岡の百日姑工坊物資リスト
今回の一件では、臨時で裱糊(壁に貼り付け)した七品国医の字画によって辛うじて地方官たちを追い払うことができた。しかし、これはどこまでも一時しのぎの権宜(権謀)の計に過ぎない。もしも大宋朝廷が、これから先も独竜岡を勝手に発展させ、二度と手出しをしてこないなどと天真(無邪気)に仮定するならば、それは極めて幼稚であり、かつ危険極まりない思想であった。総人口三千人、手元に一千人の兵力を擁する独自の巨大集落など、いかなる封建朝廷の眼から見ても、己の寝所のすぐ傍らに突き刺さった、容赦のない巨大な脅威に他ならない。ここからの二、三年の間、この地に真の根拠地を安泰に築き上げるためには、この硬直した局面を何としても打破し、まずは朝廷との表面上の融和(調和)を完璧に成し遂げねばならなかった。
美嘉は偏棚(奥の間)へと戻ると、机の上に、百日姑の工房が現時点で製造できるすべての物資の清单を静かに展開した。
一、外貨調達・軍事交易製品
• 涼血氷片散
• 行軍定痛膏
• 辟穢駆虫香
• 高純度酒精
• 防疫石鹸
二、民政救荒・日常常備薬
• 人参養栄丸
• 葛根芩連片
• 蒲公英消腫湯
• 大黄牡丹皮湯
三、外傷救急・止血薬
• 金創五虎散
• 白及止血膠
• 三七化瘀散
美嘉の頭脳の中で、此時の核心たる戦略はすでに極めて明確に弾き出されていた。彼女は、この腐敗しきった朝廷の官僚機構の全体をわざわざ討好(お世辞で抱き込む)する必要など、端からこれっぽっちもないのだ。彼女が真に対処せねばならぬ人間は、ただ一人。高位の座で荒唐無稽かつ庸碌(凡庸)に座している天子――宋徽宗、その人だけであった。
リストの上に分類された三つの大きな品目を眺めながら、美嘉は細かく盤算(計算)を重ねた。
第一類の涼血氷片散や行軍定痛膏といった軍事交易製品、および第二類の人参養栄丸などの民政救荒常備薬は、現在の山砦が維持している閉鎖経済(独自の生活圏)と、流民たちの生計を支えるための命綱であり、断じて朝廷の側へと流出させるわけにはいかない。
美嘉は、その美しい瞳の照準を、リストの第三類である「外傷救急と止血薬」へと的確にロック(固定)した。
この種の薬物は、最前線の戦場にあっては文字通り命を救う神の物資(神物)であったが、同時に、深宮の大内のなかにおいては、何よりも上位者の知的好奇心(驚奇)と寵愛を引き起こすための、極上の霊丹妙薬に化けるのだ。




