鋼鉄の連環馬、襲来―初めて直面する生と死の地獄
王英を追い払い、顧大嫂、楽大娘子と血盟を交わしたあと、美嘉はそれから数日間、確かに穏やかな日々を過ごしていた。
彼女が呼び集めた百人あまりの山砦の女眷や流民の女性たちは、今や熱気あふれる様子で山を下りて道を覚え、後山の厨房に張り付いては薪を運び、水を沸かしていた。美嘉自身は山寨女軍頭領といういかめしい肩書を背負ってはいたものの、彼女の感覚からすれば、これは元の世界で百人以上の後輩を率いてサークル活動をしているようなものだった。
彼女は女性たちに手を洗うことを教え、清潔な細麻布を鍋で蒸し煮にして乾かし、蓋付きの木箱に収納することをてきぱきと教え込んだ。女兵たちの訓練はまだ散漫ではあったが、それでもどうにか形にはなっていた。
美嘉は純粋に、この八百里の水泊こそが、本当に官兵の手の届かない桃源郷なのだと信じ込んでいた。この百人以上の良き姉妹たちを調教しながら、一歩ずつ未来の退路をそろばんで弾いていけばいいのだ、と。
しかし、冷兵器乱世の残虐さは、異世界からの転生者にいささかの温もりも残してはくれない。
大宋朝廷の鉄蹄は、前触れもなく、突如として襲いかかってきた。
双鞭・呼延灼が率いる数万の精鋭官軍が、黒く重い连环大炮を押し出し、天地を覆うような粛殺の気をまとって、八百里梁山泊を完全に包囲したのだ。
「ドォォォォン————!!」
午後、第一声となる天地を震わせる砲声が水泊のふちから暴雷のごとく炸裂したとき、美嘉はちょうど中庭に立ち、洗い終えた白布を干しているところだった。
その凄まじい巨響は、山全体をピキピキと微かに震わせた。美嘉は手を激しく震わせ、真っ白な細麻布はそのまま足元の泥地へと滑り落ちた。
庭に繋がれていた戦馬たちは狂ったように手綱を手繰り、恐怖に満ちた悲鳴をあげて暴れ狂う。水を運んでいた数人の新人娘たちは、顔面を紙のように真っ白に染め、悲鳴を上げながらプツンと糸が切れたように泥の上にへたり込み、しばらくは頭を上げることすらできなかった。
美嘉も、恐ろしかった。現代にいた頃は、正月の大きな爆竹でさえ遠くに逃げていたのだ。心臓を直接叩き潰すような古代の重砲の音など、これまで一度だって聞いたことがあるわけがない。
だが、二発目、三発目の砲声が続けて山前から轟き、そこに押し殺したような悲鳴と、激しい炎が肉を焦がすような不快な臭いが混ざり合って漂ってきたとき、美嘉の心臓は狂ったように脈打ち始めた。宮崎駿のアニメのヒロインのような、彼女の骨の奥に眠っていた負けず嫌いの急脾気と勇気が、極限の恐怖によって無理やり引きずり出されたのだ。
彼女は泥の中に強く足を一歩踏み出し、地面で泣きじゃくっている女兵の腕を掴んで引きずり起こすと、割れんばかりの声で叫んだ。
「泣かないで! 大砲は後山までは届かないわ! 顧大嫂はどこ!? 楽大娘子は!? 早く、準備しておいた清潔な布帯と薬箱をすべて数え上げなさい! とんでもない大事が起きるわよ!」
美嘉の直感は、寸分の狂いもなかった。
呼延灼のあの排山倒海の如き、钢铁の潮流が押し寄せる連環馬の最初の突撃は、前線の梁山泊の山賊たちを文字通り粉木端に打ち砕いた。まだ完全に組織化されていないこの山砦は、かつてないほどの大敗北を迎えたのだ。
「退け! 退け! 官兵の马队が上がってくるぞ!」
「助けてくれ! 俺の足が、足がちぎれた!」
わずか数時間の間に、前山から崩れ落ちてきた敗残兵の波が、長蛇となって狭い窄路へと押し寄せてきた。
その光景は、ただ混乱の一文字に尽きた。
