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カマセ一番!  作者: 鍵っ子
格闘少年の日常
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激闘通過! カマセ変化!

「……納得いかん」

「何が……って、聞くまでもないか。謝りに行く事になってることでしょ。でも今回はあんたの方から煽ったわけだしさ。誠意見せないと、ねぇ」

「それはいい……いや、あんまり良くはないが。今は置いておいてもいいだろう。納得いかんのは、あの女、俺に勝ったというのにあっさりと帰りおって……あれだけ苦戦させた強敵だぞ! もう少し、こう、なんかないのか!」


 ……気にする所そこなんだ。負けたのが納得いかないとかじゃなくて。


「負けたのは……まあいいとして! この俺の価値を低く見る様な行動など許せるものかぁ畜生! 俺は天才だぞ! 負けたとしてもそれなりの扱いをだなぁ!」


 うーんこのズレた思考。カマセらしいというか。


「はいはい……周りの学生から奇異の視線で見られてるから静かにしようねぇ」

「……評価というのは結局は他者からの扱われ方で変化する……憤慨遣る瀬無い気分ではあるが、ここは冷静になるべきか」


 うん。まぁ奇異の目で見られるのは今日が初めてじゃないんだけど。


「ええい。それにしても無念だ……まさか彼処まで油断を見事に突かれるとは。もっと武術研究を繰り返し、実力を磨かなくてはならないか」

「そういう問題じゃあなかったと思うけど、あの負け方は」

「……」


 無言というのは、肯定の代わりと受け取るぞ?


「とにかく、鍛錬は無駄にならん。今回の敗北を糧に鍛え直さねば……! 次の勝利への積み重ねを怠れば、また敗北する事になるだろうし……」

「まず慢心を消しとばして行くのが必要なんじゃない?」

「慢心をしても問題はないほどに鍛え上げてばいいだろう!」


 間違ってはいないが……そんな境地に至るまで鍛え上げるまでどれだけかかるか。


「こりゃあ、まだしばらく負け通しになりそうだなぁ……」

「なんか言ったか? 魅恋」

「何にもー?」




 京都からの刺客と私たちが殴り合って、三日程。その間、ずっと此奴はこんなんだ。


「……あの体の動かし方を……しかし、やはり、それだけでは」


 さっさと帰った向こうの人たちに文句を言いつつ、只管に研鑽を続けてる。


「まーた先生に怒られるよー?」

「今は勉学より自らの研鑽が優先だ……そもそも体を食事などで改造している? ……その辺りも推理し、自己流でもいいから実践する必要が……」


 まぁ、愚痴は零しつつもやる気は凄まじいが。


「……あ、また飛ばしてる」


 童子切さんは……なんていうか、硬さが抜けたと思う。


「……あんな風に微笑む顔なんて、見た事なかったしなぁ……短い間に変わりすぎじゃないかなぁ。無表情系転校生がクール系転校生に変わる……あれ? そんなに変化してない」


 なんだか、優しい顔で笑う様になったのが、いい変化だと思う。


「辰門司と彼処まで仲良くなったのも、意外といえば意外だった……ねぇ」

「うん、男女なんぞ修羅場を越えればそんなものではないのか?」

「……あんたって、そういうところ疎い様に見えて、意外とスッパリくるよね」

「どういう意味だそれは?」


 まぁ要するに。明らかに童子切さんと辰門司の距離が縮まったという事で。


「まぁ、でも明らかに惚れてるって感じでもないよね。恋愛方向なのは確実だけど」

「童子切が沈んだままでいるよりはマシだろう。元気になってより武術に邁進する為の糧となってくれるのは実にありがたい。立ち直らせてくれたのであれば、辰門司に感謝せねばならんな。どんな経緯であれ」


 感謝の仕方がクソ歪んでいる。さすが武術バカ一代のロクデナシ。


「知り合いがこう、アオハルやってるとなんか、不思議と気持ちが暖かくなってくるね」

「彼奴らの進展状況など別に構わん」

「お前さぁ……」


 もうちょっと一般的な感性身につけようよ。


「ったく、気にしても仕方ないだろう。そんな事。当人同士の問題なのだからな」

「……そういうとこばっかり常人なの本当にお前。まぁ、そりゃそうだけどさぁ」

「そうだ。大体、他人の恋愛を気にする暇があるなら自分の武術を磨きたい」

「あーうん、やっぱお前はそういう奴だよ……」


 っていうかそっちの理由が大半だろう。


「……そうやって武術に集中するのも悪くないけどさ、偶にはそういう俗な方向気にして見たら」

「最近酷く俗な理由に関わったから、それで十分だとも」

「……まぁ、確かにあれも俗な話と言えばそうだけど」


 童子切さんの生い立ち、そういうのは詳しくは分からない。カマセの推理だけじゃ。


「でも……童子切さんと彼奴が仲良くなってるって事は……そういう事なのかな?」

「? 何がだ?」

「なんでもなーい」


 一応、友人、ではないけど。知り合いではあるから。私にとってのカマセの様な奴を見つけられたのだろうと、思うと。祝いたくは、ある。


「……あ、もうそろそろ初夏だねぇ」

「あぁ。もう直ぐそんな時期に入るか。夏というのは何に於いても重要な時期だ。気合を入れねばならんな、武術の鍛錬を」

「結局それかい」


 夏に入って、人は開放的になるという。


「……この先、そうなって面白い報告を聞くのを期待しようかなぁ」


 生憎と、隣の武術バカと違い、自分は他人のそういう下世話な話も気になるタチなので。


「……退屈は、しなさそうだな」

「……だから、この食事を……」


 この隣の武術バカの面倒みつつ、まぁ、また気楽に過ごしていくとしよう。




「おーい、新しい先生を紹介するぞー」


捨て置かれた方を気にするタイプ。

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