第二十四話
活動報告に色々書き始めた理由なんかを綴ってみました。私の性癖を詰め込んだ結果ヒロイン不在の男の子ばかりが追い詰められる小説になってしまいましたが当初の狙い通り王道少年漫画的小説バトルもの、になっているでしょうか。
すべてを洗いざらい話すのに長い時間を要したが、年老いた二人は顔を見合わせながら音を上げることなく付き合ってくれる。段々とかぐやの口調が解れていく。
無口だった割に、いざ話し始めるとつかえることなくすらすらと話せたのも思春期の姿で成長が止まったのもこれでようやく納得ができた。極端に無口だったのは嘘がつけないかぐやがぼろが出ないようにしていたからだった。
「ずっと騙しててごめん。危険な目に遭わせて悪かった。ばあちゃん、悪いな」
口から出る言葉は、今までの息子の姫君然とした口調とも、兵士のような堅苦しい口調とも違っていて飾り気のないぶっきらぼうな少年のものだった。
「かぐや、本当はそんな話し方なんだねえ。時々発疹が出ていたのは自分を偽ってたからだね?」
媼の目に涙が浮かぶ。理想と違っていたことや取り繕って騙していたことで傷付けてしまった、とかぐやは申し訳なさそうに俯いて頷く。
(品が良かった息子がいきなりこんな柄の悪い疫病神になったらそりゃあ嫌だよな)
媼の皺の刻まれた手がかぐやの肩を撫でる。
「最初から今のように話してよかったのに、わしらは家族なんだから……遠慮して何も言えないのは辛かったろう?」
傷付いているからじゃなかったのか、とほっとして、自分のために悲しんでくれる年老いた親が愛おしくて胸に温かい塊がこみ上げる。
「ばあちゃんのこと、大好きなのはほんとだよ」
「だろうねえ、ろくに喋らない頃からわしにやぁぺんぺん草だの丸い石だのいっぱい贈ってくれたもんねぇ」
日が暮れる頃にはまた成長してしまうのか、と慄きながら河原で遊ばせていると、媼の元に丸いすべすべした石を持ってかぐやが駆け寄る。媼は腰に鞭を打ちながらかぐやの体を抱き上げる。かぐやは目の前に石を差し出す。くれるのかい、ありがとう、と石を受け取ってその温かい体を揺らし寝かしつけてやるのだった。
翁がからかうように言う。
「おや、わしには肩車をねだるばかりで石はくれんかったが」
手を広げてねだるので、抱っこか? と抱き上げてやるが違うと首を振る。おんぶか? と背中に乗せてやるがこれも違うと言う。ならばと意を決して肩に乗せて肩車してやると、手を叩いて喜ぶのだ。よく思い返して考えてみると、竹に入っていた時からかぐやは肉体こそ赤ん坊だったものの精神は今のままということになる。つまりこの子は年を重ねてなお、三つ四つの幼児と同様に子供じみて無垢なのだ。
「じいちゃんも好きだぜ?」
歯を見せて笑うその顔がどうにも眩しく、翁は目を細めた。この子を守ってやりたい。誰にも渡さず、大事に匿ってここで自分たちの子供として天寿を全うさせてやりたい。
翁は涙を流してかぐやの小さな頭を抱き寄せた。媼が押入れの奥から大きな塗籠を出してくる。
「今度の満月の晩にここに入れて隠しておこうかね」
「そうじゃ、わしがこの前で守って、月衆の首をぶった切ってやる!」
例え血の繋がりがなくても自分を求めてくれる存在がある。その温度はじわりとかぐやの心を温めた。だからこそこの人たちを巻き込むわけにはいかない。死んでも守る。
「危ないから、帝の用意した屋敷でじっとしててくれよ。三年面倒見ただけの化け物を、こうまで可愛がってくれたのはありがたい。けど、危ない目にあってまで守る義理はねぇだろ」
苦笑交じりにそう告げると、媼は涙を流して首を振った。
「何を言っているの、かぐや、わしらの息子、かわいい子」
「必ず生きて戻っておくれ」
嫌だ嫌だと別れを惜しむ二人を、帝の従者に引き渡しかぐやは背を向けて肩を震わせた。従者も泣いていた。
その頃、帝の屋敷では戦を経験したことがない近衛兵たちが集められ、決起集会を行っていた。こうなってからすぐ、帝は周りを囲う近衛兵や貴族たちに状況を説明し戦うために立ち上がってほしいと頼み込んできた。その甲斐あって、普段は歌を詠み風雅を愛でて暮らしている男達も昂った顔つきでざわついている。
「この中であの竹林の屋敷に住むなよ竹のかぐやに逢いに行った者はいるか」
帝の呼びかけに多くの貴族たちが答える。求婚した者も大勢いた。
「あの美しいかぐやが、自らを差し出しこの窮地から皆を救おうとしている」
かぐやが大王の慰み物として月に帰ろうとしていること、それを救いたいと思っていること。帝はそれをいつになく張りのある声で居並ぶ貴族たちに伝える。
「なぜ求婚に答えなかったか。それはかぐやが……我らを巻き込みたくなかったからだ。我らを大切に思っているからだ」
「おいたわしやあのような麗しい姫御前にそのような呵責を」
貴族たちのざわつきは大きくなる。
「思い出してほしい、あの白魚のようなか細い指を、控えめで小さな桜色の唇を、黒い瞳が潤む様を、俺はあの花のかんばせが月衆のために暗く淀むのを見てきた。自責の念にかられるかぐやはそれは美しかったが、やはり美人には珠のように笑っていてほしい。そうは思わないか」
ごめんかぐや、でも嘘ではないからな。帝は内心で許しを乞う。気持ちをひとつにまとめ上げるにはかぐやの正体……『月の者であること』ではなく『性別』をあえてぼかしておいた方が効果があるだろう。
「かぐや様!」
「私たちがお守りするのだ!」
「ああ芳しいかぐや姫よ……!」
誰かを守るために挙兵するのはほとんどの者が初めてだったが、太刀を天高く突き上げ自ら弓矢を背負い力を漲らせるその姿は勇ましい。帝は勝つ可能性に胸を震わせた。
皆さんの小説、本当に文章が上手で、いかに自分が漫画ばかり好んできたかを思い知らされます。でも気にし過ぎると筆が止まって進まなくなるのでゴーイングマイウェイショーマストゴーオンで行きたいと思っております。