逃げ惑う潰兵、何かに怯える戦馬、踏み荒らされる物資が泥水の中でごちゃ混ぜになっている。大声で馬を探す者、狂ったように身内の名前を叫ぶ者、後ろの者は必死になって前を押すが、前の者はなぜ道が止まっているのかすら分かっていない。一本しかない山道は、一瞬にして水も漏らさぬほどに塞がってしまった。
「三娘! 早く手を貸しておくれ! 前線が完全に崩壊した!」
顧大嫂がいつの間にか前線から駆け戻ってきた。あのいつも張り裂けんばかりに響いていた大声は、今や完全に枯れ果ててかすれており、その全身は黒ずんだ他人の血でべっとりと染まっていた。
美嘉はすぐさま二匣の丸薬を引っ掴むと、二十人以上の医護隊の娘たちを引き連れて、大急ぎで泥濘の山道へと駆け下りていった。
しかし、彼女が石段の一歩を踏み出したその刹那、美嘉の足はまるで地面に釘付けにされたかのようにピタリと止まり、全身に電撃が走った。
一人の下っ端の兵の死体が、道端の草むらに无造作に転がっていた。
その顔立ちは、どう見てもまだ十八、九歳そこそこにしか見えない。前世の大学三年生だった美嘉よりも、はるかに幼かった。
彼の胸は、官兵の鋭い長槍によって巨大な血の穴が抉り開けられており、五臓六腑が泥水の中にどろりと流れ出していた。そして、死んでも死にきれないといった二つの瞳が、どんよりと曇った灰色の空を、丸く見開いたままじっと見つめていた。
「う、ぅぷ……っ」
生々しく、息を詰まらせるような濃烈な血の臭いと、排泄物の悪臭が容赦なく顔に吹き付けてくる。美嘉の胃袋の中が一瞬にして激しくひっくり返り、その顔面はみるみるうちに土気色に変わった。彼女は力なく泥水の中に膝をつくと、激しく嗚咽し、胃液を吐き出し始めた。
元の世界にいた頃、大学の実験室で見た最も血生臭いものといえば、せいぜい解剖される実験用ラットくらいのものだった。これほどまでに残虐で、無残に引き裂かれた人間の本物の死体を、どうして直視などできようか。
底知れない恐怖が、まるで冷たい巨大な手のように彼女の喉を締め上げ、全身の筋肉が狂ったようにガタガタと震え始める。
元の体の持ち主である扈三娘の、あの家族を皆殺しにされた刻骨の苦しみの記憶が、この瞬間、目の前の血の海と最悪の形でシンクロして脳内で爆発した。美嘉は、次の瞬間には目の前が真っ暗になり、そのまま意識を失って昏倒してしまうのではないかとさえ思った。
「妹よ! 立ちな!! 今はゲロを吐いている時間じゃない!」
顧大嫂が泥の中から彼女の襟元を力任せにひっつかみ、強引に引きずり起こした。そのダミ声が美嘉の鼓膜を激しく叩き割る。
「前線にはね、まだ何百人もの生きてる弟兄たちが、あんたの薬を、あんたの手当てを待って床を転げ回ってるんだよ! あんたがここで倒れたら、この後山は完全に終わりだ!!」
美嘉は目に涙をいっぱいに溜めながら、顧大嫂のその血まみれの大きな手を見つめた。看著身後那一百多個同樣嚇得瑟瑟發抖、面色發白的女兵姐妹。
彼女たちは全員、美嘉を見つめていた。彼女たちの組織はまだ未熟で散漫だ。ここでリーダーである三頭領が真っ先に倒れれば、この百人は一瞬にしてただの逃亡民へと戻ってしまう。
美嘉は、自分の舌の先を思い切り噛み破った。
口の中に走った鋭い激痛が、彼女の脳に冷徹な清明さを無理やり引き戻す。
薬学部の大学三年生が、あの進級の苦しみに耐えてきたんだ、閻魔大王ごときにこの私が怯えてたまるかってんだ!
彼女は泥まみれの袖で目元の涙をごしごしと拭い去ると、後ろの娘たちに向かって、これまでにない覇気を込めて怒鳴り声をあげた。
「薬品の箱と布帯を掴みなさい! ――私に続きな!!」




