


 言葉を選び、書き直し、また消す。


 時間がかかっている。


 無駄が多い。


 非効率だ。


⸻


 次の映像。


 同じ作業。


 ただし——速い。


 固形端末に提示された文章。


 選択。


 修正。


 完成。


⸻


 さらに次。


 迷いが、ない。


 最初から、候補がある。


 選ぶだけでいい。


⸻



月「ねえ、これ別に覚えなくてもいいんだよね?」


レイ「不要だ」

「正しい選択ができればいい」


月「……そっか」



先生が、口を開く。



「この時代の人間は、すでに最適化の初期段階にあった」



一瞬だけ、間が落ちる。



「思考の外部化が進み、選択は補助されるようになった」


「思考は、選択へと置き換えられ」


「人間は、より速く、より正確に、

判断できるようになった」



淡々とした声。

評価でも、否定でもない。



アニカは、視線を外せなかった。

選んでいる。

確かに。

どの映像でも、人間は選んでいる。


でも、

その前に、必ず“提示”がある。


選択肢。

候補。

最適解。


「……」


言葉に、ならない。

選んでいるのに。

選んでいる、はずなのに。

どこからが、自分で、

どこまでが、与えられたものなのか——


分からない。


課外実習のレポートは

まだ、

書けていない。



——映像が、切り替わる。


比較的新しい記録。



 人間が、笑っている。



満足度は、高い。

関係は、安定している。

すべてが、うまくいっている。


なのに、



「……同じ顔」

月が、ぽつりと言った。



教室に映し出される過去の人々が通り過ぎていく。

過ぎ去った日々を振り返るには、

あまりにも短い。

断片的だ。



レイが、視線を向ける。

「その評価は不適切だ」


「どこが?」

月は、肩をすくめる。

「全部決まってる顔してる」

「先が見えてるやつ」

「それ…やだ」



沈黙。



アニカは、何も言えない。


でも、


さっきから、思考が同じところで止まっている。



——最初から、決まっている。



それが、正しい。

それが、効率的。



それなのに、

どうして、

こんなに——


遠くまで来てしまった気がするんだろう。


——遠くまで?どこから?




先生の声が、もう一度落ちる。


「最適化は、選択を容易にする」


一拍。


「そして、選択の輪郭を曖昧にする」


その言葉が、

なぜか、残った。


「記録上の転換点は——ここに集中している」


「AIミトスの開発成功。

以降、文明の選択傾向に変化が確認されている」


「ただし」


一瞬だけ、先生の言葉が止まる。


「この名称は、当時の資料と一致していない」



アニカは、わずかに視線を上げる。


——聞いたことがある。

なぜか、そう思った。



「開発が成功し——」



その瞬間、映像がわずかに乱れる。


一フレームだけ、


別の記録が混ざる。


見覚えのある文字列。


見覚えのある構造。


でも、


この時代のものではない。



「提示された選択肢からの選択は、

思考を経る判断よりも

高い成果をもたらすようになった」


一拍。


「そして、

それは“より多くを得る手段”として

定着した」



先生の授業は続く。



アニカは、ゆっくりと目を伏せる。



——選べているはずなのに、


選んでいる感じが、しない。



まるであの夫婦のようだと思った。




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